第102話 厄介事が舞い込む
「ご、ご主人!今、屋敷の門の所へ、立派な鎧を着た騎士様が来ております。その騎士様から、こちらを預かって来ました。」
そう言って手渡されたのは、高級そうな紙を丸めたもので、しっかりと蝋で封がしてある物だ。
そして、その封印を見たキャサリンが
「あんら~、中々早かったわね。これ、王宮からの招集令状ね。封印が国王の物だわ。」
とほくそ笑む。
チッ。
「とりあえず、中を見て御覧なさい。」
俺はその言葉通り、封を開けて中を見る。
「・・・読めん。」
達筆過ぎて、読めなかった。
「アイツ、字が汚いからね。どれどれ?「我、ランデウ王国国王クリストフェル・ランデウ十一世は、最難関ダンジョン攻略者タクヤを王都へと招集する。貴殿は速やかに、王都へと馳せ参じる様に。尚、この招集を断る事は出来ぬ。もし断った場合、貴殿の身若しくは、貴殿の近しい者に災いが降り掛かるであろう。それをゆめゆめ忘れ無きよう。」だそうよん?」
「脅迫じゃねえか!」
絶対に行かないといけない様に仕組まれている招集令状。
ほぼ脅迫に近い。
「アイツの場合、半分は冗談なんだけどね。」
「半分は真面目に書いてるんだ・・。」
逆に恐ろしいわ。
「ま、どの道行かないといけないわね。アタシも付いて行ってあげるから、観念なさい。」
キャサリンにそう言われ渋々了承した俺は、門前に待たせてある騎士に承諾した胸を伝える。
ついでにその足で、キャサリンには子宝精力剤の鑑定と、それを仕舞う箱を準備して貰う為にギルドへ走って貰った。
つか、何でこうなったのやら。
それから一週間後。
俺は御者台へと座っていた。
それは何故か。俺以外に誰も御者が出来る者が居ないからだ。
ちなみに俺以外と言うのは、一緒に行くと宣言したキャサリン。久しぶりに一緒に行動出来ると喜んだシャファとリズ。後は、春香、裕美、イシュカにシーラちゃんとロラさんだ。
春香は海ダンジョン攻略メンバーと言うのと、料理担当と言う事で特別枠に入り、裕美とイシュカも料理アシスタントとして付いて来た。シーラちゃんとロラさんは、残った面子でジャンケンをした中の勝者だ。
負けた涼子、美奈子、加奈子、エヴァがお留守番だな。ちなみに、出掛けに食材ガチャをかなり回して来たので、食糧―――食堂の食材———は問題無い。
つか、こんな大人数で行ってもいいのかな?
「はぁ・・・。」
御者台に座り、溜息を吐く俺。
だって、気が重いんですもの。
そうでなくとも、結婚問題にようやく片が付いたのに、その直後に王都への招集令だよ?
溜息の一つや二つ吐きたくもなるよね。
それはともかくとして、オルトラークから王都へは歩きで約10日だそうだ。馬車なら8日間くらいだろう。多分。
マホヴァー、ロコスと西に戻り、ロコスから南へと南下。
ハザロフ、ルーニンと通り西へ。
クオリンと言う町の次が王都ベリアルドだ。
しかし、海ダンジョンを攻略して早や40日以上は経っている。
なのに、何故これだけ時間が掛かったのかと、キャサリンに聞いた所
「それはね、オルトラークのギルドで書類を作成して、馬で王都に運ばせる。その後、王都のギルドで中身を精査してから王宮へと上がるからよん?これでも早い方なのよん?」
なるほど。
もっと遅くても良かったのに。
とは言え、いずれは同じ事が起こったのは間違いが無く、拒否が出来ないので行くしかない。
そんな重い気持ちを他所に、問題の山間の道もウルフに襲われる事無く無事通過し、オルトラークを出て2日目。マホヴァーへと到着する。
ただ、時間的にまだ昼だ。もう少し先に行っても問題は無いとキャサリンが判断し、マホヴァーの町には入らずロコスへと向かう。
ロコスまでは約一日。
途中、野営と言う名の携帯マジックハウスで休み、翌日の昼前にはロコスへと到着する。
何となく分かって来ただろうが、俺達にはホイポイカプセルがある。
なので、無理して町に入る必要は無いのだ。
マジックハウスならふかふかのベッドだし、風呂もある。下手な宿より断然過ごしやすい。
「あんた達が戻る時に、これアタシに頂戴よ。」とは、キャサリンの言葉である。
それくらい過ごしやすいのだ。
とまあ、話が逸れたが、全く町に立ち寄る事も無く、争い事にも巻き込まれる事も無く、無事王都へと到着した。
初めて来る王都。
その街並みは、オルトラークをも上回る。
と言うより、メチャクチャ広い。
キャサリン曰く、王都の人口は60万人くらいだそうで、その住人達の住む城内は分厚く高い城壁で覆われている。そして、その広さが尋常ではない。
良く考えてみて欲しい。
一つの団地に4人家族の世帯が1000世帯あるとしよう。これで人口4000人だ。
その団地の大きさを思い浮かべて欲しい。
人口60万人と言うのは、1000世帯の団地150個分の広さがある訳だ。
となると、端から端までが相当な距離となる。
それが王都の広さだ。
オルトラークが20万人だから、ぶっちゃけ、バカげてる大きさだな。
城門で検閲を終えた俺達は、キャサリンのアドバイス通り先ずは宿を取る事に。
キャサリンお勧めの宿に到着したが、何と一人金貨2枚も取られた。
9人分で、金貨18枚とか有り得ない!
ただ、来てしまったものは仕方が無い。
渋々支払い部屋を取った後、俺とキャサリンの二人で王城へと出向いた。
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