23話 曇りのち晴れ①
笠原と二人で夜道を歩く彰。
彼らの背後から視線を感じることはもうなくなっていた。
もう5分ほど歩き続け、一駅離れた笠原のアパートに着いた。
「山城さん。迷惑をおかけしました。」
「全然大丈夫だよ。もう大丈夫そう?」
「はい、うちのアパートセキュリティしっかりしてるので、さすがに家まで着いたら大丈夫だと思います。」
「なら良かった。もしなんかあったらすぐに連絡して。」
「はい、ありがとうございます。」
そう言って、笠原が部屋に入っていくのを見届けて、彰は自分のアパートへ戻っていくのであった。
もしかしたらストーカーか、何かに襲われるかもしれないといった精神的な緊張感からようやく解放され、疲れ切っていた彰は、普通に歩ける距離である一駅分をわざわざ電車に乗ってアパートへ帰った。
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家に着くと、電気はつけたままの状態になっていた。
慌てて家を飛び出したのだから仕方がないだろう。
そして、テーブルの上には冷め切った味噌汁とご飯がぽつんと置かれたままになっていた。
残りも少なかったことから、彰はそれらを捨ててしまった。
食器を片付けた彰は、ベランダに出て煙草を一本ふかした。
煙草をふかしている最中、笠原は大丈夫なのか考えていた。
一応、ポケットに入っていたスマホを取り出し、安否確認のメッセージを送っておいた。
その後彰は、シャワーを浴び、出たタイミングで笠原からのメッセージを確認し、少し安心した。
そして、疲れていたのですぐにベッドに倒れ込み眠りについた。
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日が昇り、朝を迎え、鬱陶しいアラームの音に起こされる彰。
曇り空も相まって、憂鬱な気持ちで支度を済ませ、会社に向かう。
今朝は、有楽町で電車を乗り換えるタイミングで、八重樫を見つけた。
少し遠かったが、目が合った気がした彰は八重樫に向かって手を振った。
しかし、八重樫は視線を他へ移し、彰に手を振り返すことはなかった。
会社に着いたタイミングで彰はようやく八重樫に話しかけることができた。
「おはようございます八重樫さん!」
「あ、おはよ。」
「さっき有楽町駅で目あったのに無視しましたよね?」
「え、なんのことかしら。」
「絶対目合ってましたって!」
「しらない。」
今日の八重樫はやけに機嫌が悪い。
八重樫から感じたほっとけよオーラに圧倒されてしまった彰はすぐにその場を離れ、自分のデスクへと逃げ込んだ。
「俺なんかしたかな?」と彰は頭の中で考え込むが、思い当たる節がない。
彰は、とりあえず八重樫と距離をとる選択肢をとることにした。
一方の八重樫はというと、やってしまった、とわかりやすく自分のデスクで落ち込んでいたのであった。
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