生焼け海鵜

第1話

 秋。


 空は私達を照らした。青く広いその色に飲み込まれた私達。


 淡く光を発するアスファルト。それは空からの贈り物で青く青く。


 微笑む。笑う。


 神が居るのであれば、どうかどうか。


 と、問う。


 貴方は笑った。

 満面の笑みだ。

 非の打ち所がない、その顔に空が授ける。


 赤い赤い赤い。

 夕日のような。



 滴るそれは、腕を津たり指先から離れていく。


 嬉しそうに空を見上げる。


 神が居るのであればどうか、どうか。


 私を。


 問う。


 問う。



 空は、微笑んだ。雲すらも従え神すらも従えたその空。


 どうでしょうか? 


 わからない。


 わかりっこない。


 そうだ。僕は。


 生きている。


 もとい。


 死んでいる。


 羽ばたくその翼に羽など存在しない。

 ただ、羽ばたくばかりである。


 産声を上げる。

 目に映る。


 それは、空である。

 正解。

 または。

 不正解。


 枯れ葉は、カサカサと音を立てた。

 コウロギは憐憫だと笑い声を上げた。

 夕日に飛行機雲が残っている。

 伸ばした手に掴むものなど無い。

 コスモスは揺れる。

 季節外れの彼岸花が咲く。


 野に潜った鵜。

 水を嫌がる猫。

 人を馬鹿にする烏。

 目を覚ました蜥蜴。


 スバメは姿を消した。

 どこに消えたのだろうか?


 そう、貴方の心の中に。


 金属が光り輝く。

 脈打つ血管。

 最後になるかもしれない食事。


 貴方は笑った。


 愚かだなと。


 そうです。面白いのです。



 ふふふ。


 あはは。


 さよなら。


 空は青く深い。

 写真で見た海は浅く赤い。


 私は。


 神様聞いてください。

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