第27話 セウトぉー
教室に戻ると、ちょうどホームルームが始まる時間だった。エレア先生もすでにいる。どうやらギリギリだったらしい。
「セウトぉー」
「いや、どっちですか」
エレア先生にツッコミを入れたところで、俺は席に座る。こほん、と咳払いをした後、エレア先生は、
「今日は擬似戦闘訓練をするよぉ。みんなで安全にボコりあおうねぇ」
なんて恐ろしい授業なんだ。
最初に聞いた時、字面がすごく恐ろしいなと思ったが、実際に実施されるとなるとさらに恐ろしくなるな。
「それじゃあ移動するねぇ。闘技場に行くよぉ」
どうやら、あのドーム状の場所に行くらしい。
「ガルドさんと戦えるなんて光栄です!」
「ボコられちゃうなぁ、あはは!」
「さすがに手を抜くさ」
「「それはそれで……」」
そう不満な顔をされるとなぁ……。
しかし、本気出すと多分ドーム吹き飛ぶからな。
バレない程度に手を抜くか。
◆
「それじゃあ、適当に戦ってねぇ」
そう言って、去っていくエレア先生。
いや、おいおいおい。
「どこ行くんですか」
聞くと、ふふふと笑って耳打ちしてくる。
「〈死者蘇生〉のことについて、ちょっと気になることがあってね」
…………。
「ありがとうございます」
俺は深々と頭を下げた。
本当に、彼女にお願いしてよかったと思う。
「よーし、それじゃあ僕とやろっか!」
「ああ、いいぞ」
「私が審判しますね」
そして、俺とサシャは向かいあう。
お互いがどういった魔法を使ってくるのか探り合う状態。少し、緊張してきた。
「開始!」
「〈
唐突に彼女が仕掛けてきた。
一気に周囲が真っ白になる。
なるほど、目をつぶしてきたか。
なかなかいい戦略だ。
戦闘に於いて、視覚聴覚は特に重要である。
その一つを奪えば、相手は動揺して動けなくなる。
だが、それだけだ。
『視覚』しか奪えていないのだ。
俺にはまだ聴覚がある。
彼女が一歩踏み込んだ足音から察するに、距離は二メートルほど。なら、俺は跳躍して上から魔法を降らす。
地を蹴り飛ばし、
「〈
傷はつけない。
ただ、びしょ濡れにするだけだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
視覚が回復する頃には、びしょ濡れになったサシャの姿が前にあった。……ちょっとやりすぎたな。
生地が薄いせいか……色々と透けている。
「負け負け。僕の負けぇー」
白旗を振るかのように、手を左右に振っている。
「勝者、ガルドさん!」
ふぅ、まあこんなもんか。
というか、濡れたくらいで白旗をあげるのもどうかとは思うが。
「ユリもするんだろ?」
しかし、ユリは首を縦に振らなかった。
「いや、ちょっと怖くなっちゃいました……」
おいおい。それでいいのかよ。
その後は適当に雑談をしていた。
「あらやだ、私も混ぜて♡」
「いや、だめだ」
オネェは求めていない。
というか、お前は本当に誰なんだ。
いいかげん名前を名乗れ。
「ところで、時間あるわよね?」
「ああ、別にあるが」
オネェが何か言いたげである。
「私ともバトりましょうよ♡」
「はあ。まだ時間があるから構わないが。一応、どっちの意味だ」
「どっちも♡」
身震いしたのは言うまでもない。
よし、逃げよう。
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