第25話 先輩に煽られる

 翌日、俺は起床して無事学園に登校した。

 件のダンジョンも気になるが、一応は学生なのだ。


 勉学にも励まねばならない。

 まあ、それはともかくとして……。


「あの! 魔法を教えてくれませんか!」

「お前、ずっと見てたんだけどすげえな! どうして最下生なんだ!?」

「なんか好き! 強すぎて一周回って好き!」


 俺は、クラスメイトに囲まれていた。

 というか、一周回って好きって言っているやつ男なんだけど。それはなんか困る。


 うわ待て。なんか投げキッスしてきた。やばい、色々と危険を感じる。


「モテモテ……ですね」


 そして、ユリは不機嫌だし……。


「うわぁ! やっぱすごいね! 混ざっていい? 僕も投げキッス側に混ざっていい?」

「いいわよぉ♡」


 サシャは投げキッス側に混ざろうとするし。

 というか許可するな。サシャはいいがお前が調子乗ってヒートアップする未来が見える。


「おいおい……どうなってんだ」


 右隣に座っているユリに耳打ちをしてみる。サシャに聞きたいところだが、すでにもう投げキッス側に混ざっていた。


「知りません。ふん」


 あからさまに不機嫌である。

 ぷいと違う方を見て、頬を膨らませている。


 謝るべきなのかそうでないのか。

 分からん。もう俺はどうすればいいのか分からん。


「トイレ行ってくる」


 というわけで、逃げることにした。


「私も行くわぁ♡」

「お前は来るな」


 オネェキャラは本当にやめてくれ。そろそろ貞操の危険を覚えてきた。


 とりあえず、ホームルームまでぶらつくか。

 そういえば二階、三階には行ったことなかったよな。


 確か、先輩たちのクラスがあるんだっけか。


 俺は階段を上り、先輩たちのクラスを覗くことにした。

 のだが……。


「お前新入生か。それに最下生と見た。お前がさ、ぶらついていい場所じゃないんだよ、ここは」

「そうだそうだ!」

「お前みたいな落ちこぼれが来ていい場所じゃないんだよ!」


 えーと、黄色の制服を着ているってことは二年の特待生か。

 それと……囲っている二人は一般生徒だな。


「ああ、すみません。ちょっと散歩でもと」

「なに言ってんだ? 最下生は散歩なんかしねぇで、トイレで籠って一人弁当決めてろよ!」

「そうだそうだ!」

「ガハハ! それはおもしれぇ!」


 ……面倒くさいなぁ。

 やっぱ引き返してオネェキャラと戯れてるか。


 もちろん、そっちの意味じゃなくてな。


 踵を返すと、彼らがゲラゲラと笑っている声が聞こえてきた。まったく、知ってはいたが先輩後輩関係は面倒なものらしい。


 特に、最下生の俺は。


 でも闘技大会では、各学年の代表が出るんだよな。

 なら、間違いなくあの特待生が出るはず。


「潰すか」


 とりあえず、魔りょ……筋肉でどうにかすればいい。

 全ては筋肉パワーだ。筋肉は全てを解決する。

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