第22話 報告
日曜日。
俺は一度エレア先生に報告してからにしようか悩んだが、なにもせずダンジョンにやってきていた。
前回ユリと来た、十階層のダンジョンだ。
やはり、戦ってみて分かるのが普段大人しい魔物が凶暴化していると言う点。
最奥になにかあるのは間違いない。
それが、物なのか者なのかは分からないが。
できれば前者であってほしい。
前者ならぶっ壊せばどうにかなる可能性があるからだ。
だが、者だった場合。
俺はそいつと戦うことになるかもしれない。
少なくとも、これほど魔物を操ることができる相手なのだ。強敵であるのには違いない。
「くそ……! しかしやたら一つの階層が広い。これ間違いなく下級じゃないな」
そんな独り言をぼやいてしまうほどに広闊だった。
階層を降りるほど、敵も強くなってきた。
この様子だと、今の時代の冒険者では攻略なんてできないだろうな。
……そこでふと疑問に思う。
当たり前のことのように思っていたが、ここは六百年前とは違うんだぞ。これほどまでの能力者が今の時代にいるとは思えない。
魔族……あるいは俺と同じ転生者か。
転生魔法は俺オリジナルのものではある。
が、やろうと思えば誰でも作ることはできる術式で構成されているのだ。
「最悪だな」
五階層まで来たが、一度戻った方がよさそうだ。
エレア先生に報告して、詳細を聞こう。
とりあえず、自分が転生者であることを告げ、同じ転生者を見たことがあるかどうか確かめたい。
彼女の地位であれば、見たことがあってもおかしくはないはずだ。
「〈空間転移〉」
発動し、魔法術式研究室に移動した。
「わっ。驚いたね。ガルドって、転移魔法も使えるんだぁ」
関心した様子で、うんうんと頷いているエレア先生。
だが、すぐに指をピンと立てて、
「でもノックして入らなくちゃねぇ」
「ああ、それに関してはすみません」
俺はとりあえず頭を下げた。
とにもかくにも、早く報告しなければならない。
「近くの森にダンジョンがありました。先に、無許可で入ってしまったことを謝罪します」
「それはだめだね。めっ。それで、近くの森にダンジョン? それって『タタラの森』のことぉ?」
ああ、あそこって名前があるんだな。
俺は首肯する。
「あそこは王都に近いこともあって、探索し尽くしているはずだけど……。どの辺にあったんだい」
「分かりました。今映し出します」
そう言って、〈地図作成〉と〈
〈投影〉とは、脳内で想像されている内容を光の放射として床や壁に映し出す魔法だ。映画館等で使われる技術とと同じ構造だと思っていい。
「ガルドったら、二つ同時に魔法を扱えるんだ。あなた、もしかして『賢者』だったりする?」
少しドキリとする。
ともあれ、後でその件に関しては説明するので構わないか。
机に映し出された地図を、俺は指さす。
「ここにダンジョンがありました」
「ふーむ。ここかぁ」
少し考えるそぶりを見せた後、エレア先生は立ち上がり、
「ちょっと、地理を専攻している研究者に聞いてくる。待っててねぇ」
手を振りながら、ドアを閉じる。
俺一人残された研究室で、ぼうっと映し出された地図を眺めていた。
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