第21話 答えのない問題


「どっちがいいと思う!?」


 そう言って、サシャは白いスカートと黄色いスカートを掲げた。ああ知ってる。これ、どっちを選んでもだめなやつだ。


 空想上の話かと思っていたが、実際に体験することになるとは。


 まあ、俺は常識ある紳士なのでどう答えるかは分かっている。


「どちらも似合っているよ」


 どうだ! これが正解だろう!


「はぁ? ハッキリしてよぉー」

「……白かな」

「うーん、じゃ黄色にする!」


 分っかんねえよ! 俺もうどうすればいいのか分っかんねえよ! やっぱ永遠の謎だよ。これどうしたって正解なんて求められねえよ!


「私は白にします!」


 そう言って、彼女たちは満足そうにレジへと持っていく。会計を済ませたようで、持っていたバッグにスカートを入れて帰ってきた。


「俺の服選びにも付き合ってくれるか」

「ええ! もちろん!」

「任せてください!」

「助かる」


 やはり、女の人に選んでもらった方がカッコいい衣服を手に入れることができるだろう。俺は前世からなにかと『センスがない』と言われ続けてきたからな。


 とりあえず、二度目の人生はそんなことは言われたくない


 この通路は多く服屋が並んでいるようで、すぐ隣に男物の店があった。ふむ……分からん。


 全部同じに見える。というか、長袖半袖と、そんな感じの服の名称しか知らない。


「これ! これ似合うと思います!」


 そう言って、ユリが長袖の服を見せてきた。


「これ、フードもついていますし、ポケットもいい感じの場所にあるので機能性もバッチリだと思います!」

「ユリが言うなら僕は言わなくてもいいよね。だって、ユリは――」

「だから!!」


 頬を膨らませているユリを横目に、彼女が選んでくれた服を見る。うん、服の表面には水色の縦線が左右に入っていて、わりとカッコいい。


 センスもないから、とりあえずこれにするか。


「ありがとう。それを買うよ」

「本当ですか! 嬉しいです!」


 はい、と渡してきたので、それを受け取る。

 レジに持っていくと、


「50ゴールドです」

「そんなにするのか……」


 値段も見ずにレジに持ってきたのはいいものの、50ってさすがに高すぎるのでは? 5ゴールドで確か前世では弁当が一個買えたから……約十個分!


 まさしく貴族の買い物だな……。

 お洒落な服屋さんって、だいたいこのくらいが相場なのか?


 とりあえずお金を払い、彼女たちのもとに戻る。

 一応確認のために聞いておくか。ぼったくられてたら困るし。


「普段の服ってさ、いつもなんゴールドくらいのを買っているんだ?」


 ユリとサシャは小首を傾げて、


「だいたい、50から80くらいですかね?」

「それくらいね」

「……そうか」


 武器や防具だって、質のいいものを選ぶとなると、それ相応に高くなるからそんなものなのだろうか。


「ともかく、ありがとう。助かったよ」

「気に入ってくれたようで嬉しいです!」


 今さらなのだが、ユリの笑顔って可愛らしいよな。

 いやいや、なにを考えているんだ。


 表情に出ていないよな? さすがに出ていたらキモすぎる。


 様子を伺ってみたが、うん。大丈夫そうだ。


「とりあえず今日は解散かなー。楽しかったよー!」

「私も!」

「ああ、俺もだ」


 そして、ここで解散となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る