【書籍化】ゴミ以下だと追放された使用人、実は前世賢者です～史上最強の賢者、世界最高峰の学園に通う～

第4話 入学試験、実技披露

　公園のベンチで目が覚めるのは二日目だ。いい加減、さっさと合格して家をゲットしたいものだのだが。

　とりあえず水魔法で顔を洗い、歯を磨いて学園へと向かう。

「あ、君だよ君！　えっと、ガルドくんだったかな！　昨日ぶりだね！」

　向かおうとしている最中、いきなり背後から声をかけられる。

　ツインテールをふりふりとしている、金髪の少女。

　ええと、確かサシャだったか。

「おはよう。登校途中か」

「そうだね。よかったら一緒に行こうよ！」

「構わん。それじゃあ向かうか」

　そして、無事学園へと到着したわけなのだが……。

「あなた、なに者ですか。どうしてガルドさんと一緒にいるのです」

「き、急になに！？　ええと、ガルドくん。この子は？」

　膨れっ面のユリを見ながら、俺は嘆息する。

「彼女はユリだ。俺の友人……と言うべきか」

「ゆ、友人！　私、友達なんていなかったから嬉しいです！」

　急にこちらへと向いて、手を握ってくる。

「ええと……君のことが大好きみたいだね」

「そのようだな」

　ともあれ、その後ユリとサシャは意気投合したらしく、普通に会話をしていた。

◆

「本日は実技披露を行う！　各試験官の前へ行き、己が持つ最大限の魔法を見せてみろ！」

　だだっ広い運動場に集められた俺たちは、黙々と試験官の説明を聞く。

　人数は最初と違い、だいぶん少なくなった。

　といっても、まだ二百はいると思われるが。

　俺は指定された試験官のもとへ向かう。

　どうやら俺は最後尾らしい。

　各々が自身が持つ魔法を誇らしげに披露している。

「中級ばかりじゃないか」

　合格する気がないのだろうか。

　なんといったって、世界中の貴族が集まる学園なのだろう？

　まあいい。

　とりあえず、家が欲しいから最上級魔法でも使って即合格を狙うか。

「次はお前だ。まったく、最後の最後に平民とは」

　昨日とは違う試験官のようだ。

　お金があったら、それらしい服に着替えてきたのだが、致し方ない。

　周囲を見てみると、未だ試験を終えたやつらは俺のことを眺めているようだ。

　しかし、昨日の面々もいるので嘲笑する目ではなく期待の眼差しも混じっているが。

「それじゃあ、始めろ」

「分かった」

　さて、まずはあれをやるか。

「〈地獄の業火（ヘル・ファイア）〉」

　上空に手を掲げ、凄まじい勢いで立ち登る炎の柱を立ててみた。

　この魔法はもちろん最上級で、普通なら相手に向かって放つものだがな。さすがに前方に放つと危険だ。

　……なぜ、試験官は無言なのだろうか。

　なるほど、まだ足りないのだな。

「〈大地破壊（グラウンド・ブレイク）〉」

　大地を人、建物がない方向へと一直線に割ってみた。

　運動場が無駄に広いからなし得れる技だ。

　しかし、まだ無言。

　というか、口を開きっぱなしではないか。

　……足りないか。

　この様子だと、中級魔法ばかり使っていたやつらは落第判定のようだな。

　とりあえず、地面は戻しておくか。

　指を弾くと、轟音を発しながら地割れが戻っていく。

　まったく。

　俺でこれなのだから。

　念のため、もう一つ行くか。

「〈生命贈与（ライフ・ギフト）〉」

　地面に手をつき、詠唱を唱える。

　すると、土だけであった地面に生命が芽生え、俺の周りに草木が生え、野うさぎが走り回った。

　さすがに、これで合格だろう。

　生命を与えるのは最上級の中でも、さらに上位の魔法だ。

「す、素晴らしい……！　それに見たことも無い魔法をこんなにも！！　合格だ、合格！」

「うおおおお！　あいつすげぇ！」「なに者なんだあいつは！？」

　ひとまず合格はできたらしい。

　最終試験まで残れたようだ。

　ふと別の方向に視線をやると、ユリが魔法を披露しているようだった。

　下級ではあるが、俺の魔力を与えたからだろう。

　強大な威力を発揮し、無事合格となったようだ。

「よっ！　君、やっぱりすごいね！」

　サシャであった。

　微笑んでいることから、彼女も合格しているのだろう。

「あの魔法なんなの！？　初めて見たんだけど！」

「あれ、貴族の君も初めてなのか？」

　自分自身が最上級は使えないにしても、父親母親辺りが使っていてもおかしくはないと思うのだが。

「いーや！　見たことない！」

「……そうか」

　もしかすると、俺の時代よりも魔法技術が下がっているのかもしれないな。

　しかしそれはよくあることだ。

　技術は失われたり、新たに生まれたりを繰り返す。

「私も合格しました！」

　話していると、ユリも混ざってきた。

「見ていたぞ。素晴らしい魔法だった」

「ありがとうございます！　なにもかも、ガルドさんのおかげです！」

「いや、違うな。俺は魔力りょ――筋肉パワーを増やしただけで、技術は与えていない。きっと、お前自身に才能があったのだろう」

「……そう言ってくれると嬉しいです！」

　そんな調子で話していると、もうほとんど人がいなくなってしまっていた。

　さて、そろそろ解散とするか。

「それじゃあな。お互い、最終試験頑張ろう」

「はい！」

「うん！」

　はぁ。また野宿か。