(愛らしい、か…)


親友は恥ずかしげもなく、セツにそう告げる。

本人は思った通りを口にしているだけであって。

未だに自覚がないのだから、まあ質が悪い。



とはいえ、それになんの抵抗もなく賛同出来てしまう私も、相当だなとは思うのだが…。




セツは綺麗な顔立ちだ。

色白で細身、背丈も此方の世界では平均より小さい方だから、女性に見えなくもないだろう。


かといって、初対面で性別を迷うほど中世的かと問われれば。それほどではないとは思う。







(魅とれる…)


一度映してしまうと、無条件に目が離せなくなる。

セツが単純に美人だからだとか、それだけの理由ではなく。言葉にならない、その秘められた魅力に。


私はただ、惹き付けられてしまうのだ。







(私も、人の子か…)


セツが現れなければ。

そのような感情に振り回される事もなく、一生独りを貫いたかもしれないが。


知ってしまえば、案外と悪くはないものだと、すんなり思えてしまえるもの。







(きっと、)


神子である事に、ほぼ意味などない。

それが偶然…運命的にも、彼であったから。


問えばルーファス達もまた、迷わず。

そう答えるのではないだろうか。







「セツ…そろそろ起きて下さい。」


「んっ…」


ゆっくり開かれた瞳が、私を映し出す。叶うなら、ずっと…そうあればいいだなどと。


この感情はどうにも抑えが効かず、相当に欲深いもののようだ。







「ヴィン…も、ちょっと…」


「駄目です、そのような寝方をしては風邪を引いてしまいますよ?」


その声が私の名を紡ぎ。

下心に髪へと触れれば、仔猫のように甘えた表情を見せる。


その何気ない仕草の、なんと罪深いことだろう。






(欲しくならないわけがない…)


神が選ぶほどの存在なのだから。

けれど、それは独占出来ないことも承知の上。






「ほら、セツ…目覚ましに、皆を呼んでお茶にしますから。」


されど、この束の間を胸に仕舞っておくぐらいは。


どうか、許してほしい。







「ルーファス、ちょうど良いところに───」


友の幸せを願う気持ちにも、偽りはないのだから。



…end.

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