ウワサ好きのオカ研部長
如月二十一
第1話 黒猫
どこかから蝉の鳴き声が聞こえる。夕日が差し込む教室に、二人の女子高生がいる。
「ねぇねぇ、知ってる? 黒猫の噂」
「黒猫の噂?」
「そう、最近流行っている噂なんだけどね。夕方6時頃に横断歩道を渡ったとき、目の前を黒猫が通り過ぎると……」
「通り過ぎると……?」
「見た人の周りで不幸な事が起きるんだって!」
「……なんか、肩透かしな噂ね。てっきり黒猫を見た人は死んじゃうとか、どこか違う世界へ連れて行かれるーとかかと思った」
「でもでも、自分じゃなくて自分の周りに不幸が訪れるって、ちょっと怖くない? 自分のせいで大変な事が起きたらどうしよう! って」
「それは……そうだけど。でも、それって結局噂でしょ? 不幸な事が起きるって言っても、どのくらいの不幸なのかも分からないわけだし。言い出した人がたまたま黒猫が目の前を通り過ぎた時にそういう不幸が知り合いに起きただけ、ある意味運が良かっただけよ」
「そうかなぁ? でも、噂になるくらいには黒猫を見て、友達や家族に不幸が起きたって人がいるんだよ?」
「たまたまでしょ、たまたま」
「そっかぁ……オカルト研究部としては是非とも興味深い噂だったんだけどなぁ」
「もう……私、そろそろ帰るから。お父さん今日も忙しくて帰るの遅くなるらしいし」
「あ、お父さん引っ越し業者の人なんだっけ」
「そ。今日は仕事が立て込んでいるらしいから。オカルトにハマるのもいいけど、節度は持ちなさいよ?」
「あ、うん。黒猫に気をつけてね?」
「だから……はぁ、まぁいいわ。じゃあね、また明日」
「うん。バイバイ」
静かになった教室で蝉の声だけが響く。
ーーー
横断歩道で青になるのを待つ少女。
「もう六時か……早く帰んないと、暗くなっちゃう」
信号機が青になり、歩道を渡る。が、真ん中で足を止める。
「……猫?」
猫が鳴く。
「なんで猫が……」
蝉の声が大きくなる。
「……6時頃、黒猫を見ると周りで……」
蝉の声が更に大きくなる。
蝉の声にまぎれてクラクションが鳴る。
ーーー
「速報です、今日の夕方、トラックが赤信号のなか横断歩道に飛び込み、下校途中の女子高生がはねられ、死亡する事故が発生しました。トラックはブレーキが壊れており、整備不良から起きた不幸な事故でした」
ラジオの電源を切る少女。
「あーあ」
「だから黒猫に気をつけてって言ったのに」
猫の鳴き声が、響き渡る。
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