無視をした後悔
シヨゥ
第1話
仕事を失い、貯金だけで生活していたあの頃。毎日ハローワークに通い、求人に応募していたあの頃。
書いた履歴書と職務経歴書は数十枚。受けた面接は十数回。目減りしていく貯金の額を見ながら必死になって職を探していた。
努力努力そしてまた努力。何回祈られても次の会社を探してまた努力。そんな努力の日々でやっと採用をつかみ取った。
面接で感じたかすかな違和感。それは入社後たしかな違和感に変わっていった。
早朝から深夜までの残業の日々。経営陣の罵声と怒声ばかり飛び交う日々。入社後1か月で社歴が一番長い人がまだ半年しか働いていないという事実を知り愕然とする。
心身に不調をきたしながらもだましだまし働いていた。貯金がないからやめるわけにもいかず、神経をすり減らした。
辞めたい。死にたい。いや生きたい。思考がぐるぐると廻り、目が回り。3か月目にして病院へ搬送された。
それでもこの3か月耐え続けた日々がもったいなくて辞める決意が持てなくて。それを見兼ねた友人が退職代行をしてくれて。また無職に戻ってしまった。
貯金で生活することはできなくて。心身の不調から立ち直れずに就職活動もできなくて。なんだか人が怖くなっちゃって。あの頃と同じ状況なはずなのに、あの頃には考えられないほどに弱ってしまっている。
違和感を無視した結果がこれだ。実家に戻るという選択肢を無視した結果がこれだ。どれだけ追い込まれても自分の感覚を無視をしてはいけない。可能性を無視してはいけない。そう今になって思うのだ。
無視をした後悔 シヨゥ @Shiyoxu
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