行列のある店

バブみ道日丿宮組

お題:未来のラーメン 制限時間:15分

行列のある店

「噂を聞きつけてやってきたものの……」

 すごい行列だ。

 予約だけで、10日分はあるらしい。

 今並んでる列の人は、カウンター席を狙ってる人。そこだけは予約無しで座れる場所だ。

 子どもから始まり、老人までもが並んでいる。

 そんなにもここのラーメンは美味しいのだろうか。テレビで特集を組まれてたとはいえ、少し以上泣きがする。

 たった600円のラーメンだ。

 並ぶほど、食べたいものだろうか?

「他のところいく?」

 付き人が意見をいう。

「どうしよっか」

 行列の数を見る限りでは数時間は覚悟しなければならない。

「他のラーメン屋行こっか?」

 さすがにチェーン店なら、待つ必要もないはずだ。

 とはいえ、ここから駅に戻るまで、歩いて30分もかかる。

「タクシー呼ぶ?」

「……大丈夫」

 心底嫌な表情をしてただろうか、付き人がやたらと心配そうだった。

「お腹すいたら、ラーメン以外にしようっか」

 その一言に視線を浴びた。

「えっ、なに……?」

 行列がこちらを見てた。

 まるでゴミを見るような……そんな嫌な気配を持つオーラが行列から出てた。

「……あたしなんかしたのかな」

「ラーメン好きには聞き捨てならない言葉だったみたいだね」

 若者はわかるけど、小学生に睨まれる理由だとは思いたくない。ただたんにお腹が空いて苛立ってるだけと信じたい。

 駅に向けて5分ほど歩いても、ラーメン屋の列は続いてた。

 ラーメン屋に到達する前に気づけばよかった。そうすれば、意味のない徒歩時間をなくすことができたのだから。

「駅前までもしかしたら、続いてるかもしれないね」

「なんで気づかなかったんだろう」

 答えは知ってる。

 付き人との徒歩が楽しかったからだ。

 周りを見る余裕なんてなかった。

 ずっとずっと会話をしていたかった。

「僕はなんだろうって思ってたけどね」

 どうやら付き人は違ったらしい。

「つねらないでよ」

 思わず、手をつねってしまった。

「会話が楽しくなかったわけじゃないから、ほら機嫌直して?」

 頭をすりすりと撫でられた。

 安心感が強くなった。この手に抱きしめられたいと思った。

「ぎゅっとして」

「はいはい」

 幸せがいっぱいだった。

 ラーメンなんてどうでもよくなるぐらい気持ちが良かった。

「あそこのそば屋さんなんてどう? 痛いよ」

 また手をつねった。

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行列のある店 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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