これは実験です
みゆたろ
第1話 プロローグ
朝から秋晴れで暑くもなく、寒くもない今日は
ちょうどいい気温だ。
きっと過ごしやすい1日になる。
僕(斉藤司)、13歳。中学一年生。
他のクラスメイトよりも、身長が低いのがコンプレックスだ。他のクラスメイトの男子は170そこそこあるのに対し僕は150ちょいしかない。
背の順に並ぶといつも一番前だ。
背が小さい事をからかわれるばかりの毎日だった。
友達と遊んだり、話したりつまらないことで笑いあったりーーそんな事が、この頃は自然となくなっていった。
僕は塞ぎ込み、クラスメイトともほとんど口をひらかない。ただ漠然と授業の終わりを待つ。一言の会話すらもない日が、僕にはざらに転がっていた。
背の順で並ぶと、僕を基準にクラスメイトは並ぶ事になる。
だが、僕はいてもいなくても変わらない静かな子ーー。
いつからか、自然とそんな僕はクラスメートにとって、ただの影であり、空気になった。
まるで、そこにはだれもいないかのように。
寂しい?
寂しくない?
そんな風に問いかけてみるけど、答えはみつからない。
そして今、僕の知らないところで、何かが始まっている事など知るよしもない。
学校では、友達もいない孤独な毎日。
そして家に帰れば、両親は共働きで、僕が眠った頃に、帰ってくる。
だけど、僕は一人の時間が大好きだからこれでいーんだ。
司は毎日のように繰り返した。
ーー1人でいい。
ーー1人がいい。
そう思っていた。
いや、無意識のうちに、そう思おうとしていたのかも知れない。
僕は孤独だ。
そして現代を生きる大人達に、今、危険が迫りつつある。
現在進行形ではなく、突然迫ってくるとーー。
その危険から、大人達はどんな風に子供を守ろうとするだろうか。
※――宅急便。
これは近未来の話だ。
令和と比べるとこの街はずいぶんと変わり果ててしまった。
令和の頃はまるで縮小された地図のように、細々とした家が密接していたのだが、数々の自然災害を繰り返した挙げ句、住民たちの住む家は少しずつ離された。
ーーもしものとき、被害を最小限に抑えるために。
しかし、そのために埋め立ててしまった場所も多く、それが二次災害にならないか。そんな不安を抱いているものもいる。
そんなふうにそれぞれの家の距離を離したことで自然とご近所さんとの付き合いも減っていき、現代の冷たい近所付き合いが生まれたのだという。
そんなある日。
僕のもとに大きな荷物が届いた。
それは僕の背丈ほどもある大きな荷物だ。
荷物が入った箱によじ登ると、宛名が見える。
「斎藤司さま」
荷物は、とても重そうだ。
僕にはそれを受けとることも、持ち上げることも出来なかった。
「ーーここに置いてください」
僕はそう言って、受取人のところに名前を書いて、配達員に渡した。
「ご苦労様です!」
いつも僕はこういって、配達員を見送る。
配達員は軽く頭を下げてから、急いで階段をおりていく。
ーーなんだろ?僕に届いてる。
興味心でいっぱいになっている僕の脳裏に、呪文のような母の言葉が繰り返された。
毎日の様に、母が言っている言葉。
「知らない人が来ても、玄関を開けちゃダメだよ」とか「郵便とか宅急便は受け取っといて」
とか。
ーー矛盾してるな、と不意に思った。
アパートでありながら、閉ざされた閉鎖空間とでも呼べるほど、近所との付き合いもなく、周りで何が起こってもわからない。
人とすれ違う事すら奇跡に近い。今ではそんな生活だ。
閉ざされた閉鎖空間である我が家に、荷物を届ける様なもの好きは、滅多にいない。
それなのにーー。
僕に届いた始めての荷物。
中は何だろう。
開けたら、お母さんに怒られるだろうか?
体が勝手に動いてしまう。
段ボールの上までよじ登り、何とか僕はガムテープを外し、その荷物を開けた。興味心がもうどうにも抑えられなかった。
※ロボット
荷物のハコを開ける。
もう怒られるという「恐怖」よりも「コウキシン」のほうが勝っていた。
「これは実験です」
そう書かれたメモの下にはロボットのようなものが入っている。
このロボットだろうか?
メモにはザツに描かれた絵が書かれていて、人形にもみえるし、人間にもみえるほど、落書きに近い感じだ。きっとこのロボットの絵なんだろう。
僕はそう思った。
なぜならば、人間でいう「腰」のあたりに丸が三つならんでいる。ロボットの腰の部分にも三つの丸いボタンがあるからだ。
三つの丸印の真ん中にバツ印がついていて「このボタンを押せーー!!」と書かれている。
指示の通りに、僕は中央のボタンを押す。
ロボットは黒ずんだ赤い色をしていて、人間よりもひとまわり小さいくらいの大きさだ。
ーーこのロボット、結構大きい。
それが僕の印象だった。
「……」
数秒間、次に何が起こるのか?ワクワクしていた。
「ーーあなたは、サイトウツカサくんですね?」
突然、ロボットが話し始める。
ーーえぇぇぇぇぇ。
驚いたハムスターのように、驚きのあまりに飛び上がってしまう。
「ーーまぁ...まぁ...落ち着いて」
つい今しがた話しかけてきたロボットが、司を落ちつかせようとするけれど落ちつけるわけがない。
突然、ロボットに話しかけられたのだから驚かないほうがどうかしている。
しばらくはロボットをみつめていたツカサだったが、少しすると、ロボットに歩み寄っていた。
※ui
気のせいだったのか?
そう思いながらずっとロボットをみていたが、キョウミにまさるものはなく、ゆっくりとあゆみよっていく。
「ーーキミは?」
といかける。
「人はワタシのことを、ユーアイとよびます...」
「ユーアイって何??」
「はい!かぎりなく人に近いロボットです」
ーーうーん。。
ぼく、あんまりわかんないや。。
わずか数秒。
ほんのすこし考えてから、つかさはリカイすることもあきらめたようだ。
「ーーわたしにナマエをつけて下さい」
ユーアイがいう。
「ーーえ?だってロボットでしょ??ナマエなんているの?」
ツカサがきく。
「あなたのつけるナマエがほしいです」
ユーアイが、テレたようにわらう。
「ーーもしかして……テレた?」
「そんなふうにいわないでください。まだヒトとはなすのがはじめてで、はずかしいですから」
ユーアイは、はずかしそうにうつむいた。
ーーキミは「カンジョウ」があるの?
ーーヒトにちかいって、、そーゆーこと??
ツカサはふしぎそうだ。
「これからワタシと、ともだちになってくださいね」
ユーアイがカタカタと音をたてて、アクシュをもとめた。ツカサもそれにおうじた。
こうしてユーアイという友だちが、できることになる。
※タケル
今しがた、ナマエをつけてくれとユーアイにいわれたけれど、ナマエなんてそうそう出てくるものじゃない。
「それで、ワタシのナマエは?」
ーーうーん。
「じゃーね、じゃーね、、タケルってどう?」
思いついた名前をいっただけだ。何せ性別もわからない、というか、ロボットだから性別などない等しいのだろう?
「ーーステキな名前ですね。。これからは私のことをタケルとよんでください!」
ユーアイだといわれるものは、ハレバレとした顔で笑った。
表情筋まであるのだろうか?
ちゃんと笑っているようにみえるのだからフシギだ。
ただのロボットなのに、本当に「ひと」が隣にいるような気がした。
タケルはとても表情が豊かだ。
言葉もロボットのようにカタコトではなく、自然な流れで会話も出来る。
そして箱の中からタケルがゆっくりと出てきた。
どうやら彼は自分で動けるらしい。みずからの意思で考え、みずからの気持ちを語る。
それはもはや「人間」だった。
見た目は少しロボットっぽいけど、僕と同じ「人間」の様だった。
※約束
とつぜんですが、ツカサくんはヤクソクという、コトバをしっていますか?
ぼくがタケルと名づけた、ユーアイがきいてくる。
「しってるよ。ヤクソクは守らないとダメなんだよね?」
ぼくは答えた。
タケルがぼくのカタに手をのせる。
「ツカサくんは、ワタシ(タケル)とのヤクソクを守ってくれますか?」
「タケルくん、大丈夫!ぼく、ヤクソク守るよ!」
「それをきいて安心しました」
「ところで、どんなヤクソクなの?」
「"あるジッケン"をしますが、そのことを秘密にすることが、出来ますか??」
ーージッケン?
その言葉だけで、ぼくはワクワクする。
「ーーいいよ!ぼく、ぜったいに誰にもいわない」
ジュンスイに、ツカサがうなづく。
「ーーヤクソクですよ!」
こうしてタケルとのヒミツがうまれ、ぼくは誰にも話さないことを、ヤクソクした。
「それでは、ツカサくんーー突然ですがあなたの荷物をまとめてください」
タケルがいったそのひと言に、ぼくはイワカンを感じた。
カレは敵なのか、それとも味方なのだろうか?
不思議におもいながら、ぼくは荷物をまとめる。
荷物といっても、ゲームやお菓子、飲み物ーーそんなものしかおもいつかない。
「ーー行きましょう」
タケルが手を差し出してくる。
え?いく?ーーどこへ??
ギモンばかりが、あたまの中をグルグルとまわりはじめる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます