第54話 ヘブンスフォール

 頭上に広がるのは、自分の作った設定しか知らない未知なる魔法陣、知らない筈なのに、その魔法をルルルンは今まさに使おうとしている、無意識に腕が上がる、覚えのない印を結ぶ、自分の内から声が聞こえる。その内なる声はヨコイケイスケではない、魔法少女の声。その声は言葉になり発露される。


【ヘブンスフォール】


 瞬間ルルルンとエクスキャリバーンの頭上に展開していた魔法陣は光になり降り注ぐ、圧倒的な質量でありとあらゆる物を巻き込んで空間が光に満たされる、その光に攻撃性は無い、無いが、その光を受けたエクスキャリバーンの究極魔法障壁に異常が発生する。


「なんだと!!??」


 ヘブンスフォールはあらゆる魔法に対する耐性を0にするアンチ・アンチマジック、エクスキャリバーンに対抗するべく、創造主(会社代表)であるヨコイケイスケが後付けで追加した空想上の超越魔法。

 ヨコイケイスケの世界にも超越魔法などと呼ばれるものは存在しない、極界までを上限として、更にそれを使える魔法使いは、タンザナイトのヨコイケイスケ以外、数人と言われていた。

 超越魔法は、更にその上の界位という設定でヨコイケイスケの作った空想の魔法である、存在しない空想上の魔法をルルルンは発動させたのだ。


「本当に発動した……」

「魔法障壁が消える!!??」


 エクスキャリバーンを守っていた究極魔法障壁はヘブンスフォールによって完全に消滅した。

 エクスキャリバーンの最大の防具でもある究極魔法障壁(アルティメットマジカルバリア※命名ミズノ)それさえなければ、純粋な力比べ、それならばまだルルルンにも分がある――――


「なんて思ってるのか?」


 エクスキャリバーンが勝機にまどろみ油断しているルルルンへ斬撃を放つ。

 その斬撃はルルルンの防御魔法を貫通し肩の肉を深く抉る。


「ぐあああああああああ!!」

「甘いぜルルルン!!!言ったろ!お前の力は俺が知ってるお前より弱いと!!!」


 痛みで隙が出来たルルルンに、エクスキャリバーンは巨体を捻らせ、回し蹴りを放つ、辛うじて防御魔法が間に合うものの、ルルルンは地上に叩きつけられる。


「がはっ!!!!」


 血反吐を吐く、想像を絶するダメージがルルルンの意識を白く朦朧とさせる。


「グラン……」

「させねえ!!!!」


 回復魔法を使う前にエクスキャリバーンが追撃する、目にも止まらぬ斬撃がルルルンを追い詰める。

 その攻撃をルルルンは紙一重で躱す、少しでも反応が遅れれば一撃で即死する威力、だがルルルンは何故か不敵に笑っていた。


「ライネスの方が、鋭い」


 エクスキャリバーンの斬撃を躱しながら、ルルルンはライネスを思う、毎日のように、この世界で一番の剣を見て来たからか、辛うじてエクスキャリバーンの剣を見切れている。


乱突風ラ・ファーガ


 エクスキャリバーンに突風をぶつけ距離をとる。


「距離を取ってアドバンテージのつもりか?」


 距離を取れば魔法の方が有利、ルルルンは、すかさず遠距離魔法を発動する。


超光閃弾デストロイヤ


 手を真っすぐ伸ばしたその先から、光弾が放たれる、その威力は超界以上、究極魔法障壁が無ければ無事では済まない威力だが。


「キング!!!スラッシュ!!!」


 エクスキャリバーンのが剣を振るとその斬撃はデストロイヤを真っ二つにして、威力が落ちる事なくそのままルルルンに向け飛んでくる。

 なんとか回避するが、魔法使いのアドバンテージである遠距離も、これでは無意味。


「基本能力は圧倒的にキャリバーンが上……」


 まともにやり合えば押し負ける。魔法の連発も怪しいルルルンにとって長期戦はどう考えても不利である。加えて回復しているとはいえ、出血も酷い、意識はユラユラと揺れている。


「スラーッシュ!!!スラッシュ!!スラッシュ!!」


 そんなルルルンに容赦なくキャリバーンは斬撃を繰り返す、回避を続けるルルルンとの距離を一気に詰めると、再びその間合いはキャリバーンに優位な距離になっていた。


「よく躱す!!だがいつまで続く?おらぁあああああ!!!」


 キャリバーンの攻撃が剣だけでなく、打撃を織り交ぜたパターンに変わる。


「ぐッ!!」

 

 上からくる斬撃を受けるとすかさず強烈な蹴りが炸裂する。

 防御障壁がひび割れ、衝撃は貫通してルルルンにダメージを入れる。


「ぐはっ!!!ヒ、回復魔法ヒリオン!!」 


 多彩な連携に逃げの一手しかできないルルルンは、回復を挟みつつの防戦一方。

 出血による眩暈は今にもルルルンの意識を奪おうとしている。


三呪展開トライデント

 

 消えそうな意識の中で、ルルルンは三重で魔法を展開する。


回復魔法ヒリオン激熱化ジクラシオン氷結魔法クラリアル


 回復魔法を使用しつつ、右手で業火、左手に氷を纏わせた拳。同時に発動したそれで、出血を止めつつ、エクスキャリバーンの剣を業炎で大きく弾き、氷の拳を叩きこむ。

 エクスキャリバーンの巨大な身体が一瞬で凍り付く。


「がぁっ」


 動きは止まり、決着がついたと思われたが、エクスキャリバーンを覆う氷がピキピキと軋む音を鳴らし剥がれ落ちる。


「苦し紛れがぁ!!」


 全身の氷を打ち砕き、エクスキャリバーンは大きく剣を振り上げる。


「時間稼ぎはできた!」


 ルルルンは既に爆砕嵐槍ストリムランスの詠唱を終えていた。


「我が最大の奥義で受けて立つぞ!!魔法少女!!!」

「これで終わりだぁぁぁぁぁぁ!」


 ストリムランスが放たれる瞬間、エクスキャリバーンの聖剣クロスカリバーが光りを放った。


「正義の一閃スターフラッシュ


 ルルルンの渾身の魔法が/エクスキャリバーンの最大奥義が

 エクスキャリバーンの顔面に/ルルルンの左手を


 直撃した/切り飛ばした

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