第48話 欲の魔女⑥
「……そうだよな」
ことごとく提案が空振りするルルルンは天を仰ぐ、争いが発生しない方法……
最善を模索するがすぐに思いつくなんて都合のいい事もなく、うーんという唸り声は増すばかり。
「なにかいい方法ない?」
へなへなとした表情で恥ずかしげもなく欲の魔女に助言を求める。
「それ私に聞く?」
「だってなぁ……」
解決の糸口が見つからない以上本人に聞くしかない。
「そうねぇ」
欲の魔女はそう言いながら、ルルルンの事をじっと見つめて
「……1つだけ、あるけど」
含みのある言い方で「一つだけある」と、魔女が予想外の事を言う。
「え?」
あまりにも虚をつく申し出にルルルンは目を丸くする。
「だったら!?」
その方法を聞き出そうと、身を乗り出すと、欲の魔女は身を乗り出したルルルンを逆にベットに押し倒した。
「え?」
よくわからない状況にルルルンは混乱する、目の前には、半裸の美しい女性、顔と顔との距離はほとんどない。魔女の長い黒髪がするりと流れ落ち、ぽかんと開いたルルルンの口に入る。
妖艶な匂いと瞳、僅かに身に付けた布から零れる豊満な胸、少しでも距離が縮まれば触れてしまう位置にある唇が、理性を溶かす。
「まてまて、俺は『女』だ、落ち着け」
冷静になれと促すルルルンに、妖艶な魔女はクスリと笑う。
「あなた、本当は『男』でしょ?」
「へ?」
どこからどう見ても女のルルルンを押し倒し、誘うような指使いでルルルンの胸をなぞりながら、欲の魔女は、確かにそう言った。
「なにを言って?」
「とぼけてもダメだし、貴方からはオスの匂いがする、どう見ても女なのに、なんでそんな匂いさせてるわけ?」
匂い?そんなものが?と慌てて自分の匂いを嗅ぐが、そんなこと分かるはずもなく、どうして分かった?とルルルンは戸惑うばかりであった。
「
「俺が男だとして、それと、お前の言ういい方法となんの関係がある?」
「決まってるじゃない……」
欲の魔女はにやりと微笑み、ルルルンの耳元で囁くように呟く。
「貴方と結婚する……」
「は?」
予想していなかった方法に、ルルルンの頭の中は一瞬真っ白になった。
「どうゆうこと?」
結婚する?誰と?ルルルンは必至に言葉の意味を脳内で整理する。
「俺と?」
「結婚する」
結婚する?
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!」
「だって、それなら私も寂しくないし貴方も魔女だから、同じ魔女同士ずっと一緒にいられるでしょ?」
なぜそうなる!?理解の追い付かないルルルンは魔女の拘束を振り払い、ベットから転げ落ちる。
「一旦、落ち着こうかぁ」
一番落ち着いていないのはルルルンである。
「私じゃイヤ?」
ベットから落ちたルルルンに欲の魔女があざとく迫る。
「イヤとかそういう話じゃなくて」
「イヤじゃないならいいじゃん」
「いや、そうじゃなくて、あのな……」
最適な言葉を探すが見つからない。
「じゃあなんで?好きな人がいるの?」
「それは……」
その問いかけに、ルルルンはライネスの顔を思い浮かべる。
「なんでライネス!?」
「いるの?」
「いやいやいやいやいやいやいないけど!」
一瞬浮かんだライネスにそんなわけないと首を振る。
求婚に応える事が事態の解決につながる、ルルルンは究極の選択を迫られていた。
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