第47話 欲の魔女⑤
さっきまで結婚をしたい!!と、必死な涙目で語っていた様子と打って変わって、真剣な口調で魔女は、ルルルンの提案を拒絶した。
「結婚はしたい、でも結界を解いて人間達と和解はしたくない」
「なんで?」
「ごめんねぇ、私、悪い魔女じゃないけど、良い魔女でもないの」
卑屈な笑顔を見せる欲の魔女の言葉には、明確に他人を寄せ付けない冷たさのようなものが感じられた。
「多分あなたが思っているより、魔女は生き辛いし他人から受け入れられるものじゃない感じなの」
「そんなこと……な」
「ん?」
「そんなことない」と言いかけ、ルルルンは言葉を止めた。
言葉の先にライネスの顔が浮かぶ、果たして本当にライネスはこの魔女を許すだろうか?自分とこの魔女は状況が違う、一括りに同じとは言えない。ライネスは欲の魔女を許さないかもしれない。この世界での価値観を理解できていない、ルルルンの考えはまったく役に立たないのだ。
ルルルンは考える。
ヨコイケイスケの生きた世界に置き換えたらどうか?差別と対立『魔法が使える者:マギア』と『魔法の使えない者:ノーマ』による終らない争い、もしあの世界の状況を違う世界の人間が「マギアとノーマは分かり合える」などと根拠もなく言ったらどう思うだろうか……。そんな簡単にいくなら世界はこんな事になっていないと呆れてしまうだろう。
『つまりそうゆう事』なのだ
この世界でも同じように魔女とそうでないものの間には大きな溝があり、それは簡単に解決できる問題ではないのである。
「理解できない?えーっと、魔法少女さん」
「……できるよ」
「だったらそうゆう事、結界は解かないし人間とも和解しない、私を攻撃してくるなら反撃する、でも結婚はしたいっ!」
この魔女に害意はない、迷惑な行為と言えるのは、たまに街に繰り出してはいい男を魅了してたぶらかす事だけで、明確な敵意や殺意、そう言ったものは持ち合わせていない。
しかし和解という選択肢はないと言う、向かってくる敵にはしっかりと対応をする、その生死を問う事はないのだろう。このままでは聖帝騎士団が討伐に動く、討伐に騎士団が動くなら欲の魔女は対応せざるを得ない……。
必要のない争いを避ける為に、何としてもこの魔女を説得しなければいけない。ルルルンは偽善のような使命感だと気が付きつつも、ライネスやカインがこの魔女と敵対する事が「嫌だ」と感じていた。
「もし聖帝騎士団が領土に侵入してきたらどうする?」
「そうね、イケメン以外は速やかにお帰り頂くわ」
「こんな事約束してくれとは言えないけど、出来るなら誰も殺さないでくれないか?」
「なにそれ?あんた聖帝騎士団の関係者?魔法が使えるくせに?」
「関係者じゃないと言えば嘘になるけど、君の敵でもない、俺が望むのは誰も傷つかない平和的解決だ」
「はぁ」
欲の魔女は呆れた顔をして、誰も殺さないというルルルンの無茶なお願いに首を傾げる。
「誰も殺さない、傷つけないねぇ……」
精一杯の提案、もし何か起こったとしても、被害が出ないようにしてもらう、かなり苦しい説得だとルルルン自体もわかった上での提案……。
魔女はうーんと悩み、少しだけ遅れて返答する。
「約束はできない」
その言葉に、ルルルンは肩を落とす。
「だってあの人たちマジでくるじゃん?そんな人達に手加減してたら、こっちも只じゃ済まないし、もしかしたら殺しちゃうかもしれない、だから約束はできないかなぁ」
さらりと恐ろしい事を言っているが、ルルルンは納得せざるを得なかった、彼女の言っている事は正論だ。
本気で来る聖帝騎士団相手に手加減して勝てるとは思わない、ライネスと手合わせしているルルルンがその事を一番理解していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます