砂時計の王子 〜episode of Sutwwad〜

まこちー

序章

(このエピソードは『砂時計の王子』、『砂時計の王子〜episode 0〜』『砂時計の王子〜episode of Alest』を読んでからお楽しみください)


『砂時計の王子〜episode 0〜』後


〜夜 シャフマ地区の酒場〜


扉の開く音。ルイスがポニーテールを振って入口を見る。

「いらっしゃ……あら!アントワーヌ!」

「ルイス、久しぶりだな」

「私もいますよ!」

アントワーヌの後ろから赤毛を三つ編みにした少年が顔を出す。

「リーシーも来てくれたのね」

「はい!」

と。突然リーシーが宙に浮いた。

「わっ!?……よ、ヨン!ビックリさせないでくださいよ!」

「これはこれは失礼しやした。リーシー様、段差がございましたので上がれないかと心配しやしたよ」

「これくらいなら上がれます!」

宙に浮かんでゆっくり回転しながらリーシーが言う。

「よう!アレストいるか?肉食いてぇ!」

「ミカエラ!」

「ルイスー!」

ミカエラがルイスに抱きつく。

「今日も来てくれてありがとう。いつものでいい?」

「あぁ!いいぜ」

「用意するわね。あ、その前にアレストを呼んでくるわ」

「あぁ、わざわざすまない」

アントワーヌが微笑む。

「……ミカエラ、この店の常連だったんですか?」

「そうだぜ。ん?何でリーシー浮いてんだ?」

「浮遊魔法でござんす」

「解いてください。ヨン」

「ふふ……」

ヨンギュンが右手を動かす。リーシーはゆっくりと落下して着地した。

「面白いものって何だ?」

「あら、終わっちゃったわ。さっきまでリーシーがゆっくり回転していたのよ」

「くくくくっ、なんだそれは。シュールすぎるだろう。面白い冗談だ」

「本当よ!」

店の奥からアレストとルイスが話しながら歩いてきた。

「アレスト、急に来てしまったが大丈夫だろうか」

「おお、アントワーヌサン。リーシーサンたちも。遠くからご苦労サンだな。政治家業はいいのか?」

「今日は特別だ……いや、明日からも、だな」

「明日から?」

「明日からはシャフマ地区にも統一政府の支部を作るための活動を始めるんです」

「なるほど。しばらく出張ってわけか」

アレストが目を細めて笑う。

「ストワード地区が落ち着いたからな」

「それは良かった。明日からまた忙しいのなら、今日はゆっくり楽しく過ごした方がいいねェ……」

ルイスが机を拭いてアントワーヌたちを呼んだ。

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