練習即興小説1
乙Ⅲ
即興小説#1
教室の扉を開けると、そこには変態がいた。
幾ら男子校という過酷な環境とはいえ、抑圧された欲望が
まさかこんな形で爆発しようとは。
彼に僅かばかり残っているであろう名誉のため、名は仮にNとしておこう。
Nは一糸纏わぬ姿で、頭に女性用下着を被り、粗末な椅子に優雅に腰掛け
一身に朝日を浴びていた。
その異様な姿に、見苦しい男の裸のはずなのに思わず凝視してしまう
それは見る者を掴んで離さない禍々しい魔力を放つ宝石のようでもあった。
「おい、俺になんか用か? さっきからずっと俺を見て、気持ち悪いやつだな」
怪訝そうにNは言った。
「いや、だってお前その格好……」
狼狽する俺。
「格好?俺に何か変なものでも付いてるか? 変な奴だな」
Nの態度は、まるでこれこそが本来の姿であると主張するかのようであった。
不思議なことに、他の生徒達も何事もなかったかのようにNと談笑している。
教師達もいつもと変わらず授業を進め、注意するのはNの不真面目な
授業態度だけであった。
Nの異常ぶりを訴えても「それがどうした?普通だろ?」といった反応で
誰もまともに取り合ってくれない。
俺はおかしくなってしまったのだろうか?
翌日、また変態が増えた。OとPの二人である。
被っている下着とその被り方以外はNと同じ全裸であった。
「やったね、た○ちゃん仲間が増えたよ!」
などと呑気に冗談を言っている場合ではない。
変態は日を追うごとに増えていった、四人増え、八人増え、十六人増え……。
まるでウイルス感染のようにそれは広がり、全校生徒が
そしてついには教師達や俺の家族まで変態に。
一年経つ頃には街中が変態で溢れかえり。
更に一年経った頃には世界中が変態で埋め尽くされてしまった。
いや、もう彼らは変態ではないのかもしれない。
今や服を着てパンツを被らない俺こそが変態なのかもしれないのだから。
練習即興小説1 乙Ⅲ @kakukaku_shikajika
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