家出してきた犬を保護したら一緒に暮らすことになった話
萌音蘿
第1話 家出少年
雨が降る夜、人通りのない道を一人歩く。俺の名前は
もうすっかり冬だな。凍ってしまうんじゃないかと言うほど寒い。…いや、それは大袈裟か、でもそれ位寒い。こういう時本当に体毛があって良かったと心から思う。まぁこの世界はみんな毛並みがあるけど。竜人とかは別だけどさ…。
さて、そろそろ家だな…って、ん?家の前に…誰かいる…?蹲っているような…。少し近づいてみるか…ちょっと怖いけど。
近づいてみると、高校生くらいの犬獣人らしき人が薄着の状態で蹲っていた。…え?この子どうしたんだろう…。こんな寒い中薄着で…。…ちょっと話しかけてみようか、放っておく訳にもいかないし。
「き、君、どうしたの?」
俺が声をかけると、男の子は怯えるように顔を上げ、こちらに向けた。
「こんな寒い中どうしたの?」
すると、男の子はこんな質問を投げかけてきた。
「け、警察の人…?」
警察…?あ、分かった。この子家出してきたんだ。それで連行されると思ったのだろう。だが俺は普通のサラリーマン。警察ではない。
「いや、俺は警察じゃないよ」
「そ、そう…ですか」
「…君、もしかして家出?」
俺がそう言うと、男の子は驚いた様な顔をした。どうやら図星のようだ。
しかし、この子をこの場に放置するわけにもいかんな…。寒い中雨に晒すのも可哀想だし…。家、散らかってるけど、入れても…大丈夫だよな?でもこれ、傍から見たら誘拐とかに見えないか?…いや、目の前にこんな凍え震えている子がいるんだ、これは保護だ、親が見つかったらすぐに返そう。
「あのさ、ここに居ても寒いだろうし、家入りなよ」
「…はい」
男の子は立ち上がり、俺の後を着いてくる。俺の部屋があるのは二階だ。階段を上り、家のドアの前に立つ。鞄から鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。しかし、家に俺以外の人を入れるなんて初めてだ。実家出て、ここに住んでからは友達とも疎遠になっちゃったしな…。
「さ、上がって」
「お、おじゃま…します」
しかし、何でこの子は家出してきたんだ?家庭の事情だろうか、まぁあまり聞かないことにしよう。この子にとってデリケートな話題だろうし。取り敢えず俺は部屋の電気を付け、手荷物を置く。そして俺は、タオルを取り出し男の子に渡す。
「…え?」
「びしょ濡れだからさ、これで拭きな」
男の子はタオルを持つと、頭を拭き始めた。しばらく拭いた後、そのまま頭にタオルを載せたまま俯いてしまった。困ったな、こういう時どうしたらいいのか…。あ、そうだ。
「…!」
俺は男の子の背中に両手を回し、抱きつくような形になり、背中を優しく擦ってやった。今の俺には、こうすることによってこの子を落ち着かせようとするしか思い浮かばなかった。
「よしよし、もう大丈夫だよ。何か嫌な事があったんだよな。でもここなら安心だよ」
俺が優しく言うと、どうやらこの子は泣き始めてしまった。
「ぐすっ…ごめんなさい…僕、人に抱かれたの、初めてだったから…」
「…そっか。いっぱい泣きな、人の温もりを感じるんだ」
暫くずっとこの子は泣いていた。多分この子は人の温もりを知らなかったのだろう。親からも…あまり大事にされてなかったんだろう。二十分程経った後、ようやく泣き止んでくれた。
「そういえば名前言ってなかった、俺は
「夏奈防さん…ですね。覚えました」
「ははは、将樹でいいよ」
「そ、そうですか?でも、何となくさん付けしたいので…将樹さん…って呼んでもいいですか?」
「うん、それでいいよ。ところで君の名前は?」
「あ、僕は…
「じゃあ慶夜くんって呼ばせて」
「分かりました」
こうして、慶夜くんは俺が少しの間保護する事になった。にしても、この子は一体どこから来たのだらうか…。謎は少し残るが、今は慶夜くんの面倒を見なければ。俺、頑張るぞ。
夏奈防将樹と安峰慶夜のプロフィール
名前:
年齢:25
身長:183cm
体重:77kg
種族:犬(アラスカンマラミュート)
性別:雄
趣味:ドライブ
誕生日:9月5日
好きなもの:苺・漫画
嫌いなもの:青菜・虫
作者による紹介:今作の主人公。真面目で努力家。でも掃除が出来ない系お兄さん。オレンジ色の目と右目の下の傷が特徴。この傷は昔出来たもの。
名前:
年齢:16
身長:176cm
体重:60kg
種族:犬(黒柴)
性別:雄
趣味:空を眺めること
誕生日:2月17日
好きなもの:コーンスープ・青空
嫌いなもの:トマト・自分自身
作者による紹介:今作二人目の主人公。とある事が原因で家出してきた。自己肯定感が低く、何事もネガティブに捉えてしまう。紺色の目と常に左手首に付けている水晶でできたブレスレットが特徴。
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