曇天、燃える太陽の塔

九重 壮

曇天、燃える太陽の塔

いつからか勘違いしていた。

崇高な憧れが、下品な所有欲に変わってしまった。

遊びで始めた妄想に取り憑かれたのだろうか。

今となってはきっかけなど、些細なものだけど。

誰もいない、曇天の万博記念公園。

私の口からは微かに白い息が漏れていた。

冷えた空気が鼻を通ると、いつかの冬を思い出す。

その度に、混ざるガソリンの臭いで私は目を覚ました。

空になったガソリンタンクを蹴飛ばして、ポケットからライターを取り出す。

妙な高揚感で手が震えていた。

青い海を背景に、拳銃を自分の頭に笑顔で突きつける。

私はそんなつもりだったのだ。

ぼっ

やけに静かな公園に、なにかが燃える音がした。


生きているのか、死んでいるのか。

これが現実なのか、夢なのか。

そんなことは最早、どうでも良いことだった。

沈黙した二つの太陽を、燦然と月が照らした。

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