第8話 苛立つ再会
「ノエル、食べないの?こんなに美味しいのに……。私が食べちゃうよ」
学園の近くのケーキ屋に来たノエルとミコト。お店で一番大きなフルーツパフェを選んで、美味しそうに頬張るミコトが、ショートケーキと紅茶を頼みながらも、あまり食べないノエルに首をかしげなから話しかけた
「……何であなたと二人きりなの」
ミコトの言葉に不満げに答えるノエル。すると、ミコトがフルーツを頬張りながらノエルの質問に答えた
「だって、みんなはまだ授業残ってるもん」
「それは、あなたも……」
「私はこれでも成績上位だから大丈夫。次のテストも頑張ればいいの」
ニコニコと笑ってそう言うミコトに、険しい表情で見つめるノエル。それを見て、ミコトがグイッと顔を近づけた
「ノエル、信じてなさそうな顔してるね」
「別にそういうわけじゃ……」
「まあ、授業ってよりも今日ここは……」
と、意味ありげに呟くミコトに、ノエルがまた首をかしげていると、ケーキ屋にいた人達が、お店の外を指差しざわめきだした
「来た!」
お店の様子に気づいたミコトがガタッと立ち上がると、残っていた大量のパフェを急いで食べはじめた
「えっ……。なにが?」
「ノエルも急いで行くよ!早く食べて!」
「えっ?どこに行くの?」
パフェに入っていた冷たいアイスも勢いよく食べ進めるミコトにつられて、ノエルも慌ててケーキを食べはじめた
「何が起きてるの?」
「後で分かるから。とりあえず、早く食べて!」
ミコトに急かされ何とか食べ終えると、ノエルの手をつかんで出入口の方に走り出したミコト。ケーキ屋の周りには、近くにいた人達が空を指差し見上げていた
「行くよ!私に抱きついて!」
ミコトに言われてミコトの背中をぎゅっと強く抱きついたノエル。手が離れないように、ミコトがノエルの両手を掴み、地面をトントンと蹴ると、勢いよく空を飛び一瞬でケーキ屋の屋上まで浮かび、そのままふわふわ浮かんで移動しはじめた
「落ちる……」
「うん、落ちないようにしっかり掴んでてね」
ミコトの言葉を聞いて、ノエルが更に体をぎゅっと強く掴む。少しスピードを上げて、街の空をふわふわ飛んでいると、突然、二人の後ろから声が聞こえてきた
「あら、二人とも何しに来たの?」
声のする方に振り向くと、サクナが二人に向かって飛んでやってきた
「委員長こそ、何しに来たの?」
少し飛ぶスピードを下げてサクナに話しかけるミコト。その言葉を聞いて、サクナがフフッと微笑む
「点数稼ぎに決まってるでしょ」
「私もです!でも、私が先に情報を聞いたんです。委員長は学園に戻ってください」
「魔法が使えない人を連れて倒せる程、あの人達は楽じゃないのよ」
「知ってますよ!だから……」
ノエルを見ながら言ったサクナの言葉に、ムッとした顔で返事をするミコト。そんな二人の会話をノエルが不思議そうに聞いていると、三人の周りに少し強い風が吹いた
「見つけたー!」
と、突然三人のいる真上から聞こえてきた叫び声に、三人揃って見上げると、巨大なハンマーを振りかざし下りてくる女の子がいた
「危ないっ!」
驚いたノエルが大声で叫ぶ。その間に女の子の攻撃を避けたミコトとサクナ。避けられ、ゆっくりと振り下ろしたハンマーを戻しながら女の子がこちらを睨む
「またお前たちか。他の生徒はいないんか……って、ノエル!なんでこの世界にいるんだ!」
苛ついた声で叫ぶと共に、ノエルを指差す女の子。それを見てミコトが嬉しそうにノエルを女の子に見せるように少し動いた
「エヘヘー。私が連れ戻してきたの。ナギ、良いでしょー」
「ふざけんなー!どんな思いで、ノエルを戦闘不能にさせたと思ってんだ!」
「知らないよー。やっぱり私には、ノエルが必要になったんだもん。連れ戻したっていいじゃん」
「あのー……。あの人は?」
怒っているナギと楽しそうに話すミコトに、恐る恐る話に割って入ってきたノエル。すると、その声を聞いたナギがノエルをキッと睨んだ。その顔にミコトに隠れるように顔を伏せたノエルに、視線を離さずじーっと睨み続けるナギ。不穏な雰囲気が流れるなか、突然ナギがはぁ。と深く深呼吸をすると、ノエルを指差しながら大声で叫んだ
「帰る!覚えてろ!またボコボコに倒して、もう二度とこの世界に帰らないようにしてやるからな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます