第5話 負けられない魔術対戦

「ここなら大丈夫かな?ノエルは危ないから離れててね」

 校庭に移動したミコト達。テストのために使用する生徒は居らず、ミコトとサクナが広い校庭の真ん中で向かい合って立ち、ノエルは、ミコトに言われて学園の玄関で様子を見ている




「さて、始めましょうか。手加減は無しですよ」

「もちろん!手加減なんてつまんないもんね」

 ミコトとサクナがニコッと笑って話をしていると、早々にテストを終えたモカがノエルの所に駆け寄ってきた

「ノエル。こっち!そこは危ないよ!」

 学園の中へと手招きをしてノエルを呼ぶと、ミコトとサクナがいる校庭の見える二階の教室へと入って、ベランダから様子を伺う

「あれなに?二人は一体何をするの?」

「対戦だよ、魔術対戦。つい最近までノエルも対戦してて、とても強かったんだよ」

「そんなわけ……」

 とノエルがモカの話に言い返そうとした時、ドンッと何かがぶつかった音と学園が揺れ、バランスを崩したノエルがモカにぎゅっと抱きついた


「あーあ、また先生達に怒られるよ……」

 揺れが収まり校庭を見て、モカがはぁ。とため息ついた。強風が吹き校庭の砂ぼこりのせいで、目が開けれず、そーっと目を開けながら校庭を見ると、校庭にある木に傷だらけで背もたれているサクナに、空に浮かんでいたミコトが勢いよく向かっていた

「危ない!」

 ノエルが思わずミコトに向かって大声で叫んだ。だが、ノエルの声は届かず、ミコトの手はサクナの顔のすぐ側、サクナの後ろにある木をぶつけ、ぎゅっと強く目を閉じていたサクナがそーっと目を開くと、木がゆっくりと後ろに倒れだした


「サクナ、今日も私の勝ちだね!」

 エヘヘと笑ってそう言うミコトを悔しそうな顔をして睨むサクナの元に、物々しい音が聞こえて校庭に来た生徒や先生達が心配そうに近づいてくる

「テスト免除だ!ノエル、モカ。一緒にケーキ食べに行こう!ご褒美だ!」

 呆然としているノエルとモカに向かって元気よく両手を振るミコトにモカが苦笑いで手を振り返していると、少し足を震わせながらサクナが立ち上がった

「待ちなさい!まだ……」

 ミコトを睨みながら、語気を強めて少し足取りをふらつかせながら、ミコトのいる場所へと歩いていくサクナに、近くにいた生徒達が慌てて腕をつかんでサクナを止めた

「サクナさん、ダメです。これ以上魔力を使うと魔力と体力の回復に時間が……」

 そう言われ、歩いていた足を止め、またミコトを睨むサクナをミコトがニコッと微笑んで見ている

「じゃあね、サクナ。また対戦しようね!」

 手を振ながらそう言うと、地面を軽く蹴りノエルとモカがいる二階へとふわりと飛んで来た

「二人ともおまたせ」

 嬉しそうにモカにぎゅっと抱きついたミコトを頭を撫でるモカ。そんな二人の様子を見たノエルが不思議そうに声をかけた


「対戦に勝ったなら、あなたが委員長じゃないの?」

「違うよー。あんな一回勝っただけじゃダメなの。まだまだ時間かかるよ」

「そうなの……?」

 ミコトの返事に、ノエルが首をかしげているとミコトが倒した木をどうするかと校庭が騒がしくなっていた

「後でヒカリ先生に怒られるよ……」

 と、モカがポツリと呟いた言葉に、ミコトが誤魔化そうとエヘヘと笑うと、校庭を見ていたノエルの手を取り引っ張ると、ノエルに話しかけながら教室の中へと入っていった

「それより、ノエルもお腹空いたでしょ。食堂行こう!魔力の回復にはご飯も大切だもんね」

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