第3話 格好良くて素敵な人

「……委員長?誰が?」

「あなたが。今は違う人になっちゃったから、元委員長だね」

 ミコトの話に首をかしげながら問いかけるノエルに、明るく答えるミコト。すると、二人の話を聞いていたクラスメイトが、はぁ。とため息ついた

「ああ、あの委員長さんね……。まあ私はノエルが委員長の時の方が良かったかな」

「でしょ?なら、モカと一緒に手伝い……」

 と、少し前の席にいるモカをちらりと見ると、視線を感じたモカが、ミコトの方に振り向いて手を振る

「それは却下。そっちに夢中になって、単位取り損ねたら意味ないもん」

「えー。困るよ」

 ミコト達の会話にノエルが戸惑っていると、ガタンと大きな物音と共に教室の扉が勢いよく開き、髪の長い一人の女の子がコツコツと足音を立てながら、ノエルとミコトの方へと近づいてきた


「あら、誰の話をしているの?ノエルさん」

 目の前で、クスッと笑いながら話しかけれ戸惑うノエルのその側で、クラスメイトが、はぁ。とため息をついた

「噂をすれば、ほら……」

 ポツリとクラスメイトが呟いた言葉に一瞬睨んだ。それに気づいたクラスメイト達が、目をそらし苦笑いをしている


「それにしても本当に戻ってきたのね。それは凄いわ」

「学園の一位、二位を争う私が魔術を使ったんです。当然、戻ってきますよ」

 少し嫌そうな顔をしてノエルに話しかけていると、ミコトが嬉しそうに話に割って入ってきた

「でも、負けて魔術も委員長も失ったあなたにはもう価値はないものね」

 クスッと笑ってミコトに言った言葉に、言い返せずムッとした顔をしてノエルに抱きつくミコト。その様子を見た女の人が、ノエル達にくるりと背を向けた

「またね、ノエル元委員長さん」

 そう言うと、スタスタと足音をたてて教室から出ていった

「一応、学園には良い委員長なんだけどねぇ……」

 姿が見えなくなり、ノエルの側にいたクラスメイ達だけでなく、教室中からはぁ。とため息をつく声が聞こえてくる

「あの人は?」

 ミコトに抱きしめられたまま、ノエルが恐る恐る問いかけると、ミコトが抱きしめていた手を離しながら答えた

「ノエルの次に委員長になったサクナ委員長だよ」

「格好良くて、一応人気なんだけど……」

「私の方が魔術の技術も能力も高いのに、なんであの人が委員長なのさ」

「ミコト、それは仕方ないよ……」

 ノエルがミコト達の話を首をかしげながら聞いていると、学校のチャイムがまた鳴り響いた

「授業始まる!」

 バタバタと慌てて机に戻っていくクラスメイト達につられて、ノエルが席を立ち教室を出ようとする。すると、ミコトがノエルの腕をグイッと強くつかんで引っ張った

「ほら、ノエルはここに座って。一緒に授業受けよう」

「でも私は……」

 無理やり座り直されて戸惑っていると、チャイムが鳴り終わり、騒がしかった教室が少し静かになっていく中、教室に女の人が入ってきて、ミコトの隣にいるノエルに気づいてニコッと微笑むと、教壇に立ち生徒達を見渡しながら声をかけた

「みなさん、おはようございます。今日は久しぶりの方もいますので、午前の実技の授業は、のんびりと行いましょうか」

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