第2話 見知らぬ学園の委員長

「天下?魔術学園ってなに?」

 ミコトから出た突拍子もない言葉に、呆然とするノエルをニコニコと微笑んで見ているミコトに、モカがまた呆れた様子で声をかけた

「ほら。ノエル、混乱してるじゃん」

「大丈夫、すぐ思い出してくれるよ」

「そうだと良いけどさぁ……」

 ミコトに返事をしながらはぁ。とため息つきながら、モカがノエルを見ると、三人のいる空の真下から、チャイムの音が鳴り響いた

「チャイムだ!モナカ急ごう!」

 そう言うと、乗っている鳥の背中をミコトがポンッと叩き、モナカがバサッと翼を大きく広げ、チャイムが聞こえる場所へと降りていくと、見たことのない大きな建物が現れて、ノエルがその建物を見入っているとミコトやモカと同じ服を着た人達が側を通り抜けていく

「行こう!遅刻する!」

 見慣れない人達や町並みに、辺りを見渡して呆然としていたノエルの手をミコトが引いて走り出した



「こら、ちゃんと前を見て走らないと転びますよ」

 無理やりノエルの手を引っ張って走るミコトにクスッと笑って注意をする男の人の声に、ミコトが慌てて立ち止まり、ノエルは勢い止められずミコトの背中に思いっきりぶつかってしまった

「クリス先生、おはようございます!」

「おはよう。本当に連れ戻したんだね」

 ペコリと頭を下げて挨拶をするミコトの後ろで、痛そうに手で顔を隠すノエルを見て、クスッと微笑みながらクリスが返事をしていると、ミコトがノエルをぎゅっと抱きしめた

「もちろんです!私の魔力であれば余裕です!」

「そうだね」

 抱きしめられて嫌そうなノエルとテンションの高いミコトを登校途中の生徒達が、不思議そうな顔をして通りすぎていく


「ミコト、遅刻するよー」

 少し離れた場所で様子を見ていたモカがミコトを呼ぶと、ノエルを抱きしめていた手を離し、今度は手をつかんだ

「ノエル、急ごう!」

 そう言うとクリスにペコリと頭を下げて、ノエルの手を引っ張ってモカのいる方へと走り出した

「ちょっと、強く引っ張るのは……」

 ノエルの声を無視して、バタバタと慌ただしく走り去っていくノエルとミコトの後ろ姿をクリスがクスッと笑って見届けている






「あの……」

「なに?」

「ここはどこ?私、すごい浮いてない?見られているし……」

 教室に着いたミコトが机に座って授業の準備をしているその隣で、ノエルが少しうつ向いて廊下からノエルを見る生徒達や教室にいる人達に見られないようにしている

「うん。まあ少し珍しいだけだから、すぐ慣れるよ」

「あのね……!」

 周りの視線を気にする様子のないミコトに、苛立っている様子でノエルが話しかけている中、授業の時間が近づいて教室が更に騒がしくなっていく

「あれ?ミコト、ノエルを本当に呼んだの?」

 教室に入るなり騒がしいノエルに気づいたクラスメイト達がミコトに声をかけてきた

「うん!スゴいでしょ。ちゃんと本人だよ」

「へー……」

「じゃあ、ミコトが言う天下取りも夢じゃないね」

「もちろん!」

「あの……!」

 ご機嫌で話をするミコトと、不思議そうにノエルを見つめるその様子に、ノエルが声を荒らげて椅子から立ち上がった

「その天下とか魔術とかなんなの?私、学校行かないといけないの。早く帰して!」

 そう叫ぶノエルの言葉が教室中に響いて、一斉にノエルに振り向き教室が静かになった

「……ミコト、まだ何にも話してないの?」

「うん、面倒だから言ってない。思い出してくれるの待ってる」

「少しは説明しないと、思い出せないよ」

「そっか、じゃあ……」

 クラスメイトにそう言われて、机に教科書を置くと椅子から立ち上がり、ノエルの両手をぎゅっとつかむと、エヘヘと微笑みながら、教室中に響き渡る程の声で、ノエルに向かって叫んだ

「ノエル、お帰りなさい。アードルド魔術学園の元学園委員長さん!また一緒に頑張って、この学園の委員長になろうね!」

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