彼女が欲しかったので自分を崇め奉るだけのエセ宗教をでっち上げたら、学園の美少女たちが続々と入信してハーレムになったんだが
大宮
教祖を名乗ろう!
1. そうだ、宗教作ろう(前)
彼女が欲しい。
童貞を捨てたい。
ただそれだけが望みだった。
「ご覧ください教祖様っ……! 足の爪、髪の毛、唇の皮、そして唾液……すべて、すべて集めましたっ! これでわたしも、教祖様の側近としてお迎えいただける……っ! ふっ、フヘへへへへへ……ッ!」
黒髪ショートの似合う美しい少女が、複数の小瓶を胸元に抱え、よだれを垂らしている。
何故こうなってしまったのだろう。僅かに催した吐き気を意識の遥か彼方へ投棄し、俺は物思いに耽る。
すべての発端は、やはりあの昼休みだろうか……。
「そうか! 宗教を始めれば彼女が出来るんだ!」
「おっと何故そうなる?」
教室の隅でスマホを囲い昼食のコンビニ弁当を食らっていると、友人の
「……というのは冗談だけど、これって実質ハーレムみたいなものだよな?」
「まぁ確かに」
「だって、自分が教祖ってのを良いことに美人を集めまくってエロいことしてたんだろ?」
「らしいね。ほぼ強制だったみたいだけど」
「でもさぁ、それでも、それでもよ? 自分の女であったことに変わりは無いわけじゃん?」
「あー、まぁねぇ」
どこから説明したものか。
話は昨日の夜に遡る。
海外で大規模なテロが起こり、事件発生時の映像が動画投稿サイトにアップされて、それを肴に俺とツカちゃんはSNSで他愛も無い話を繰り広げていた。
で、その関連動画に出て来たのが、何十年も前に日本で勢力を拡大し、テロリズムへ走り世間を震撼させた過激派カルト教団に纏わる解説動画だった。
ツカちゃんはこれに強い興味を持った。
といっても、危険なテロリズム思想に染まってしまったわけではない。
彼が関心を抱いたのは、教団内で適応されていた『女性信者は教祖へ身を委ねることで徳を高める』という独特な教義とその実態だ。
「羨ましいわぁ〜。教祖にさえなればどんな女も選びたい放題ってことだろ? 最強じゃん」
「なるほど。お布施ックスってわけか」
「真顔でそういうこと言うから好きだわ裕貴」
「俺もツカちゃんの素直なところ好きよ」
「「へっへっへっへっへっへ!!」」
俺と同じく年齢イコール彼女いない歴のツカちゃん。どうすれば彼女が出来るか、という議題でしょっちゅうこんな身も蓋も無い話をしている。嗚呼、女子の視線が痛い。
しかし、宗教か。
立場を利用とした強権的ハーレム……国家転覆にはクソほども興味無いけど、ちょっと憧れるな。
「よし。じゃあ作るか」
「えっ?」
「宗教団体」
「は? マジで言ってる?」
「あれだよ。ほら。自分を崇め奉れば未来永劫幸せになれます、みたいな。そういう適当な教義をでっち上げて、信者集めようぜ」
「うわ、やばっ! 面白そう!」
ツカちゃんも乗ってくれた。
退屈凌ぎにちょっとふざけてみるか。
ハーレム作りたいし。
そうでなくとも彼女欲しい。
となると話は早い。名前や教団の方針を考え、まずはSNSでアカウントを作ってみようという流れに。
帰宅後も例のカルト宗教を参考に、細かいルールや活動内容を制定。
入信条件は『女性であること』『このアカウントをフォローすること』『救世主ヤギの生まれ変わりである教祖(俺)を信仰し崇め奉る』の三つ。
我ながら馬鹿なことをしている自覚は無いこともなかったが、ここまで来たら止められない。
徹底的にふざけ倒すのだ。男の信者なんていらない。可愛い子だけ集まれ。
『作ったった』
『ブルーメェ~ソン?』
『青柳だから』
『怒られそう』
『それっぽくね?』
『救世主ヤギて』
『うるせえ』
SNSでのやり取りは深夜まで及ぶ。
教団名は『ブルーメェ~ソン』に決まった。
名字が青柳だから。アオとヤギ。適当過ぎ。
ツカちゃんは『ザ・バレー』という名前にしたらしい。谷塚だから谷から取ったってわけか。上手いな。俺より良い感じの付けやがって。
救世主ヤギは流石にアホ過ぎるか。ユダみたいでカッコいいと思ったけど、でも山羊だしな。クソ。失敗した。
無性に沸き起こる対抗心。
こうなったらガチだ。本当に信者作ってやる。
なんとか学校の中でだけでも広めて、彼女候補を見つけるのだ。
仮に信者が現れなくても『馬鹿なこと考えるよね~面白〜い』くらいのノリで関心を持ってくれる子がいたら最高だな。というかそれが目的。
よ~し、ハーレム作っちゃうぞ~~!
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