第6話

「街にサメが出た!」

 その一方を聞いて耳を疑った。誰しもがそうだったろう。街は海ではない。海岸もないコンクリートジャングルのただ中でサメが現れるなど空想の産物だ。横にいる関田以外の人間にとって。

「未確認シャークか!」

 と、関田は叫ぶと走って車に向かう。俺もそれについていく。

「本当にサメが犯人だったんですね」

「まだ、サメと決まったわけではない」

 今更、この男は正気を取り戻したのか。

「しかし、もし事件を起こしたのがサメであったなら、こんな拳銃などおもちゃにもならん」

「では、どうすれば」

「篠原、安心しろ。八百万からサメ用の武器を借りてきた。いざとなったらそれを使う」

 俺達は、事件現場へと急行した。


「サメが出た!サメが、」

 街は騒然としていた。突然現れたサメに誰しもが混乱し正気を失っていた。

 俺達は人波に逆らい現場へと向かう。人がはけた先に妙なシルエットをした人間が1人だけ立っていた。

「嘘だろ…」

 俺は思わず口に出した。顔がサメの人間がそこにはいたのだ。全身が鱗で覆われ、灰色と白の2色で彩られたサメ人間はこちらをにらんでいる。

 関田はそいつに向かって走り出した。懐に手を入れ何かを取り出す。拳銃だろうと俺は思ったが、別のものであった。

「これを見ろ!デビルシャーク!!」

 関田は十字架を前に出してサメ人間に見せつける。しかし、サメ人間は全くの無反応であった。

「デビルシャークではなかったか」

「十字架が小さすぎたのでは?」

 と、俺は拳銃を構えて関田に言った。まさか、これが対サメ用兵器だったのか。

 バン!バン!、と俺は発砲した。サメ人間に当たる。奴がこちらを睨む。俺はかまわず残りの銃弾を撃ちまくった。

「そんなもんがサメに効くか!一旦、車まで引くぞ!」

 と、関田は叫びサメ人間と反対方向へ走り出した。

 車へとたどり着くと、関田はトランクからチェーンソーと50センチほどのガスボンベを取り出した。

「もしもの時は、これを使え」

 と、関田はガスボンベと拳銃を俺に渡してきた。サメ人間はすぐそこまで迫ってきていた。

 ヴヴヴン!とチェーンソーが唸る。それを関田は振り回す。

 ガガガガ!と刃がかむ音が響く。サメ人間は関田に噛みついてきた。

 関田は間一髪で後ろに飛びそれを交わした。チェーンソーはサメ人間にくい込み動きを止めている。

「篠原よこせ!」

 と、関田は俺からガスボンベと拳銃を奪った。そして、ガスボンベをサメ人間へと放り投げた。

「吹き飛べ!!」

 関田は発砲した。サメ人間は投げられたガスボンベを噛んでいた。それに着弾する。


バーーーーーーン!!!!


 と、街に轟音が響いた。そして、サメ人間は跡形もなく弾け飛んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る