第20話 終業式

 今日は七月二十一日、火曜日。


 梅雨はすでに明け、気温の上昇とともに蝉の鳴き声がやかましく感じるようになった。

 肌を焼き付けるようなジリジリと照りつける強い日差しと太陽光からの熱を蓄えた灼熱のアスファルト、この上からと下からの二つの熱に挟まれながら歩く。

 そして学校に着く頃には俺だけでなく多くの人がびっしょりと汗をかいている。

 しかしそんなうんざりするような暑さとは裏腹にみんなの足取りは軽く、ウキウキしている。


 それもそのはずで、今日で一学期が終了し待ちに待った夏休みが始まるからだ。


 エアコンの冷房が効いた教室に入り席に座って汗でべっとりとした肌を汗拭きシートで拭き取る。汗が引いてきたところでトイレに行き代えのTシャツに着替えてその上から夏服の制服を着る。


 教室に戻り再び席に着いたところで先生が来てホームルームが始まった。


「おはよーさん。えーっと――よし全員いるな! 今日は全校集会で終業式を行なった後、定期試験の結果を返す。その結果によっては補習があるから忘れないように。細かいことは後で話すがとりあえずここまでで何か質問はあるかー? おっなんだ?」


 いつもなら何もなく終わるところだが、ここで手を挙げたのはクラスの学級委員の女生徒だ。


「全校集会ですが、この学校の全校生徒が入れるだけの場所がどこにあるのでしょうか?」


 それは俺も少し気になったことだった。一学年全学科合わせて20クラスある。一クラス大体30人だから一学年600人いることになる。ということは全校生徒は約1800人。これだけの人が入る場所はあるのだろうか。


「あーそれはないぞ。そんな人数入る場所があっても集会にしか使えないなら無駄だからな。終業式は放送で行う。大体1時間ちょっとで終わるからちゃんと起きてろよー」


 先生が言い終わったところで放送が入り、全校集会及び終業式が始まった。

 校長先生のお話と教頭先生のお話、生活安全担当の先生からの夏休みの過ごし方に注意事項。

 この内容を終えるのに1時間半もかかった。ただえさえ小学校の時からいらないと思っていた校長先生の話に、この学校では教頭先生の話まで加わった。俺は教頭先生の話が校長先生の話の内容とあまり変わらないなと思ってからすぐに寝た。髪が長いので頭をつくえに伏せることなく座ったまま寝ればバレることはないのだ。俺は結局終業式の放送が終わるまで寝続けてしまった。


「あーい、じゃあ長い話が終わったところでホームルームだ。まずは試験結果を返すぞ。番号順に呼ぶから取りに来い」


 少し経ったところで俺は先生に番号を呼ばれて結果の書かれた紙を受け取り席へ戻る。




 古文      86点    24/32

 現代文     94点    11/32

 C英語I     97点    9/32

 数学I       96点    13/32

 化学      84点    32/32

 物理(選択科目)90点    5/18

 世界史A     98点    22/32

 現代社会    96点    19/32


 総合      741点    18 / 32




 左から科目、点数、クラス順位となっている。


 まぁ普通だな。


 これが結果を確認した俺の素直な感想だ。


 この結果は中間試験と定期試験の合計になっている。英才科のテストは他の学科のテストよりも難易度が高く、赤点ラインも50点と他の学科よりも10点高く設定されている。


 他の学科の人からすればこの結果はとても良く自慢できるほどのものだろう。しかし総合順位を見れば分かると思うがこのクラスでは真ん中くらいなのだ。

 つまり英才科の中では良くも悪くもない、普通というわけだ。


 しかし普通ではあったが俺はもっと下の順位だと思っていたのでこれは予想外の結果だった。

 もともと頭は周りと比べて少しいいくらいで、言い訳にしかならないが勉強できる時間がかなり少ない。加えて中間試験では点数はそれなりに良かったものの順位は30位だった。ちなみにこれが中間試験の結果だ。



 現代文   38点

 C英語I   40点

 数学 I    40点

 化学    35点

 物理    39点

 現代社会  40点   順位  30 / 32



 中間試験のなかった科目もあるため科目ごとの順位は出なかった。

 この40点満点の中間試験の結果は化学が少し足を引っ張ったがそれでも他の科目は満点かほぼ満点に近い点数を取っている。それでも30位だったのだ。化学を抜いても順位はあまり変わらないだろうから俺はこのクラスで下の方なんだと思っていたのだ。


「まさかこの英才科にいて赤点取ったやつなんていないだろうなぁ~?」


 試験の結果の書かれた紙を見ながらそんなことを考えていると、クラスのある奴が俺の方を見ながら嫌味ったらしく言ってきた。


 これはまた面倒くさいことになりそうだ。


 一学期最後にして再び厄介事が起ころうとしているこの現状に俺は溜息をつくのだった。

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