第21話 ブルーの憂鬱4
「守人」
玲奈がシールドガン片手に俺を介抱していた。俺はすぐに起き上がり、片手を自由にしてあげる。
「起きたのね」
「ああ、皆のお陰だ。それで、状況は」
まだ少し身体がだるいが四の五の言ってられない。
「帯人がゴールドに捕まって暴走している」
なるほど、確かに帯人が怒り狂ったバーサーカーのように仲間を攻撃している。
「俺に任せてくれ」
「動けるの」
玲奈が心配そうに聞いてくる。
「ああ」
俺は力強く答えた。
一つだけ良い方法を思いついた。試してみる価値はある。
「シールドソード」
俺は武器を取り出して帯人に突っ込んだ。帯人も気付いて突っ込んでくる。好都合だ。
「ソードクラッシュ、四の型」
接触の瞬間に更に踏み込んで駆け抜ける。そして抜ける瞬間に峰打ちを叩きつける。
「ぐはっ」
帯人が倒れた。ほどほどに手加減はしている。あくまで気付けになるように打っただけだ。
「ううっ、守人、ありがとう」
帯人がうずくまりながらそう言った。どうやら正気に戻っている。
「おお、守人、お前もう大丈夫なのか」
「守人、良かった」
達彦と星那が寄ってくる。二人の必殺技がヒットして、敵は怯んでいた。
「ああ、心配かけたな。一応、大丈夫だ」
だいぶ体力は削られているので万全ではないが、安心はさせたい。
「ありがとね、守人」
玲奈も来る。
「いや、こちらこそ。皆、ありがとう」
皆に改めて礼を言った。
「いいってことよ」
「仲間だもんね」
「無事ならそれでいいよ」
皆温かい。自分の中にその温かさが流れ込んでくるのがわかる。
「で、どうする。俺と帯人がこの状態だと連携技は使えないぞ」
しかしそれに浸っている時間は無い。ともかく今は怪人をどうにかしなくては。
「そうね。連携技はどちらにせよ使わない。一人しか倒せないし、ここは合体技を使う」
「なるほど、帯人はいけるのか」
「ああ、合体技ならいける」
「チャンスは今よ。敵が固まっている」
「「「「ラジャ」」」」
「「「「「アタックフォーメーション」」」」」
合体技。帯人を軸にそれぞれの武器をくっつけて、巨大なランチャーを作る技だ。その威力はすさまじく、中級怪人なら巨大化せずに倒せることもある。
「「「「「セット完了。ゴー、ランチャー」」」」」
引き金を引くと、凄まじいエネルギー砲が怪人めがけていった。この射線上なら二人とも巻き込める。そう思った。
「オオー」
ゴールドよりも前にいたシルバーが、ゴールドの盾になるように移動した。それでもエネルギー砲は二人を貫く。
ドン、ドン、ドン、ドカーン。
衝撃で大きな爆発が起こった。いつもならこれで終わりなのに、今回は違う。爆発の後に一つの塊が残る。ゴールドだ。
「シルバー、シルバー、シルバー」
まるで泣いているかのようにゴールドはシルバーの矛を握った。
「シルバーーー」
そして怒るような叫び声を発する。そしてみるみると大きくなっていく。
「ユルサナイ」
巨大化したゴールドがシルバーの矛を振り回す。
「「「「「うわっ」」」」」
こちらに薙ぎ払いが飛んできた。間一髪でよけたが、抉れた大地がつぶてとなって襲ってくる。
「遅れてすまぬ。もう送ったぞ」
犬塚さんの声だ。機体が送り込まれてくる。俺達はすぐに合体した。
「「「「「合身、シールドアタッカー」」」」」
「ウオー」
とすぐさま攻撃が来る。右薙ぎ、左薙ぎ。立て続けに食らってしまう。数歩後ずさりしてしまう。そして右突き。これは後ろ身に翻して避けてそのまま回転して後ろ回し蹴りを食らわす。これがヒットし、相手も下がった。
しかしすぐに体勢を直し、また攻撃してくる。まるで、怒れる猛獣のようだ。唐竹割りを白羽取りして避ける。しばらくその格好で力比べが始まった。
「ウガー」
勝ったのは怪人だった。縦に斬られて倒れ込んでしまう。
「「「「「うわー」」」」」
そしてそこへ、飛び込みの串刺しを狙ってきた。
「シネー」
「「「「「イージスダブルシールド」」」」」
急いで大盾を取り出した。大盾に防がれると、勢いよく相手が飛ばされていく。この盾は五倍の力で相手の力を跳ね返せるのだ。この間に、体勢を立て直す。相手はよほどダメージがあったのか、まだ倒れている。
「「「「「イージスフォーメーション」」」」」
大盾二つを放り投げて、怪人を挟むように設置する。そして、シールドスーパーソードを取り出した。
「「「「「無限往復」」」」」
プロレスリングのロープのように大盾を使う大技だ。盾にぶつかるたびに五倍の速さでまた攻撃が始まる。無限にも思える超速の連続切り抜けだ。
バン、バン、バーン
ゴールドに直撃する。最後は真っ二つに切り裂いて矛になった。
俺達はすぐに二つの矛を回収し、二つとも砕く。二つの矛は何かに解放されたように蒸発していった。
「ワンダフル。任務、ご苦労であった」
犬塚さんの言葉で、一連の事件は終結を迎えた。今回は我ながらかなり苦しい戦いだった。しかしもう大丈夫だ。今の俺には頼もしい仲間と勇気があるのだから。
「犬塚さん。自衛隊の件で相談が」
事件の後、俺はすぐに犬塚さんのところへ向かった。スーツは着ていない。
「うん。何じゃ。スーツは大丈夫なのか」
犬塚さんが心配そうに聞いてくる。
「言いきれるわけじゃないんですが、もう一人でも大丈夫そうです」
俺はしっかりとした口調でそう言う。
「そうか。それは良かった。わしの方から伝えておこう」
犬塚さんが笑顔で応える。
「ありがとうございます。僕の方からも伝えて良いですか」
自分の口からお礼を言いたい。
「うん。ああ、もちろんじゃ。そうしなさい」
犬塚さんは優しい口調でそう言った。俺はそれを聞くと、すぐに外に出る。すると、自衛隊の三人、先崎清志、杉本広司、川谷昇がいた。早速、俺は三人に伝える。
「三人、いや九人とも短い間でしたがありがとうございました。体調は復調しましたので、任務終了となります。本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「そうでありますか。ご回復なさいましたか。それは良きことであります」
川谷昇が言った。
「短い間でしたが、戦隊方のお役に立てて良かったです」
続けて杉本広司が言う。
「またいつでも駆けつけますので、その時はお声かけ宜しくお願いします」
最後に先崎清志がそう言った。
三人とも丁寧に敬礼してくれたので、俺も敬礼で返す。最後は笑って別れた。
別れた後、すぐ俺は風呂に入った。一連の間ずっとスーツ姿のままで、戦闘をしたのにも関わらず汗を流せなかったからだ。風呂に入ってさっぱりすると、久々にすっきりした世界にいる感じだった。
そして、そうだ、と思いつく。久しぶりに洗車でもしようと。ブルーブルドーザーも相次ぐ戦闘で疲れているだろうと。思いついたらすぐに俺は倉庫に向かった。犬塚さんの所にスーツを取りに行くのを忘れて。つづく。
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