夏の雪

バブみ道日丿宮組

お題:奇妙な粉雪 制限時間:15分

夏の雪

 帰り道。

「雪がきれいだね」

 彼女はそういって傘をさすのをやめた。

「ささないほうが楽しめるよ」

 そうして雪道をかけだした。

 外見が小学校のときから変わってないから、余計に小学生に見える。

 深夜2時。

 もし警察官にあったら、補導処分を受けかねない。

 恋人たるわたしがしっかりしないといけない。

 まぁ、身分証明できるから実際に補導なんてされないけどね。

「はやく、おいでよ!」

 彼女は公園へと入ってく。

 今日は寄り道をしたい気分らしい。

 なんにしても奇妙な雪だ。真夏に降る雪なんて聞いたことがない。そのくせ、さらさらとしてる。いわゆる粉雪と言えるものかもしれない。

 スマホでSNSを追ってみると、みんな驚いてた。気象予報士なんかは説明がつかないってコメントを出してる。その道のプロにわからないことが素人のわたしにわかるはずもなく。

「なにしてるのー!」

 そんな大声出さなくてもいいのにと、公園に自分も入ると、彼女は雪だるまを作ってた。もうバスケットボールぐらいの大きさだった。

「いっぱい積もったから、雪だるま作ろうよ」

 笑顔でそんなことを言われたら、一緒に作るしかない。彼女の要求は基本的には許可。拒否することのが少ない。

「明日小学生がびっくりするかもね」

 その前に溶ける可能性のが高い。

「夢ないなぁ」

 夏に雪ときて、夢もないと思う。

 季節外れの奇跡みたいなものだし、もしかしたら溶けないかもしれない。気温は26℃以上あるのに積もってる。

 つまりは明日晴れたとしても、この雪は溶けないかもしれない。

 一年中桜が咲いてる世界もあるんだ。そういった雪があってもおかしくはない。

「でーきた」

 バスケットボールの上にハンドボールぐらいの頭がのった。

 さすがに顔をつくるパーツは落ちてなかったので、これで完成という。

「帰ろっか。久しぶりに一緒にお風呂入る?」

 願ってもないことだった。

 最近一緒に入ってくれないのは、なにか落ち度があったんじゃないかって思ってたところだ。

「えっちな顔してるよ」

 ニヤけるのも致し方のないことだ。

 いくら幼児体形の彼女であっても、全裸を明るいお風呂場で見るのは眼福だ。

「洗いっこしようか? あなたの大きいから気持ちいいんだよね」

 毎日ベッドルームで抱き枕のようにくっついて寝てるのに今更感が強い。

「お布団の中でいるときとお風呂でいる時は違うよ?」

 疑問に彼女は答えた。

 案外わたしが彼女の全裸を見るのと、同じ心境なのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏の雪 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る