第十話  幹部会議

   十   幹部会議


 ある日の夜、アンダーボスの永月と幹部の迩陰の他二人程がボスである柊に会議室に呼ばれた。何かと思えば異能に関する事と今後の任務についての会議だった。

 「来てくれてありがとう。まず、君達の異能について改めて説明してほしい。その後に君達の異能を踏まえて今後の任務について話し合いたいと思う」

 現時点でボスの柊含め幹部の三人は全員異能者である。しかし未だ異能なのか不明なのが永月だった。柊の中での予想では異能者と考えており念の為永月もこの会議に参加させた。迩陰達幹部達の異能は原始的なモノだった。原始的というか、この世にある自然に関する能力が殆どで柊もその自然能力の一つである。

 一から各幹部の能力を言うと、柊は「炎」、迩陰は「風」、他のメンバーは「地」、「水」、「氷」等である。

 「まず、皆の能力の度合いを調べたいから…訓練場にでも行くか」

 そう述べると柊は皆を連れていつも訓練している所…ではなくそのまた下にある異能用訓練場に足を運んだ。

 「此処は…」

 「此処は異能専用の訓練場。特殊な加工がしてあって、どんな能力でも周りに影響なしでその力を磨き上げることが出来る。」

 「凄い…そんな所があったなんて…」

 「じゃあ。まず、君達からやってもらおうか」

 柊は幹部四人を集めて一人ずつ能力を出してもらった。

「成程…闘いに生かすにはまだまだって所か…でも基本的なモノは使えているな。じゃあ、最後、永月何でもいい。何か出来るか?」

「何か…と言われましても…」

「じゃあ、俺が先に攻撃しよう。その攻撃に対して避けるか、反撃するかしてくれ。武器は使うなよ?」

「分かりました…やってみます」

永月は柊の前に立ち彼からの攻撃を待った。柊も手のひらの上に炎を浮かべ何発か永月に向かって投げた。永月はその攻撃を軽々と避けた。

「じゃあ次は此処の全員で一気に攻めようか。永月は避けても良いし反撃してもいいぞ」

柊が合図をすると幹部達が一気に永月に能力を投げ攻撃しようとした。永月は四方八方から来る攻撃に対して避けることが出来ないと判断したのかその場を動かずにいるばかり。もう攻撃が当たる、そう思った瞬間その場の時間が止まった感覚が永月には感じた。永月はその止まった空間を利用し、攻撃の当たらない場所に移動した。移動すると止まっていた時間が戻ったように動き出した。攻撃は永月が元居た場所に当たった。しかしその場所には永月はいない。攻撃を仕掛けた皆は周りを軽く見渡し彼女を見つけると唖然とした。

「永月…いつそっちに移動した?」

「え…」

皆はあの空間の事を覚えていない?それとも分からない?あの停止時空間を作ったのは私なのか?自分でも分からないままその場に立ちすくんでいた。

「聞いていいか?今、俺らの攻撃が当たりそうになった時お前の中で何が起こった?」

そう聞かれた永月は先程起きた状況について説明した。

「えっと、皆さんの攻撃が当たりそうになった時、一瞬…いや数秒程此処の時間、いやこの空間自体の時が止まった気がしました」

「時空間が止まった?どういう事だ?」

柊の疑問に対し永月は続ける。

「はい、ボス達の動き、皆さんが放った攻撃自体の動き、この空間にある私を除いた全てのモノの時間が止まったんです。しかし、その止まった空間では私だけが動けました。だからボス達の攻撃を避けることが出来たのです」

「成程な…。大体は分かった。ありがとう、じゃあ皆取り敢えず上に戻ろうか」

永月の解説からある程度理解できたのか皆にそう伝え先程の会議室に戻った。


「皆の力を少し知れたことだから、これを踏まえてペア任務の時のメンバー構成を考えておくよ」

皆で考えるのではなく、ボスに考えてもらうのかと全員疑問に思っていたが柊はやると言ったらやると言う少し頑固な一面のある男だ。此方が何を言ったって恐らく一人で行うだろう。それも思ってなのか皆ありがとうございます、と素直に礼を述べた。

「じゃあ、今日はこの辺にしようか。皆遅くにごめんな。その代わり明日の朝はゆっくりしててくれ。明日からは異能の一般で分けて練習することにするから、準備が出来たら個々でさっきの訓練場に来てくれ」

「分かりました。お疲れ様です、お休みなさいボス、アンダーボス、皆様。それでは失礼いたします」

柊の知らせを聞き分かったと言った迩陰は会議室から退室し自室に戻っていくと他の幹部の者達も次々と自室に戻っていった。

「永月は戻らないのか?」

「…いえ、戻ります。お疲れ様でした、では失礼します」

「嗚呼、お疲れ様」

永月は一礼をしては会議室を出た。

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