第五話 執事の昼
陛下と姫様が話しながら朝食を摂るのを見ながら、一礼して退室する。そして社交ホールへダッシュ。芸術祭は今年から絵画や彫刻だけではなく、音楽も含まれることになっている。しかし、そのほとんどがフリッツが前世から持ち込んだものを占めている。しかもパイプオルガンやピアノは、とくに手間がかかる。そのため、午前から準備に時間を充てることになった。
「おい!てめえ!貴様なにハンマー折ってくれとんねん!?勝手に作業するなってあれだけ口をすっっぱくして言っただろうか!?これで新しいハンマー来るまで調鉉できないじゃねえか!?」
「…」
「だんまりか?ああん?」
ハンマーとは、ピアノの鍵盤を叩くと下からポコンと鉉を叩くやつ。こいつがないとピアノの音が出せない。そしてこいつはそれを勝手にさわって折っちゃったわけで、…
「反省したか?」
「ハッハイ」ガクブル
「工房へダッシュで取りに行け!!」
ピューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁはぁ」
とりあえず椅子に座って引き出した鍵盤を戻す。そして折れた部分以外の音を調整する。これが曲者で調鉉をすると他の所がずれる。つまり右から順に調鉉して一番左まで調鉉したとしても、一番右が素人でも分かるくらいずれてしまう。そのため、繰り返し調鉉をして、基準に近づけていく。(まあ、よほど放置しないとこうはならないけど)それが二台である。(どちらもグランドピアノで、鉉の長さが違う)途方もない時間がかかる。
「取ってきやした!」
「貸せ」
鍵盤を引き出して、ハンマーを手早く取り付ける。そして戻して、鍵盤のふたを取り付けたら、最終確認する。そして終わったら、チェロ、ギター、リコーダー、etc…これらをすべて調整する。
「おやぁ。フリッツではないですか」
ニタニタと笑いながらTHE悪役な男が歩いてくる。周りの作業をしている奴らは、一旦手を止め、礼をした。
「(ハァ。面倒なバカが来た)こんにちは。えーとどちら様でしたっけ?」
適当にあしらいながら作業を続ける。
「ほう、私を前にしてその態度ですか」
こめかみが浮き上がっているような気がするが見向きもせずにスルーする。
「貴様!さっさとひざまずけ!」
「…」
腰の剣を抜いて斬りかかってきた。だが、
(へたくそ)
た・ま・た・ま・持っていたレンチを不意にあげたように見せかけて防ぐ。レンチと剣がぶつかるが、レンチは鋳造のかなりゴツメの工具。剣は装飾華美な、明らかに儀礼用のもの。しかもこいつの剣の握り方はかなりぎこちない。対してフリッツはしっかりとレンチを握っている。それがぶつかった結果・・・
「いでぇ!!」
Aくんは、けんをはじかれ、とりおとした。
「はぁ?なにこいつ、雑魚じゃん」
フリッツは、おもわず、おもったことを、そのまますとれーとに、口にしてしまった。Aくんは、、かおを、まっかにして、きりかかってきた。面倒だけど、スロー気味にストレーパンチをプレゼントする。…
「グボァ!」
ぁ、気絶しちゃったze…剣を取り落とすとか、たかが殴られただけで気絶するとか・・・新兵以下じゃん・・・回りがオロオロしてるが、手を挙げると、壁際で警備をしていた騎士が回s、
「おい!何で気絶させた!?」
「現在、芸術祭の準備をせよ。という王命を承けております。王命の遂行に支障が出るため、このような手段を取りました」
「肉体に被害が及んでいるが?」
「フィラヌ、よろしく」
「ほいほーい…んーーしょっと」
「うん、上手上手」
うん?なにしたかって?傷を癒してもらったんだよ。魔法って便利だねえぇ。
「ほむ、起こして」
「はい」
「なっ」
「うう、はっ」
キョロキョロ見回して、俺を見ると殴りかかってきた。それを魔法障壁で防ぐ。
「ガッ、くぅぅぅ…」
「子爵、貴方には芸術祭の演奏者に陛下から直々に抜擢されたはずです。なぜここに?」
「ふん。こんな事できるはずなどないのだ!貴様にできるのかどうか、直々に…って聞けーーーーーーーー!」
「よーしこれでいいだろ」
丁度チェロの調整が終わったので無伴奏チェロ組曲 第1番を試しに弾いてみる。これは組曲展覧会の絵を作曲者のヨハン セバスティアン バッハ(j.s.バッハ)が作曲した曲で、結構お気に入りだったりする。他に有名所で言えば、G線上のアリア、フーガト短調(小フーガ)等がある。弾き終わったので件の人を見、……どこ行った?
「奴は?」
騎士は奴と言われて直ぐに分からなかったようで、数秒フリーズした。
「あ、ああ。なんか走って行きました」
「そう」
その後は、特に何も起きなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます