天さんに贈る【極私的】創作論❗️

真田宗治

第1話 一文一意について




 まず、この創作論の趣旨を説明します。


 この創作論は、僕がてんさんという作家さんから文章について質問を受けて、それに対する回答として書かれた物です。個別指導に特化しています。


 なので、読む人によってはあまり参考にならないかも? しれません。


 あくまでも、僕レベルの文章を書く為の創作論なので、僕よりも文章力が優れている人には無用かと思います。


 内容は、一文一意を始め、小説の書き方に関する〝具体的な〟事柄が大半を占めます。

 それ以外にも少しは触れますが、ハイレベルな人には参考にならないかもしれません。



 ★


 では、内容と参りましょう。


 以前にもお伝えしたのですが、僕は、天さんの文章には一目も二目も置いています。これは事実です。


 何故か?


 天さんの文章は、僕が目指す究極の形に近いのです。ただ、天さんの場合は、技量が不足しているが故に、無駄な事がそぎ落とされているのだと思われます。

 では、僕が目指す究極の文体とは、どのようなものでしょう?


 僕が小学生の頃、国語の先生が言いました。


『超一流の作家が書く究極の文章は、子供の作文みたいになります』


 当時は理解出来なかったけど、今なら理解できます。

 つまり、一文一意の文体で、有体ありていに物事を書いている。と、いうことです。


 では、一文一意とは何か? と、いう話に参りましょう。


 一文一意とは即ち、


『文章が始まり、 。 で終わるまでの間には、一つの事しか伝えない』


 と、いう事です。


 実は、天さんには既にこの形が出来ています。

 だから、評価しているのです。



 例を上げましょう。

 まずは、如何にも子供が書きそうな文章を再現してみます。



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 おばあちゃんの家にいった。


 おばあちゃんの家でりんごとみかんを食べた。


 おばあちゃんの口が臭かった。


 おばあちゃんに口がくさいと言った。


 おばあちゃんは歯がとれた。


 口の中から歯が出て来た。


 おばあちゃんが歯を洗った。


 おばあちゃんが梅干しみたいになった。


 楽しかった。



 ━━━━━━━━━━


 内容は兎も角、いかにも、小さな子供の作文とかで見そうですよね?


 これが、一文一意です。

 一つの文章で一つの事しか伝えていませんよね。


 では、どうしてこんな事が重要なのでしょう?


 それは「読みやすい」からです。読みやすいだけではなく、理解もしやすいのです。一文一意はとても読者に優しい、読者に寄り添った文章といえます。


 ★


 天さんの作品からも例を上げましょう⬇️





 第6話 絶対に何かある交差点



 不思議な交差点がある。


 半年に一回は事故が起きる魔の交差点だ。



 車の運転に慣れている警察さえ、通るのを怖がる交差点だ。


 見通しが悪くて、自分もあんまり通りたくない道だ。



 聞いた話では、魔の交差点では誰もいないのに犬が大声で吠えていたらしい。



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 これは、天さんの「ホラー体験談」という作品からの抜粋です。転載許可は得ているので、この点はご心配なく。


 もうお分かりだと思います。基本的に、一文一意が貫かれているのです。しかも、余計な事を言わず最低限の情報だけを出すやり方に終始しているので、余計に恐怖を誘う独特の読後感が発生しています。


 もうね、シビレますね。


 上の文章に関しては、手を加える余地が殆どありません。


 なので、今度は手を入れる余地がある文を引用します⬇️





第9話怖い話


堤拓也は体調が悪くなると、災害が起きやすい。「本当にあった話」


耳の具合が悪くなり、都市高速を使って、都市高速の途中で福岡県西方沖地震にあう。


生きた心地がしなかった。


もう、駄目だと思った。



生きた心地がしなかった。


こういう体験を何回も繰り返している。



でも、こうして無事に生きてるということは運が良いのかなと思ってしまう。


絶対絶命からでも、助かるから、不思議だ。




病院に行くと、不思議な体験をする。「嘘の話」


みんなには見えてなくて、人がたくさん歩いてる、こちらをうかがっている。


見てないふりをするのは得意だから、ばれてないけど、病院は怖すぎる。



でも、病院は何かを感じる。


言葉では表現できない。




 ━━━━━━━━━━━


 上記の文章であれば、僕でも手を加えられると思います。一文一意を徹底すると共に、小説的表現を付け加えた形にしてみようと思います。⬇️






 第9話 怖い話



 これは実話である。


 堤拓也という男がいる。

 彼は体調が悪くなると、何故だか災害が起きやすい。

 ある時、拓哉は耳の具合が悪くなった。


 耳の不調は長引いた。


 そんなある日、拓哉は都市高速の途中で福岡県西方沖地震に遭った。


 突然の揺れに車が揺らぐ。アスファルトが波打って歪み、街灯が激しく揺れる。自動車のハンドルもいうことをきかない。その状況は、とても生きた心地がしなかった。


 もう、駄目だと思った。


 拓哉は、こういう体験を何回も繰り返している。体調が悪くなる度に、だ。でも、こうして無事に生きている。単に運が良いだけなのか?

 否、絶対絶命からでも助かるのだ。だからこそ、不思議なのだ。



 で、ここからは作り話だ。



 僕は、病院に行くといつも不思議な体験をする。

 病院の誰もいない廊下を、たくさんの人が歩いている。そんな気配がするのだ。

 気配に目を凝らすと、それはいつも、こちらをうかがっている。

 生気のない、仄暗い窪んだ目が、いくつも、いくつも、いくつも。


 みんなには見えていないらしい。


 僕は見てないふりをするのは得意だ。だから、あれが見えるって事については誰にもバレていない。けど、病院は怖すぎる。必ず、何かを感じるのだ。


 言葉では表現できないけど。


 重ねて言う。これは作り話だ。信じるべきではない、話なのだ。




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 小濱が手を加えてみたら、こんな感じになります。天さんは、基本的には一文一意の形が出来上がっているので、それに関してはあまり弄る点がありませんでした。説明不足な点を補足して、小説的な語り口に焼き直した文章となります。


 ん?


 これじゃ参考にならないって?

 では、違う例を上げましょう。⬇️




 カミーラという魔術師から手渡された長くてとても古い杖は幾多の伝説に彩られた逸品であり、七色に輝き、絶えず耳鳴りに似た不気味な異音を発してずっと小刻みに振動している。


 カミーラから聞いた話によると、神話に近い遠い遠い昔、コウサラバスターとかいう山のように巨大で凶暴な漆黒の古竜を激戦の末に屠った逸話がある伝説の杖であるらしいのだが、とてもじゃないが胡散臭くて僕には信じられない。なので、とりあえず試しに申し訳程度の魔力を込めて全力で振り回したら、その杖からは突然、赤、白、青等の七色の眩いばかりの光が飛び出して、古風な石造の部屋中を明るく照らし輝いた。


 ◇


 こういった文章があったとします。これに、一文一意を当てはめてみます。⬇️


 ◇


 僕は、カミーラから杖を受け取った。

 古竜を屠った伝説の杖なのだとか。実に疑わしい。杖は異音を発し、七色に輝いている。微かに振動もしている。

 試しに、杖を振ってみた。


 風を切る音がして、杖がしなる。


 杖からはたちまち、七色の光が放たれた。輝きは強さを増し、部屋中を満たした。



 ━━━━━━━


 どちらが読みやすくて、状況を想像しやすいでしょうか?


 そう。


 一文一意は無駄を削る技法なのです。

 一文一意をマスターするだけで、文章は飛躍的に読みやすくなるし、内容がスッと読者に入ってきます! この基本が出来ていない人は結構多いです。読者が一生懸命歩み寄っているのに全然内容が入って来ない。そういう文章はカクヨムに限らずちょくちょくあります。くどくて内容が頭に入らない文章を読むのは、読者にとって苦痛だと思われます。


 とても重要なことだから真っ先に言っておきますが、個性や作家性、芸術的な文体みたいなものは、にじみ出すものです。

 まずは徹底的に伝わる文章を目指しましょう。読みやすさや伝わり安さを追求して、それでも尚、滲み出すものが、本当のあなたの作家性です。

 読者が歩み寄っているにも関わらず、ぜんっぜん内容が全然頭に入ってこない。それは、貴方の意図する事でもありませんよね?


 なので、まずは読者の立場に立つところから始めましょう。


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