第20話 流れ星作戦と山根の想い
いーちゃんもショートケーキは買っていた。
しかしながらそれよりも以前にショートケーキを毎日買って行く少女を見ていたのを思い出す。
それは.....毎日同じ時間の俺の時に、だ。
俺は後で知ったがその人物は小説家だった。
その小説家と.....再会したのだ。
この中で一番に喜んでいるのはいーちゃんだった。
「うさぴょんさんがこんな華麗な美少女だったなんて.....お友達になってくれますか?」
「あ、はい.....」
小説家.....か。
俺は思いながらうさぴょんといーちゃんが話すその姿を見る。
しかし久々だな。
1年ぶりぐらいかな、と思う。
めっきりコンビニに来なくなってから、だ。
「うさぴょんさん」
「.....はい。何でしょうか」
「.....君は何故.....コンビニに来なくなったんですか」
「.....引っ越したのもありました。.....でも一番は忙しくなったからです。.....売れたんです本が。.....それで」
「.....そうなんですか!?」
「はい。.....私のラブコメが売れてしまいまして.....。忙しくなったんです」
そう言いながらパソコンを撫でるうさぴょんさん。
期待の眼差しをいーちゃんはうさぴょんさんに向けている。
それからキラキラと目を輝かせていた。
多分.....ネタを聞きたいのだろう。
うさぴょんさんは?を浮かべていた。
「私も小説家を目指しています。.....それで.....その。好きな人と共同作業で.....目指しているんです」
「.....え?.....この方ですか?」
「.....はい。.....私の彼氏に近いです」
「.....そうなのですね。.....俺は良いお話だと思います。.....小説家はそんなに簡単な職業では無いですが.....です」
「それは知っています。.....うさぴょんさんは小説の書き方の向上のやり方を知っていますか?」
「.....そうですね」
打ち解ける様に。
まるで紅茶にチョコを溶かす様な感じで打ち解ける2人。
俺はその姿を見ながら目の前の子供達を見ていた。
遊んでいる子供達を、だ。
すると、あ、とうさぴょんさんが声を挙げる。
「お名前を言っていませんでした。私はうさぴょんですが.....特別に。.....私は霧子。結城霧子(ゆうききりこ)って言います。高校2年生です」
「特別.....嬉しいな!.....あ。私は苺です。.....佐藤苺って言います」
「俺は羽鳥夕だよ。宜しくね」
「皆さんが優しい感じなので.....嬉しいです」
そう照れながら言いつつ。
パソコンを側に置いてから俺達に微笑む霧子さん。
俺達は顔を見合わせて笑みを浮かべた。
それから霧子さんを見る。
霧子さんは人差し指を立ててからいーちゃんを見る。
「小説の基本は気持ちを込める事です」
「.....はい。成程です」
「.....それから文章力などの計画性を立てる事。プロットも大切ですけどね」
「.....成程です」
「最後に.....起承転結を必ず考える事。これも大切です」
「.....はい!」
メモを必死にスマホに打ち込むいーちゃん。
教師な感じで教えてくれる霧子さん。
俺はそんな姿を見ながら懐かしく思いつつ霧子さんを見る。
すると霧子さんは、しかし嬉しいです。羽鳥さんが彼女を持ってくれて、と柔和な笑顔を見せた。
「.....私は羽鳥さんが優しいから通うのが好きでした。.....心配もしていました。.....その時は笑顔がなかなか見られなかったから。.....でも今は違う。.....それが嬉しいです」
「.....霧子さん.....」
「お2人の小説家の夢。応援させて下さい」
「.....はい。頑張ります」
「.....決して甘い道では無いですが.....大丈夫です。.....その信念は本物でしょうから」
「.....有難う御座います」
それにしても霧子さんは何故.....ショートケーキを買っていたのだろうか。
その様に思っていると。
答えがすぐに出た。
霧子さんは、私の弟にお供えするのにショートケーキを買っていたのが.....運命をこうして巡り会わせてくれたのでしょうか、と。
俺達は顔をまた見合わせる。
「.....弟が亡くなってから私は小説家を目指したんです。やってやろうって。.....それで今に至っています。.....当時は売れない作家でしたけど」
「.....そうなんですね」
「.....羽鳥さんのパワーでしょうか」
「.....それは違うと思いますけどね.....」
苦笑する俺。
そうなんだな。
亡くなった弟さんの為に.....か。
思いつつ俺は複雑な顔で霧子さんを見る。
霧子さんは俺に対して笑顔を浮かべながら、時間が許す限りは教えますよ、と言ってくれた。
「.....当時はお世話になりましたから。.....あなた方のお手伝いをさせて下さい」
「有難う御座います!霧子さん!」
「有難う御座います」
俺達はうさぴょんさんと偶然に友達になった。
それから俺達は暫く習った後。
連絡先を交換して.....そのままスーパーに向かい。
買い物をしてから家に帰った。
時刻は16時を回っている。
夕食の準備だな、と思いつつ夕食の準備をし始めた。
すると.....携帯に電話が掛かってくる。
誰からか、と思ったら山根だった。
『おっす』
「どうした。山根」
『今度お前の誕生日だろ。.....誕生日パーティーとかしようぜ。どうせお前の事だ。忘れているんだろ?』
誕生日と言われハッとする。
何かすっかり忘れていたな、と。
そう思いながら、だ。
確かに俺は誕生日だな。
思いつつ俺は顎に手を添える。
「まあ確かに誕生日だけど.....そんなもん祝っても意味無いかな」
『まあそう言わず。.....そうだ。高校の屋上でパーティーしようぜ』
「停学になるって」
『まぁまぁ。流れ星ぐらい見ても大丈夫だろ』
「.....いや.....あのな.....」
散々な感じの結果。
流れ星中継誕生日パーティーをする事になった。
それはどういうのかと言うと。
山根が高校に侵入(この町で一番の高い場所)。
そして流れ星を中継して俺に届ける作戦だ。
馬鹿なのか.....と思ったが。
実はこれには理由があった。
山根が.....ひっそりと夕日を好いている、という点が、だ。
つまり俺もそうだがみんなを喜ばせたい意味で.....やりたかったのだった。
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