第11話 いーちゃん
燕ちゃんが俺達に対して.....いや。
佐藤さんに対してだが.....こう言う。
貴方の事ですが見た事あります、と。
俺は驚愕しながら.....佐藤さんを見たが。
佐藤さんは黙っているだけで.....何も言わなかった。
そして別れて佐藤さんはそのままそそくさと去って行く。
俺は首を傾げずに居られなかった。
俺は夕日と話している燕ちゃんに向く。
「.....燕ちゃん。.....何処でどう見たんだ?俺は記憶に無いんだよ。何故か」
「.....はい。.....実は私も混乱しています。当初は男の子だって思ったんです。.....でも女性だった。.....何故でしょう?」
「あ。やっぱり燕もそう思う?やっぱり男の子だったよね?」
「.....うん。.....だからおかしいって思って」
燕ちゃんと夕日は、うーん?、と悩む。
俺はその姿に飲み物を入れてくるか、と思い立ち上がる。
それから.....お手製の麦茶をコップに注ぎながら.....俺は生徒手帳を見る。
そこに入った写真には仲が良かった男の子が写っている。
しかし、まさかな、とは思う。
似ても似つかない。
それから俺は生徒手帳を、アホらしいか、と思い静かに閉じてから。
オボンに麦茶の入ったコップを乗せてから運ぶ。
「それはそうと.....夕日ちゃん元気?」
「うん。元気。久々に顔が見れて良かった。.....燕ちゃん。学校生活楽しい?」
「.....とても楽しいよ。.....夕日ちゃんも早く治ってから来て欲しいぐらいだね」
「.....私は治らないからなぁ。羨ましいなぁ」
そんな会話を聞きながら。
俺は笑みを浮かべつつ.....麦茶をちゃぶ台に置いていく。
それからオボンを床に置いてから燕ちゃんを見る。
燕ちゃんはニコッとしながら俺を見ていた。
「.....お兄さん。.....さっきの人が好きなんですか」
「.....俺には好きとか嫌いとかそんな感情無いからね。.....恋しちゃ駄目って思っているんだ」
「.....強迫観念ですね。.....でもそんな事無いと思います。.....私は.....私はお兄さんには笑っていてほしいです」
「.....有難う。燕ちゃん。.....俺は笑うつもりだよ」
ずっと、だ。
だから.....俺達は互いの距離を保ちたいのだ。
そう思っていると.....ドアの呼び鈴が鳴る。
俺は?を浮かべてからそのままドアを開けると。
何故か佐藤さんが居た。
それから佐藤さんの.....妹?らしき人物も、だ。
ランドセルを背負っている。
「ど、どうしたの?」
「.....色々と心配になって。.....それとお裾分けと思って.....その.....」
そんな姉の事を横の妹は、お姉ちゃん。大丈夫だよ、と笑顔で言う。
まるでサポートをする様に、だ。
そして俺に向いてから頭を下げてきた女子小学生。
ツインテールの黒髪。
それから.....顔立ちは少し大人びた顔をしている。
俺は目をパチクリする。
「初めまして。.....私は佐藤林檎(さとうりんご)と言います。小学6年生です。姉が何時もお世話になっています」
「.....俺は羽鳥夕だ。宜しくな。林檎ちゃん」
そんな林檎ちゃんは部屋を見てから、あれ?お邪魔でした?、と首を傾げる。
俺は、そんな事はないよ、と笑顔を浮かべてから背後を見る。
みんな手を振っていた。
その姿に林檎ちゃんは、ですか、と笑顔を見せる。
それから持っていたバスケットの中からサンドイッチを取り出す。
大人びているな対応が.....。
「あ、えっとこれお裾分けです。姉に代わって出しますね。.....2人で作りました。食べて下さい」
「ああ。マジか。.....こんな場所でも何だ。家に入ろうか」
「.....あ、はい」
「有難う御座います」
それから家の中に入るが。
思った以上に満員だな。
これは大変だ、と思ってしまった。
家が狭いのも問題だが、だ。
それから直ぐに林檎ちゃんは挨拶をする。
2人に、だ。
「初めまして。私は佐藤林檎と言います」
「初めましてー。私は夕日です。羽鳥夕日です」
「私は石破燕です」
「ふふふ。何だかお姉ちゃんが出来たみたいです。嬉しいです」
言いながら満面の笑顔を浮かべる林檎ちゃん。
俺はその姿を見ながら居ると。
早速と言わんばかりに俺の手を握ってきた。
佐藤さんが、だ。
な!?
「.....えっと.....これぐらいは良いですよね。.....私達、親友ですから」
「い、いきなり何を!?」
「負けたく無いんです。.....私」
「何にだ!?」
そうしていると。
お兄さん?、と声がした。
顔を上げると.....そこにはジト目の燕ちゃんが。
どうなっている.....!?
そんな燕ちゃんと佐藤さんの側では.....ニヤニヤしている林檎ちゃんが居た。
ライバル登場って訳なんだねお姉ちゃん、と、ふふふ、と言いながら、だ。
「夕さんは鈍感っぽいから.....頑張らないと。お姉ちゃん」
「だよね。林檎。.....頑張る」
それから俺をじっと見てくる佐藤さん。
どう.....というか何でしょうか。
そもそもそんなに仮にも美少女に見つめられると恥ずかしいのだが。
思いながら俺は赤くなりつつ佐藤さんを見つめていると。
燕ちゃんも見つめてきた。
「単純に聞きたいです」
「は、はい」
「私はみ、魅力.....有りますか?」
いきなり何を聞いてくるのだ。
思いながら俺は顎に手を添えて2人をそれぞれ見つめる。
でも俺は魅力とかそんなのは考えた事が無い。
佐藤さんは良い人だけど、だ。
「お兄ちゃんモテモテだねぇ」
「いやいや。助けてくれよ夕日」
「助けないよ?だってお兄ちゃんが考えないとね♪今の状況は」
マジかよ。
と思っていると。
いきなり地震が起こった。
震度3?ぐらいだが結構揺れている。
俺は咄嗟に、みんな!落ち着いて!、と言う。
するとみんな、はい!、と慌てながらも落ち着きながら動いていた。
その際に本が落ちてきて俺は佐藤さんを守る形で倒れる。
背中にバシバシと本が当たった。
「落ち着き.....ましたね」
「ですね」
そんな声の中。
俺は埃の舞う中、佐藤さんを押し倒す形に.....なっていた。
少しだけ赤面しながら俺は佐藤さんを見る。
佐藤さんも目をパチクリしながら俺を赤くなりつつ見上げていた。
そして俺は視線をもう少し上に向ける。
そこには髪で隠れていたオデコの右側に十字の傷跡が有った。
だけど直ぐに佐藤さんはガバッと傷を隠す。
一瞬だけだったが何故か俺はその傷跡を初めて見た様な気がしなかった。
何だこの感覚は?
思いながら俺は胸に手を添えながら佐藤さんを見る。
佐藤さんは真っ赤に頬が染まりながら俺を見てきていた。
その柔らかそうな唇が開く。
「.....見ました?」
「い、いや。見てない」
そうしていると林檎ちゃんと夕日と燕ちゃんが、大丈夫ですか?、と言いながらの感じで慌てながら寄って来た。
俺達は、う。うん、やら、大丈夫、と返事しながらゆっくり顔を上げる。
その中で今の十字の傷は、と考える。
確か.....あれは.....。
『怖いよー!助けて!はっちゃん!』
『くそう!野犬かよ!.....大丈夫か! ちゃん!』
「.....いーちゃん.....?」
流石の俺も気が付いた。
俺はその一言を言う。
野犬で傷を負っていたよな。
それも丁度傷のある所で、だ。
するとビクビクッと佐藤さんの身体が震えた。
まさか.....そんな馬鹿な。
あの子は.....男の子だった筈だ.....そんな馬鹿な事が!?
俺は思いつつ.....見ていると。
「お姉ちゃん。もう良いんじゃないかな。.....言っても」
「.....で、でも.....」
思い出した。
1つ下に確かに仲が良い小学生の友人の男の子が居た。
だけどそれが.....まさか。
まさか.....佐藤苺さんが.....いーちゃんだったなんて.....事が?
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