　真珠はかつて、鮑（あわび）や牡蠣（かき）の中から偶然見つかる希少な宝石だった。

　貝の中に小石や寄生虫が入りこんだのを、母となる貝が包（くる）み込んで珠（たま）に変えてしまうのだ。

　最近になって、人がわざと核を入れる事によって、真珠が人工的に作られるようになった。

　人工的に製造された養殖真珠が流通しはじめると、宝石商達は養殖物は偽物だと訴訟を起こした。

　しかし裁判の最中、養殖真珠は天然物と全く遜色（そんしょく）がないと科学的に証明されてしまった。

　それでも宝石商達は天然物こそ至高だとして売値を頑として下げなかった。

　それを見た神々は怒り、世界的な恐慌を起こして天然真珠の価格を暴落させてしまった。

　天賦の才がなければ大成できないと思いこんで、投げやりに生きている者へこの話を贈る。

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