第12話 地球と異世界の違い

 ギムレストとの交渉の結果、環は万年筆とインクの他に、三色ボールペンとシャーペン一本、替え芯、消しゴムまで巻き上げられることになった。


 それでもなんとか、すぐに帰ることが出来たら残りのペンポーチを丸ごとあげる約束で早期帰還への協力を取り付けられた。


 こうして二人の間に文房具協定が結ばれた。協定の効力は、タルギーレを捕まえて環の身の振り方が見通せた時点から有効となる。


「実に有意義な話し合いが出来ましたね、タマキさん」

「話し合いというか……かつあげというか……」


 うきうきと上機嫌のギムレストに対し、環は疲れた声しか出せなかった。環が交渉を持ちかけるまで、ギムレストはすごく礼儀正しく優しい好青年だったというのに……。


(……オタクの熱量って怖いわ……。墓穴を掘るって、こういうことを指すのね……)


 環はそう痛感して、敗北のため息をついた。


「殴ればいいだけなのにね」

「はは。おさすんげー嫌われてやんの」


 実は脳筋のマディリエと、乾いた笑いをするカイラムの声を環は聞き逃さなかった。勘違いされているようなので弁明をしておく。


「カイラムさん。私は別にヴィラードさんを嫌っているわけではありませんよ」

「え? そうなの?」


 カイラムが若葉色の目を丸くした。そう、別にヴィラードを嫌ってはいない。セクハラが発生する迷惑な博愛精神を発揮しないで欲しいだけだ。それさえなければ、普通に付き合える相手だと思う。


「もちろんです。恩人ですから助けていただいたことには大変感謝しています。あれこれ気を遣ってくださることにも。しかしながら言わせてもらえば、助けて頂くときに、いちいち肩を抱く必要はないんじゃないかと思うんです」

「あー、あれかー」


 カイラムが頬杖をついて半笑いした。


「こちらでの風習かもしれませんが、私の国では家族間でさえ、そうそう肩を抱いたりしません」

「ほあ? 家族も駄目なん?」

「駄目というわけではなく、そもそも体の触れ合い自体が希薄なんです。家族以外には、挨拶もお礼も、大抵のことは会釈かお辞儀で済ませます」

「オジギって?」

「これです」


 環は背筋を伸ばしてしっかり頭を下げた。それを見たギムレストが、ああ、と声を上げる。


「そういえばタマキさんの礼は綺麗だと思っていたのですよ。お国での風習でしたか」


 納得したようなギムレストに環はうなずく。


「ギムレストさんもきれいなお辞儀でしたね」

「僕の場合は魔術師の習わしです。僕らもあまり体の接触をしませんね」

「素敵な習わしだと思います」


 環は強く同意した。


「いろんな風習があるもんだなぁ」

「タマキ、一応言っておくと、おさのアレはここの風習じゃないからね。おさ個人の性癖なだけよ」

「……そうですか。少し複雑ですが朗報だと思っておきます」


 脱力する言葉だったが、セクハラがスタンダードの社会でないことは素直に喜んでおこう。おそらく、大体において地球と似たような社会を形成していると思われる。

 女が物扱いされる世界や、ましてやタコのような見た目の宇宙人がいる世界に行くより、恵まれていると思えてきた。少なくとも今のところ意思を尊重してもらえている。環は前向きに考えた。


 機嫌の良いままのギムレストが、脱線し始めた話を元に戻した。


「さて、ほかに知りたいことはありますか?」

「ええと、そうですね……」


 環は手帳をめくり、なんとか所有権の残ったシャーペンを握った。


「あと二つほどいいですか?」

「もちろんですよ。どうぞ」

「それでは一つ目に、時間の数え方を教えて下さい」

「時間ですか?」

「はい。確か数え方が異なると……」

「言いましたね。そのままの意味ですが、タマキさんの世界では二十四、でしたね?」

「はい。二十四時間です」

「ここでは一日は十二こくです。タマキさんは確か、昼を境に午前と午後に別れるとおっしゃいましたね?」

「はい」

「その言い方で表すなら、午前、午後でそれぞれ六刻となります。一刻の中がさらに八つときに別れています」

「……なるほど」


(一刻が二時間で、一ときが十五分ていう感じ……? 江戸時代辺りに近いのかな……)


 なんとなくわかる気がする。


「ご理解頂けましたか?」

「はい、昔は私の国でも似たような数え方をしていましたので……」


 そこまで言って、ふと、環は室内を見回した。


「あの、時計って置いてないんでしょうか?」

「時計は存在していますが、貴重品ですので置いてある建物は滅多にありません」

「そうすると、時刻はどのようにして調べるんですか? 鐘か何かで時報が鳴ったりするんですか?」

「いいえ。特にしらせがあるわけではありません。必要もありませんので」

「必要ない……ですか?」

「ええ。教えられずとも時刻はわかりますから」

「……それはつまり、体内時計で時間がわかるということですか?」


 驚きながら確かめる環に、ギムレストは軽く首をかしげた。


「体内時計というものは存じませんが、体感で時刻がわかるのか、という意味合いでしたら、その通りです」

「すごいですね」


 環は心からそう思った。そういえば環の実家で飼っていた犬も常に正確な体内時計を持っていて、きっちり朝五時と夜六時に散歩の催促をしていたことを思い出した。

 この世界の人たちは、パッと見は地球人と似ていたとしても、髪や目の色や体内時計といい、全く別の種族なのだと実感する。

 

「タマキさんの世界では異なるのですか?」

「……わかる人もいるとは思いますが、ほとんどの人は時計がないと正確にはわからないです。ですから時計も普及していて、手軽に手に入ります」


 環は自分の腕時計を持ち上げて見せた。ギムレストは興味深そうに軽く身を乗り出す。


「ずいぶんと小型ですね……どのように時刻を判断するのでしょうか?」


 環は時計が見やすいように腕ごと差し出し、文字盤を指しながら説明した。


「この一番細い針が秒針で、一周で一分になります。長い針が分を表して、一周で一時間です。一番短い針が時間を表します。一周で十二時間です。この短針が二周すれば一日です」


 ギムレストの目が輝く。新しいおもちゃを見つけた顔だ。


「ああ、なるほど、それぞれ動く速さが異なっているのですね。これは面白い、もっとよく観察したいです」

「差し上げませんよ」

「おや、それは残念。交渉の余地はありますか?」


 環は苦笑いした。


「これは両親の形見なので、いくら積まれても渡せませんね」


 ギムレストがちらりと環を見た。


「……そうでしたか、それは仕方ありません。諦めましょう」

「ごめんなさい」

「あなたが謝る必要はどこにもありませんよ。僕が不躾ぶしつけでした。失礼しました」

「いいえ。ご存じなかったんですから。気にしないでください」

「ありがとうございます」


 また巻き上げられたらどうしようかと思ったが、ギムレストはあっさりと引き下がってくれた。環は腕を戻して時計を見る。


「一ときが十五分とすると、一日は……二十五時間か……」

「計算はっや!」

「ん?」


 独り言に回答があった気がして顔を上げると、カイラムが感心したような顔をしていた。


「タマキって計算早いな。商人ギルドの人間みたいだ」

「商人ギルド? もしかして冒険者ギルド以外にも、いろいろなギルドがあるんですか?」

「たくさんあるぜ? 俺たちがよく世話になるのは、織物おりものギルド、鑑定士ギルドに鍛冶ギルド、たまに商人ギルド……」


 カイラムが指折り数え始める。


「本当にいろいろあるんですね」

「まあなあ。大人になると、どこかしらギルドに所属してるのがほとんどだな」

「そうなんですか」

「タマキは?」

「はい?」

「タマキはどこかのギルドに入ってんの?」

「ギルドといいますか……」


 環は雇われ会社員のことをなんと説明すべきか悩んだ。


(ギルドって職業ごとの組合的な意味よね? 日本だとそれは競合他社になると思うんだけど……。競合他社と仲良くしてたら……カルテルを疑われるわ。会社の労働組合は……組合って言っても、また別物だし……。)


「もしかして、まだ成人してなくてギルドに入っていないとか?」

「え?」


 何かに気づいたようなカイラムに、環は目を瞬いた。


「あの、私もう十年以上前に成人してますし、働いてます。ただ私の国だとギルドっていう組織形態ではないので、説明に悩んでいるだけです」

「は?」


 環の言葉にカイラムが目を丸くした。カイラムだけでなくマディリエやギムレストも驚いた顔をしている。


「え? どうなさいました?」

「成人したのが十年以上前、って言ったわよね?」


 マディリエが疑り深い顔をしている。


「はい、三十一歳です」

「ほあっ!? 俺より十も上っ!?」

「あ、カイラムさん二十一歳なんですか?」


(大学生みたいだと思っていたら、本当にそれくらいの年齢だったのね。元気なはずだわ)


 と環は納得した。


「あたしもカイも二十一よ。……本当に三十越えてるの? 同年代だと思ってたわ」

「それはさすがに言いすぎですよ」


 環は苦笑いした。海外赴任時にも若く見られたので、こういう反応は初めてではない。若く見られるのは人種的な要因もあるだろう。しかし、この世界に来た初日の取り調べは体力的にきつかった。必死にジムで体力作りをしていても、体力は若いままとはいかなくなっている。


「それではタマキさんは僕より三つ上ということですね。年数の数え方が同じならですが」

「数え方?」


 年下と判明したギムレストの言葉に、環は首をかしげた。 


「タマキさんの世界とは時刻の数え方が異なるようでしたから」

「……そうか、一日当たり一時間は違うんでしたっけ……。あの、こちらでは何日で一歳と数えるんですか?」

「七日で一週間、五週で一か月、十か月で一年です。一年で一歳年を重ねます」

「そうすると……一年三百五十日で、三百五十時間の差……でも地球は十五日多いわけだから……。一秒の長さが同じと仮定すると半日も差はないみたいですね。私の世界は一年は三百六十五日ありますので」

「計算はっや!」


 カイラムが先ほどと同じように驚いていた。環はまた苦笑いする。


「慣れです。毎日計算しているので。でも商人ギルドではないですよ。こちらでいうところの馬車のような乗り物を作っている組織で、製造に必要な部品の調達係に所属しています」

「馬車を作っているのに、乗るのは苦手なの?」


 マディリエが不可解そうにしている。移動中の環の醜態を目撃していたマディリエにしてみたら、当然の疑問だろう。


「馬車に似ているのは大体の形だけで、馬や他の動物にかせるわけではないんです」

「意味がわからないわ」

「謎めいた言葉ですね。馬を使役せずに、どうやって動かすのでしょうか?」


 マディリエに続いてギムレストも疑問を呈した。

 環は一度口開いてから、何も言わずに引き結ぶ。少しして断念した。


「……すいません。それを話すと時間が足りなくなりますので、割愛かつあいさせてください」


 一瞬で脳内を駆け巡った情報が多すぎて、とても無理だった。それに今わざわざ説明するようなことでもない。


「私が聞きたかったもう一つのことって、その馬車のことなんですけど……。あの馬車の揺れ具合って、こちらでは普通のことですか?」


 そう聞くと、マディリエが何かを思い出したのか軽く笑った。ギムレストとカイラムは苦笑いする。


「あの荷馬車の揺れは僕らにとってもひどい部類です」


 その回答に環はホッとする。


「では、普通の馬車はもっと揺れは少ないんですね?」

「はい。だいぶお辛い思いをされたようでしたね。申し訳ありませんでした」


 これは環にとって朗報だ。つまり何らかの減衰力機構が存在しているということになる。


「いいえ。もう移動はないんですよね?」

「基本的には。ですが、動くことになったら、またあの荷馬車を使うことになります」

「……え?」

「タマキさんが馬に乗れるなら別ですが」

「……乗馬の経験はありません。あの、乗馬を教えていただくことはできますか?」

「どうでしょう。マディリエ? カイラム?」

「いいんじゃない? どうせ暇だし」

「そうだな。タマキもいい気分転換になるだろ」


 環は二人を見た。


「外に出てもいいんですか?」

「裏庭でやる分にはいいだろ」

「敷地は出ないようにね。フードも被ることになるけど、構わないでしょ?」

「もちろんです。ありがとうございます」

「俺らもずっと部屋にいると体がなまるしな。ちょうどいいよ」

「あ……」


 カイラムに言われて思い当たった。この二人は環の護衛なのだから、環が部屋にいる限りこもりっきりになる。


「すいません。私のせいで部屋にこもることになってしまって」

「気にしなくていいわよ、仕事だもの。それにこの部屋は広くて快適だわ」

「快適?」

「あー、俺たちの個室って近場の建物にあるんだけどさ、すんげー狭いの」

「そう。ここは寝室広いし、いいわよね」

「今日は俺があの部屋か。楽しみだ」

「……もしかして交代で使っているんですか?」

「そうよ、気付かなかった? 昨夜はあたしがベッドを使って、カイはそこのソファで寝たのよ」


 マディリエはカウチソファを指す。片肘タイプの三人は余裕で座れそうな大きさだが、背の高いカイラムだとギリギリ足が出てしまいそうな気がする。


「今日は俺がベッドでマーティがこっちだな」

「ごめんなさい。気づきませんでした……」


 どうやら本当に警護していたようだった。昨夜は馬車酔いでグロッキーになっていたので、周囲の状況に全然気づけなかった。


「マディリエさん、カイラムさん。ありがとうございます。よろしくお願い致します」


 環は立ち上がってマディリエとカイラムに向かって深々と頭を下げた。無一文の環を、体を張って守ってくれている人たちだ。自然と頭が下がった。


「お、さっき言ってたオジギってやつだな」

「気にしなくていいのに。……でもそれ、悪い気はしないわね」

「本当にタマキさんの礼はきれいですね」


 環が頭を上げると、カイラムはニコニコで、ギムレストは感心しており、マディリエのきつめの目許もゆるんでいた。環は腰を下ろしながらギムレストに聞いた。


「ギムレストさん。確認事項は二つと言いましたけど、一つ増やしてもいいですか?」

「もちろんですよ。なんでしょうか?」

「あの、これはマディリエさんたちに教えていただきたいんですが」

「あたしたちに? なに?」


 片手で頬杖をついているマディリエが続きを促す。


「その、守られる側の心得こころえ、みたいなことはありますか?」

心得こころえ?」

「やってはいけないこととか、気にしておくべきこととか、報告した方がいい内容とか……。私、こういう事態って初めてなので、何に注意をしたらいいか、全然知らないんです」


 軽く目を見開いたマディリエが、驚いたような声を出した。


「こんなこと初めて聞かれたわ」

「俺も」

「すみません」

「別に謝ることじゃねーよ、タマキ。普通の人間は命狙われたりなんてしないんだからさ」

「そうね。知らないのが普通だわ」

「そうですか」


 マディリエが少し考える顔になる。


「そうね、改めて言われても、あたしたちの言うことを聞いて欲しいくらいしかないわね」


 カイラムもうーんと唸りながら、頭の後ろで手を組んだ。


「だなー。待ってろって言った場所で待ってるとか、止まれって言ったら、ちゃんと止まるとか」

「ああ、少し前のやつね。あったわね、そんなことが」

「あの、何があったのか聞いても?」


 実例があるなら参考に聞いておきたい。カイラムがテーブルに身を乗り出す。


「護衛対象が大人しく守られてくれなくてさ、血を見てパニック起こして後先見ずに逃げ出したんだわ」

「それは……」

「いくら止まれって言っても聞かなくてな、そらもー大変よ。護衛対象と俺と追っ手で追いかけっこしてさ」


 内容は緊迫した場面のはずなのに、カイラムの話し方に緊張感が無くて、どうしても牧歌的なイメージ映像になってしまう。


「それで、どうなったんです?」


 結末が気になって聞くと、カイラムは笑った。


「追っ手をして、護衛相手を保護したさ。悲鳴を上げ続けてたから探すのは楽だったな。見つけたときにゲンコツを食らわせなかった自分を自分で褒めてやったよね。誰も褒めてくれないからね」

「みすみす逃げ出させてんじゃないわよ」

「な? 褒めてくれねーだろ?」


 マディリエの手厳しい意見にも、カイラムはけろりとしている。


「た、大変でしたね」


 現場を見てない環には、そうねぎらうことしかできなかった。カイラムは背もたれに寄り掛かって、再び後頭部で手を組む。


「だからさ、襲われて怖くても勝手に動かないで欲しいかな。追いかけんの大変だからさ」


 環は生真面目にうなずいて手帳を開いた。


「わかりました。お二人の指示に従えばいいんですね」

「そーそー。でも俺たちが逃げろっつったら、逃げんのよ?」

「逃げる……。あの、お二人とはぐれた場合の集合場所とかありますか?」

「集合場所ねえ、その時々で状況が違うしなぁ」


 答えあぐねるカイラムに代わって、マディリエが回答をくれた。


「タマキは基本的にギルドから動かないんだから、逃げろって言われたらこの部屋が避難先ね。ここまで来れない状況なら、真下のおさの部屋かしら。おさがいるときに限られるけど」

「……ヴィラードさん、ですか……」

「ははは。嫌そうな顔してんな」


 思わずメモ書きの手が止まった環をカイラムが茶化す。環は慌てて否定した。


「いえ、その、嫌というわけではなくてですね……」


 うっかり、逃げた先でセクハラされることを想像してしまっただけだ。


「あんなだけど、おさは腕っぷしだけは確かだからさ、頼りになるんだぜ?」

「あんな……」

「腹が立つけどそうなのよね。あたしより弱ければ遠慮なく足蹴あしげにしてやるのに」

「あれ? 遠慮したことなんかあったっけ?」

「どこに目をつけてんのよ? いつも遠慮してるじゃない」

「おっかしいなー。俺の目、悪くなったかも」

「悪いんじゃなくて腐ってるんじゃないの? 捨てれば? 手伝ってあげる」

「わー、待った待った。お願い待って」


 漫才を始めた二人を笑って見ていたギムレストが環に顔を向けた。


「タマキさん。おさは本当に腕が立ちますよ。昔は騎士団の斬り込み部隊にいたくらいですから」


 環は我が耳を疑った。


「……騎士団? え? 騎士団? 今、騎士団って聞こえた気がしたんですけど、もしかして騎士団っておっしゃいませんでした?」

「そんなに何度も確かめなくても……。信じられないかもしれませんが、本当です。名家の出自でもあるんですよ」

「まあ……」


(そんな人がどうして冒険者に? まさか、セクハラで追い出されたんじゃ……?)


 という失礼極まりない言葉は、なんとか飲み込んだ。環の中の騎士のイメージは歴史上の騎士ではなく、フィクション小説に出てくるような人物像だ。

 高潔で道徳心が高く、特に女性関係はストイックでいて欲しい。間違ってもセクハラを行うような人物ではない。


「人は見かけによらな……、あ、いえ、き、気さくな方なので少し意外でした」


 無意識にこぼれ出た失礼な本音を、なんとかごまかそうとした環に、


「タマキさん、顔が引きつっていますよ」


とギムレストが微笑みながら突っ込みをいれた。

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