当代の聖女は男につき
しほ
第1話
(ええとそれで……どうして俺はこんな所で。こんな人数に囲まれてるんだっけか……)
十月の末――とうに暑さは和らぎ、開け放たれた窓からは心地の良い風が室内を通り抜ける。視線を上げれば美しい王都の街並みが広がる……うん、壮観だなあ。
見ただけで高そうなカーテンが下がった窓、壁に施された数々の装飾模様、高そうな額縁に納められたこれまた高そうな絵画。ここは王宮の中でも国賓クラスの人との対応などに使用する応接室らしい。
壁際に置かれたテーブルっぽいもの(高そう)に乗っている壺だか花瓶だかわからない壺っぽい何かも高そうだ。勿論今座っているソファもやたらと座り心地が良くて高そうだし、眼前の高そうなテーブルに置かれたカップも、中に注がれたお茶も、更に乗せられている見た事の無い菓子も、何もかもが高そうで、場違い過ぎていたたまれなさに身体が震える。
(高そうという感想しか出て来ない自分が場違い過ぎてつらい)
だって俺は僻地の村の平民だ。
自給自足の村で生きてきた俺にとってここは、異世界なのだからどうしたらいいかわからない。
震える俺を気の毒に思ったのか、目の前に座る立派なフサ髭の爺さんは、穏やかな口調で促した。
「オリバー殿、そう緊張しなくとも良い。落ち着かないかも知れないがこの者達は記録や照会のために呼んでいるだけじゃ。さあ、お茶でも飲んで」
「はあ……」
そうは言われても……取り調べならいっそ牢屋かどこかでやって欲しい。10人以上の人に囲まれてたら落ち着けないし、カップが高そう過ぎて震える手で触るのが怖い。俺、無一文なんだから。
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