第176話 無双!


 俺たちは魔界の荒野で、魔王軍と戦いを繰り広げていた。

 敵はまさに数え切れないほどいる。


「いくら倒してもきりがない」

「そうだね……ロイン、どうする!?」


 クラリスが盾で敵の攻撃を受け流しながら、振り向く。


「なんとかここを切り抜けよう。剣撃分身デュアルウェポン――!!!!」


 俺は剣撃分身デュアルウェポンをとなえ、次の剣撃を2倍にする。

 今俺は複製の魔眼のおかげで二刀流状態だ。

 つまり次に繰り出されるのは4つの剣である。

 そこからさらに剣撃分身デュアルウェポンを重ね掛けする。


「うおおおおおおおおお! 剣撃分身デュアルウェポン


 それを何度か繰り返し、最大効率に達したところで――。


「くらえ……!!!! 来光轟雷斬エクスサンダー!!!!」


 ――バリリリィイイイイ!!!!


 無数に分裂した剣撃が、魔王軍の頭上を走る!!!!

 そして百万の剣撃からは、さらに無数の電撃が炸裂するッ!!!!


 ――ズシャアアア!!!!

 ――ドゴ!

 ――ドゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオ!!!!


 電撃が連鎖していき、たったの一撃で数千万の魔物たちを消し炭にした。

 本来は一体ずつがかなりの強敵であるにもかかわらず、まさに無双状態だった。


「すごい……! さすがロインだ……! もはや私じゃまったく敵わないな……」


 カナンがそう言って俺に抱き着いてくる。

 戦場だというのにのんびりしたやつだ。


「よし、これでしばらくなんとかなったな……。とりあえずここを離れよう……!」

「うん、そうだね……」


 なんとか俺たちの周りにいた敵だけでも片付けることができた。

 だがしかし遠くの方にはまだまだゴミのように魔物がいて、どんどんこっちへと迫ってきている。

 このままここでずっとこうしていても、ただ敵に時間を与えるだけだ。

 おそらく敵も馬鹿じゃない。

 こんな有象無象の軍勢を出したところで、俺に勝てないことはわかっているだろう。

 つまりこれは時間稼ぎだ。

 馬鹿正直にそれに付き合ってやる義理はないからな。


「よし、じゃあちょっと離れたところへ転移するか……」


 魔界はかなり広いようで、どこまで行っても魔物だらけだ。

 だから俺はとびきり遠い地点を想像した。

 だが魔界の地図なども持っていないし、やみくもに飛ぶわけにもいかない。

 下手したら転移先が魔物の軍勢のど真ん中かもしれないからな。


「よし、あそこに向けて……!」


 俺が目的地にしたのは、魔王城の反対側、はるか遠方に見える巨大な塔だった。

 あれがなんの施設なのかは知らないが、とにかくあそこなら魔物に囲まれるということはなさそうだ。


「みんな、俺につかまれ……!」

「はい、ロイン王……!」


 なぜかアレスターが真っ先にくっついてきた……。

 えぇ……びびりすぎだろコイツ……。


 俺はみんなを連れて、塔の最上階めがけて転移した――。


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