第167話 王の来訪


※三人称視点



 グフトック・ラインベール、その男は田舎に帰り、惨めな暮らしを送っていた。

 かつてロインをパーティから追放し、スライムすら倒せないと罵った男がだ。


 腕は腐り、使い物にならない。

 しかもロインへの借金だけは残り、返す当てもない。

 農産物などもできない彼が、どうやって金を稼いでいたかは想像したくもないだろう。

 ほぼ寝たきりで腕も使えない彼にできることは、かなり限られている。


 ロインが活躍し、成り上がっている間、グフトックはそうやって惨めな暮らしを送っていた。

 他人の助けを必要としているはずなのに、元々の性格もあり、反省しなかったグフトックは、村でも孤立していた。

 もはや誰も彼を助けないし、彼の借金は膨らむばかりだ。

 最低限の食事だけを両親から与えられ、あとは日がな一日文句を言って暮らしている。


「うう……惨めだ……でも、死にたくない……」


 そんなグフトックも、病床で孤独をかみしめるうちに、反省の念が浮かんでいた。

 なぜこんな最低な人生を送ってしまうことになったのか、何度も考えた。

 はじめはロインのせいにしたが、それもただの逃避だと自分で気が付いた。


「全部……俺のせいだ……くそ……」


 だが、それに気づいたところでもう遅い。

 彼を信頼し、力を貸してくれる人物はどこにもいない。

 あとは親のすねをかじりながら、惨めに孤独に死んでいくだけだ。


 そう自分でもわかっていた。

 両親はもう歳をとっていて、借金を返すのにも限界だ。

 そんな見捨てないでいてくれた両親に、恩を仇で返すことになって、グフトックは後悔していた。


「神様……俺がぜんぶ悪かった……お願いだ。助けてくれ……! 反省する、なんでもするから……もう一度だけ俺にチャンスをくれよぉ……」


 ベッドの中で届かぬ祈りをするグフトック。

 最近はそういった後悔の念に襲われ、苦しい悪夢にうなされる毎日だった。

 そんな悪夢の日々も、やがてようやく終わりを告げる。


 誰も旅人など尋ねても来やしない辺境の村に、ある日一人の人物がやってきたのだ。

 豪華なマントを羽織ったその男は、一国の王だった。

 そんな偉い人物が村になんのようだと、村人たちは騒ぎ立てたが……。


 彼の用事がグフトックにだときくと、すべてを察した。

 過去にした行いで、とうとうグフトックは責任を取らされるのだと誰もが思った。

 借金を返さなかったことで、処刑でもされるのかと。


 グフトックもなにか悪い予感を感じていた。 

 一国の王が、自分になんのようだろうと。

 だがしかし、その想像はどれも見当違いだった。


「よう、グフトック」


 グフトックの前に現れたのは、かつて彼がパーティから追放した人物――。


「ロイン……? お前、ロイン……なのか……?」



 そう、ロイン・キャンベラスであった。

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