第164話 魔眼


「ぎゃあああああああ!!!! 魔界四天王であるこのジェスタークさまが……! こんなところで死ぬはずがないのだ……!!!!」


 目の前の敵は、そう言いながら息絶えた。

 やけに大規模な魔法を使うと思ったら、こいつが四天王の一人だったのか。

 デロルメリアとジェスターク……こいつらは倒したから、つまりあと2体というわけか。

 いよいよ魔界の戦力を追い詰めたぞ!


「よし、こいつのレアドロにも期待できるな」


 俺はそのアイテムを拾った。



《複製の魔眼》

★ エクストリーム

説明 他のアイテムを複製できる。



「な、なんだこれ……!?」


 それは、奇妙な見た目をした『眼』のオブジェクトだった。

 悪魔の眼というような見た目だ。

 どうやって使うのか、おそるおそる使用してみることにする。


「試しに俺の武器を……」



《征魔剣=エクスカリボス》

レア度 レジェンダリーEX

説明 どんな魔力障壁をも打ち破る最強の剣

攻撃力 +72M



 俺は自分の持っている剣に、その魔眼をかざしてみた。

 すると、魔眼は剣をうつしとり、まったく同じ見た目のものを、その眼から吐き出した。


「ま、まじか……!?」


 伝説級のレアアイテムであり、レジェンダリードラゴンからのドロップアイテムである征魔剣=エクスカリボス。

 本来であれば、それは二度と手に入らないような超レアアイテムだ。

 それが、いま俺の手には二本握られている。


「はは……これで二刀流だ……!」


 武器を二つ装備したことで、俺のステータスはさらに上がる!

 こんど二刀流での戦い方も訓練しないとな。


 戦いを終えた俺は、その戦利品に歓喜していた。

 だが、その後であることに気が付く。


 ジェスタークと戦っていた部屋。

 その部屋の中に、もう一人倒れている人物がいた。

 正確には、死体だ。

 その死体は首をはねられていて、その首も跡形もなく吹き飛んでいる。


「おそらく……彼がユーラゴビス帝国王だろうな……」


 その服装などからも、彼がユーラゴビス帝国王、ユィン・ユーラゴビス23世であることがうかがえる。

 そして彼が死んでいるということは……。


「ジェスタークに殺されたんだろうな……」


 俺は静かにそっと手を合わせておいた。

 ジェスタークめ……この国を乗っ取り、兵をゾンビ化させてまで俺を狙ってくるなんて……。

 これ以上、この世界に被害を広めたくはない。

 俺はなんとしてでも、魔界に渡らなくてはならないな。


「さて……戻るか……」


 だが、その前にユーラゴビス帝国の景色でも見て帰るか。

 王を、兵を失ったこの国が……今後どうなってしまうのか……それも心配だ。

 いざとなれば、俺が国を挙げて支援をするつもりではいた。

 別に、俺のせいだとまでは思っていない。

 守れるものには、限界がある。

 俺は俺の手の届く範囲しか守れない。

 だけど、差し伸べられる手は、いくらでも差し伸べたいとも思っているのだ。


「おかしい……静かすぎる……」


 王城のベランダから城下町を見下ろして、その静かさに違和感を覚えた。

 あきらかにこの時間帯としては、異常なまでに静かなのだ。

 そういえば、さっきから城の中でもまったく音がしない。

 不審に思って、俺は街に降りて散策してみることにする。


「そ、そんな…………!?」


 なんと、そこには倒れた人がたくさんいた。

 みな、血も流さずに静かに息絶えている。

 そう、この国の人全員がだ。


「くっそおおおおおおおおおお……!!!!」


 こんかいの戦争でいったい何人死んだんだ……?

 それも、兵士だけじゃなく、民間人もだ。


「ジェスターク……!!!! いや、魔王……!!!! 絶対に許せない……!!!!」


 俺は天空に向かって叫んだ。

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