第159話 頼もしき味方たち
「うおおおおお……!!!!」
――ズシャア!
――ズシャア!
「っく……きりがない……」
ゾンビ軍団を斬って斬って斬りまくる。
しかし倒れたそばから、別のやつが起き上がってくるのだ。
さっきみたいに一掃できればいいのだが、ゾンビ軍団はそれぞれもかなり手ごわい。
なにかしらの付与術によって蘇生されているようで、動きがさっきまでとはまるでちがう。
しかも俺によってドロップして数々のレアドロップアイテムを拾って使用しているので、それもあって瞬殺とはいかないのだ。
俺も少し体力を消費しているから、よけいに時間がかかる。
「くそ……! これも罠だったわけか……!?」
久しぶりの苦戦に、俺は少し冷や汗をかいた。
術者を倒せばゾンビ兵はおとなしくなるのだろうが、だからといってこの場を離れるわけにはいかない。
はやく片付けないと、ゾンビ兵たちが他の街へ侵入してしまう。
それに、この5万の軍勢ですべてとは限らないのだ。
俺をゾンビ兵に引きつけておいて、別動隊で奇襲するつもりなのかもしれない。
そして俺のその予想は当たっていた――。
◇
【三人称視点】
「っく……なんとか耐えるんだ! 増援がくるまでは!」
アルトヴェール王国ヨルガストン領、そこでは今、まさに戦いが繰り広げられていた。
ロインがゾンビ兵に囲まれている同時刻、別動隊が別ルートで、ヨルガストンにまで侵攻していたのだ。
ヨルガストン王はその少ない兵力をなんとかかき集めて、苦しい防衛戦を強いられていた。
ユーラゴビス軍の精鋭部隊である3万人の兵士たち。
そしてヨルガストンには今、一万の兵が集まっている。
しかしユーラゴビス軍は途中でレアドロップアイテムの倉庫を襲撃していて、装備も潤沢だ。
ヨルガストンはいつ防壁を破られてもおかしくなかった。
「くそぉ! ここまでか!」
「あきらめるな! 我々にはロイン王がいる!」
「ロイン王が来るまではあきらめんぞ!」
彼らはロインのピンチなどつゆしらず、必死に戦っていた。
しかしロインも苦戦していて、駆けつけることはできない。
もはやこれまでかと思われたときだった――。
突如として、ユーラゴビス軍の勢いが下がり、後退していく。
「な、なにごとだ……!?」
戦禍の中にあったヨルガストン王が叫んだ。
そこにあらわれたのは、かつて勇者パーティと呼ばれた面々であった。
「ヨルガストン王、不在のロイン王に変わって、我々が加勢します!」
「あ、あなたたちは……!?」
「我々はロイン王が忠実なるしもべ、アレスターとその一味です。もしもロイン王がすぐに戻らなかったときのため、転移石の前にて待機させられていました」
「つまり……ロイン王が……!」
「そうです。我々はロイン王の命にて参上しました!」
「おお……! やはり神は我々を見捨てていなかった。ロイン王に感謝だ……!」
そう、ロインは王城を出る前に、アレスターたちに命を授けてあったのだ。
もしロインがすぐに戻らなければ、転移してヨルガストンを防衛するように、と。
念には念を入れて備える、それこそが戦の勝利の秘訣であった。
「我々はロイン王によって蘇生された命。この国のために使います!」
「頼もしいかぎりだ……! だが……そうなるとロイン王が心配だ。彼はまだ戻っておられぬのだろう?」
「いや、ロイン王のことだから心配はいりませんよ。人類最強の王なのです。我々にできることは、信じて待つことのみです」
「そうだな。彼に失望されぬよう、今は我々の戦いに勝利しよう! きっとロイン王もご無事であるはずだ!」
「その通りです!」
ロインもアレスターたちを蘇らせたのは、間違いではなかったと思っている。
かつては剣を交えた仲だが、今では頼もしい忠実な配下だった。
腐っても元勇者パーティである。
彼らがロインのもとで清き心を取り戻し、真面目に戦えば、そこらの人間よりはるかに頼りになる。
しかも、ロインによって選別された特製のレアアイテムも装備している状況だ。
「うおおおおおおおおおおお! アレスター殿に続け!」
「おおおおおおお! 勝利は我がアルトヴェール軍にあり!」
この日、ヨルガストン王とアレスター率いる1万の兵士たちは、その圧倒的戦力差を覆し、見事ユーラゴビス軍の奇襲部隊を追い返したのである。
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