第130話 フロアボス
レジェンダリーダンジョン第一階層にて先代勇者の遺物を集める俺たち。
換金アイテムや、その他便利アイテム。
今まで外の世界では見たこともなかったようなアイテムがどんどん手に入った。
《覚醒の秘薬》
レア度 レジェンダリー
ドロップ率 0.0000001%
説明 飲んだ後5分間だけ攻撃力を倍にする。
《賢者のポーション》
レア度 レジェンダリー
ドロップ率 0.00000000666%
説明 通常の上級回復ポーションの500倍もの効力を持つ薬。
《透明マント》
レア度 レジェンダリー
ドロップ率 0.000000000000001%
説明 装備中、透明になれる。魔力を消費するため時間制限あり。
「まったく……いったい先代勇者はどんな奴なんだ……?」
こんな得体の知れないアイテムを用意できるなんて、本当に人間とは思えないな。
あのサイハテダンジョンでさえも神々のアイテムと呼ぶにふさわしいラインナップだったが……。
これはそれに匹敵するほど、いや……それ以上にわけのわからないアイテムだ。
「まあ、魔王を倒す人だからな。このくらいは当たり前だ」
ネファレムはまるで自分のことのように誇らしげだ。
きっと彼女にとって、勇者というのは自慢できる存在だったのだろうな……。
だが、そんな関係性を思わせるのにもかかわらず、彼女をこんなところに500年も置き去りにするなんて……。
先代の勇者がいったいなにを考えていたのか、俺は甚だ疑問だった。
まあ、そこは二人にしかわからない事情のようなものがあるのだろう。
深く詮索するつもりはなかったが、俺の心に、どうしてもひっかかりが残り続けた。
「さて……お次はいよいよボスか……」
俺たちはついに、第一階層のボスの部屋までやってきた。
「ふふん、私が用意したボスだからな。これまでのようにはいかないぞ!」
「お前……誰の味方なんだよ……」
ネファレムはまた自慢げに話す。
だがあくまでこのダンジョンは魔王を倒すための修行の場として用意されたものだ。
だからあまり敵が強すぎてもダメなんじゃないのか……?
まあ、倒すのは勇者の末裔ではなく、俺だからいいんだけれど……。
俺は常に強敵との戦いを楽しみにしているしな。
もしあのアレスターが戦うとなっていれば、ネファレムのせいで世界が滅んでいたかもな……。
「ま、俺に任せておけ!」
ボスの部屋に入ると、そこには巨大な大木が鎮座していた。
ダンジョンの中だというのに、そんなことお構いなしに枝を伸ばしている。
ダンジョンの壁や天井を突き破って、まるでこの大木こそがダンジョンのコアみたいな存在感だ。
「おいネファレム、ボスなんかいないぞ……?」
俺はつい油断して後ろを振り向く――。
「ロイン! 危ない……!」
「…………!?」
クラリスの叫び声が聞こえたと同時に、俺の肩腕が吹き飛んだ。
「ぐああああああああああああああああああああああ!!!!!!?」
見ると、さきほどの大木が枝を伸ばし、俺の腕をもぎ取っていたではないか!
なんと、大木の正体は巨大なトレントだった。
「くっそ……油断した……!」
まさかダンジョンの中で大木型のモンスターが現れるなんて……。
そういえば以前にも巨大なゴーレムと戦ったっけ……。
「とにかく回復だ……!」
俺はさっそく、さっきこのダンジョンで得た《賢者のポーション》を使用した。
腕にポーションをぶっかけると、なんと先ほど失った腕がにょきにょきと生えてきた。
「はは……まじか……さすがだな、勇者の遺物」
これがあるせいで油断してしまったというのもあるだろうか……。
さっきからこのアイテムには助けられてばかりだ。
だが、これがあるおかげで多少無茶をしながらも強敵と戦える。
きっと先代勇者もこれがあったから、魔族と渡り合えたのだろう。
「大丈夫……!? ロイン……!」
「あ、ああ……大丈夫だ。腕はこの通り」
クラリスとカナンが心配して駆け寄ってくる。
しかし、俺以上に心配なのはこの二人なのだ。
俺はレベルアップでかなりステータスが高いが、二人は装備だけの強化だ。
だから俺以外の二人がダメージをくらえば、それこそひとたまりもない。
「俺は大丈夫だから、二人は下がっていてくれ。カナンはクラリスの盾の後ろに」
「で、でも……! ロインが……! 私たちも戦う!」
「いいから……! 頼む!」
「わ、わかった……」
二人の気持ちはうれしいが、ここまできたらもう俺一人が戦ったほうが話が早い。
そのくらい、俺たちのステータスには差が出ていた。
俺はなんとしてもこの二人を守らなくてはいけない。
だからこそ、俺は危険を冒して戦える!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
腕が治った俺は、反撃を繰り出す!
トレントの腕めがけて剣を振る!
――ズシャ!
――バキ!
――スパっ!
「よし……!」
どんどん枝を切って、トレントの身動きをとれなくしていく。
なんていうことはない。
油断さえしなければ、相手はその場から動くこともままならない大木だ。
枝を振り回して攻撃してくるが、その動きはすぐに見切った。
ひとつひとつの攻撃は威力こそとてつもないが、こちらの剣のほうが威力は上だ!
「うおおおおおおおおおおおおお!!!! 食らえ!!!!」
ついに枝をさばききって、大木の本体までたどり着く。
そして本体めがけて一撃!!!!
しかし――。
――キン!
「なに…………!?」
なんとあろうことか、俺の渾身の攻撃が弾かれてしまった。
会心率の底上げもあって、異常な威力になっていた俺の攻撃が、だ。
「なんで…………!?」
しかも俺の武器は破龍のつるぎ。この世に斬れない物質はまず、ありえないはず……。
この世ならざる素材であるはずのサイハテダンジョンの扉でさえも壊したあの攻撃が……弾かれた……!?
「ど、どういうことだネファレム!?」
俺は思わずネファレムに呼びかける。
このダンジョンの管理設計をしたのは彼女だ。
教えてくれるともかぎらないが、なにか知っているとすればそれは彼女だけだろう。
「ふっふっふ……! こういうこともあろうかと、ボスには特殊な魔力障壁が張ってあるのだ! そうそう規格外の力を手にした程度では、びくともせんよ! はっはっは!」
「っく…………」
初めて俺が苦戦しているからか、ネファレムは非常にうれしそうだ。
ほんと、こいつは誰の味方なんだよ……。
「そうか……なら、それ以上のパワーで打ち砕くだけだな……!」
「え………………??」
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