第129話 レジェンダリーダンジョン
ネファレムから鍵をもらった俺たちは、レジェンダリーダンジョンの第一階層にやってきた。
ダンジョンの壁は黄金に輝いていて、ここが異質な空間であることを深く感じさせる。
しばらく探索を続けていると、馬のようなモンスターが目の前に現れた。
下半身は馬で、上半身が騎士のようなモンスターだ。
全身を黄金の鎧に包んでいて、いかにも強そうな感じだ。
黄金騎兵は俺たちに気づくと大きな剣を振り下ろし、襲い掛かってきた!
「さあ、お手並み拝見といこうじゃないか、ロイン」
ネファレムが俺を煽る。
きっと俺が苦戦するだろうと思っているのだろう。
しかし――。
「遅い!」
――ズシャアアア!!!!
俺は一閃にて黄金騎兵をなぎ倒した。
サイハテダンジョンに初めて潜ったときはあれほど苦戦を強いられたが、今回は別だ。
今の俺はあれからさらにレベルアップという方法で強化を重ね、向かうところ敵なし状態。
この世界の他の存在、もちろんモンスターたちにも、レベルアップという概念は存在しないのだから、俺だけが有利という状況だ。
俺は文字通り、規格外に無限に成長できる。
だから、初めてやってきたレジェンダリーダンジョンの、まだ見ぬ敵でさえも、相手にならない。
「すごい! さすがロインだね! もう私たちじゃついていけないかも……」
「そんなことないさ。クラリスとカナンがそばにいてくれるだけでも、俺は安心して戦える」
いつものようになにごともなく、勝利を喜ぶ俺たち。
それを見て、ネファレムは唖然とした表情を浮かべている。
「な、な……レジェンダリーダンジョンのモンスターを瞬殺……!? ここのモンスターはサイハテダンジョンの敵とは比べ物にならない強さなんだぞ!? それこそ、先代勇者が修行のために作ったんだから、そう簡単には倒せないはず……」
「ま、俺にかかれば関係のない話だ。これで俺が魔王を倒すのも無理じゃないってわかっただろう?」
「ま、まあ……思ったよりはやるようだ。だが、まだまだボスはこれからだぞ」
「ああ、わかってる。……っと、その前にドロップアイテムだな」
俺はさっき倒した黄金騎兵のもとに駆け寄る。
ネファレムはまたしてもあきれた顔でこっちを見ている。
「オイオイ……そう簡単にドロップアイテムはでないぞ……? なんといっても私はこのダンジョンの管理者でもあるんだから……ドロップ率もしっかり把握しているんだ……って……!?」
俺は拾ったアイテムをネファレムに見えるように掲げた。
もちろん、ただのドロップアイテムなんかではない。
いつものように、レアドロップアイテムだ。
《黄金樹の雫》
レア度 【レジェンダリー】
ドロップ率 0.00001%
説明 非常に高価な換金アイテム。これ一つで国を買えるほど。
「おお……! なんかすごい……。まあ、お金はそれほど困ってないけど」
これも勇者の残したものの一つなのだろうか?
まあ、雑魚モンスターから出るアイテムにしてはかなりいいものなんじゃないだろうか。
魔王と戦おうとすれば、国を動かすくらいの金は必要になるだろうしな……。
そういうことも心配して、このアイテムが設定されているのかもしれない。
まあ、俺の場合はあいにく、そもそも一国の主でもあるから、金以前に、国を動かすことができるわけだけども……。そんな事情は、先代勇者様も想像だにしていなかっただろうから、仕方がない。
「おい……そんな馬鹿な……!? なんでいきなりレアドロップアイテムが……!?」
ネファレムは信じられないという顔で、ずっと俺のほうを見てくる。
こういった反応はこれで何人目だろうか……?
まあ、何度みても人が驚く姿は面白い。
「ああ、まあ……これが俺がここまでこれた秘訣でもある。俺は、この通りレアドロップアイテムに事欠かない体質をしているんだ」
少しもったいないが、種明かしをしてやった。あまり隠し続けるのも、気の毒だしな。
「そ、そんな馬鹿なことって……。勇者でもないのに……ど、どういうことなんだ……!?」
「さぁ……? 俺もわからない」
「こ、こんなことは想定外だぁ……。せっかく難しくダンジョンを作ったのにぃ……」
「は…………?」
今、こいつはなんて言ったんだ……!?
こいつがダンジョンを……作っただって……!?
「おい……どういうことなんだ……? このダンジョンを用意したのは、先代の勇者だって話じゃなかったのか?」
「ああ、遺物と仕組みを与えて、私にダンジョンを作るように命じたのは確かに勇者だ。だが、管理を任されていたからな……その……500年のあいだあまりにも暇だったんで……いろいろと……その……作り変えた」
「えぇ…………」
俺は思わずあきれてしまう。
やっぱり500年って、こいつにとっても長かったんじゃねぇかよ……。
てっきり普通の人間と時間感覚が違っていて……とかってことかと思ったら……。
まあ、そういうことならネファレムは少しかわいそうだとは思う。
いったい、先代の勇者は何を考えていたんだろう……。
「なあ、ネファレム。このダンジョンをクリアしたら……俺たちといっしょに来ないか……?」
「え…………? で、でも……私が勇者に与えられた使命は……このダンジョンの管理だけだ……」
「でも、俺がここをクリアしたら、そのときはもう必要なくなるだろう? 俺が魔王を倒すんだからさ」
「た、たしかにそうだが……」
「な? ずっと退屈してたんだろ? 俺が魔王を倒すとこ、目の前で見せてやるよ」
「う、うん……」
俺はそっとネファレムの頭を撫でた。
500年生きて、こんなふうに偉そうに話していても、この子もただの普通の、かわいい一人の女の子だ。
そんな彼女にさみしい思いをさせて、先代の勇者には少し怒りのようなものも覚える。
「よし……、決めた」
「え……?」
「先代の勇者にむかつくから、このダンジョンさっさと最速で攻略して、全部の遺物を回収してやるぜ。それから、そのあとにこのダンジョンめちゃくちゃにぶっ壊す」
「えぇ……!? そ、それは……私がせっかく難しく作ったのにぃ……!」
「って……あ、そうだったな……」
こいつ……自分が退屈だったからって、先代勇者の用意したレジェンダリーダンジョンを高難易度に改造したんだったな……。まったく、ここを攻略するのが俺でなくてあのアレスターだったらと思うとぞっとするな……。
俺だったからこいつの設定したバカげた数値のドロップ率を回避できたけど、他の人物だったら一生このダンジョンにとらわれて魔王どころじゃなくなってただろう。
まったく、先代勇者は子孫を修行させる目的で作らせたっていうのに……。
「ま、全部俺にまかせておけ……!」
「ロイン……」
俺はさっそく勢いよく、ボスの部屋の扉を目指した。
後ろから、とてとてとネファレムがついてくる。
そんな俺たちを見て、カナンとクラリスが顔を見合わす。
「まったく……ロイン……また女の子を落としてるよ……」
「まあ、仕方ないね……ロインだもんね……」
全部聴こえているんだけど……。
非常に心外だ。
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