第123話 完全攻略へ


 ヨルガストンの城を出た俺は、急に立ち止まった。

 その時、俺の脳内にはまたあのメッセージが流れていた。


《レベルが、5上がりました!》


 今度は一気に5も上がった……!?

 いったい何が原因なんだろうか。

 そう思った矢先、すぐにまた次のメッセージが脳内に響き渡った。


《実績解除:大陸の覇者1》


 実績……!?

 その名称からして、今回のヨルガストンを手にしたことによるものだろうか……?

 以前のレベルアップと今回のことから考えて、なにかアクティビティをこなすと、レベルがあがる仕組みのようだ。

 ただ、その細かいルールまではまだわからない。

 一応、ステータスを確認する。



――――――――――――――――

ロイン・キャンベラス(装備)

17歳 男 

レベル 7

ジョブ 勇者

攻撃力 69993(+34M)

防御力 69993(+34M)

魔力  69993(+34M)

知能  69993(+34M)

敏捷  69993(+34M)

魅力  69993(+34M)

運   14M★(+34M)

◆スキル一覧

・確定レアドロップ改

・限界突破無限成長

――――――――――――――――



「はは……これはとんでもないな……」


 このままレベルが上がり続ければ、しまいには数え切れなくなるぞ……。





 アルトヴェールに帰還した俺は、さっそくみんなにヨルガストンのことを伝えた。

 国民を広場にあつめ、俺からヨルガストンが帝国傘下に加わったことを説明する。


「ということで……我がアルトヴェールは王国より帝国へと昇格した! みんな、これからもよろしく頼む! それから、今後はヨルガストンへの行き来も自由となる。商業網もより発達するだろう。みんなの協力をお願いする」


 みんなの前でそう告げると、アルトヴェール国民たちも万歳して俺を称えてくれた。

 ヨルガストンを平和的に吸収できたことは、アルトヴェールの民たちにとっても喜ばしいニュースだったのだ。


「やったぁ! これで楽にヨルガストンへ観光に行ける! 俺は前からずっと行ってみたかったんだよな」

「さすがはロイン様だ! もう他国を手中に収めてしまうなんて……!!!!」

「これでアルトヴェールも安泰だな……。まあ、ロイン様が王な時点でそれは決まっていたけど」

「ロイン様万歳! ロイン様万歳!」


 俺は王冠をかぶり、みんなの前で王らしく振舞った。

 今までは仲間内での国という感じだったが、これからは巨大な帝国となるのだ。

 あまり偉そうにするのは得意ではないが、今後はそうも言ってられない。

 国をまとめるためには、一国の王らしく、威厳のある態度が求められるだろう。


「ふぅ……疲れた……」


 会見が終わった後、俺は自部屋のソファにぐったりと腰かける。

 常に王としてのふるまいを求められるので、疲れてしまう。


「大丈夫ですかロインさん。たまにはゆっくりしてくださいね」

「ああ……ありがとうサリナさん」


 サリナさんに肩をもんでもらう。

 そうしながら、俺は考える。

 俺たちがこうして強大な力を蓄えているように、きっと魔界でも敵が力を蓄えていっているに違いない。

 守るものが増えたことで、俺はより危機感を感じていた。

 この世界にはまだまだ規格外のアイテムや、敵がいる。

 ならば魔界ともなれば、それこそ想像もできないような強敵が待ち受けていてもおかしくはない。


「よし……俺はもっと強くならなくちゃ……!」

「え……!? これ以上強くなるの……!?」


 ドロシーが紅茶をいれながら、驚いた。


「当然だ。まだ戦いは終わったわけじゃないんだ。油断はできない。いずれは魔界との完全決着をつけるつもりだからな」

「さすがはロイン……」


 俺は、できることなら今すぐにでも魔界に乗り込んでやりたい気分だった。

 魔界将軍ガストロンの名前も気になっている。

 あちらからこっちの世界へ人間を送り込むことができているのだから、こちらから出向く方法もあるに違いないと俺は思っていた。

 どうやってやるのかは見当もつかないが、必要なアイテムなどがあればそれを使えばいいだけだ。

 幸い、俺にはその力がある。


 だが、乗り込むにしても、まだまだ力に不安はある。

 仮に魔界にいく方法がわかったとしても、俺一人でいくことになるだろう。

 さすがに魔界に乗り込むなんて危険な真似を、彼女たちにさせるわけにはいかない。

 それに、魔界へのゲートを通れる数にも限りがあるだろうからだ。

 そういったことを考えると、俺はもっと強くならなければいけなかった。


「まあ、俺はお前たちを絶対に守ると決めているからな。戦いが終わるまで、俺は強くなり続けることをやめないさ」

「ロイン……かっこいい……!」


 ドロシーが目をハートにして、俺に抱き着いてきた。

 やれやれ、かわいいな……。





「ということで、さっそく次なる冒険だ」


 俺はクラリスとカナンを連れて、アルトヴェールを出ることにする。

 冒険に必要なものをまとめて、再び転移の準備をする。


「でもロイン……これからどうするの? もうこれ以上どうやって強くなるっていうのよ……」


 クラリスが不思議そうに尋ねる。


「いや、まだ俺たちにはやり残したことがあるはずだ」

「やり残したこと……?」


「そうだ」

「あ……!」


 どうやらカナンとクラリスも、俺の言いたいことに気づいたようだ。


「そう、サイハテダンジョン。あそこはまだ、続いている」

「た、確かにそうだけど……」


「次こそは、あのダンジョンを完全攻略するぞ。謎を解き明かすんだ」

「そ、そうね……。緊張してきた……」


 なにせあのダンジョンにはまだまだ不思議がいっぱいだ。

 異次元レベルのアイテムが眠っているあのダンジョンなら、なにか魔界へいく手がかりも見つかるかもしれない。

 それこそ、魔界へ転移するためのアイテムすら、手に入るかもしれない。

 そう考えると、あのダンジョンをクリアしない手はなかった。


「でも……そうなると、あの先へ進むことになるのよね……」

「ああ、そうなるな」


 サイハテダンジョンから切り上げて、俺たちがテンペストテッタの街に戻ったのには、ただセット装備がそろったから以外にも、別の理由があった。

 あれ以上、進むことができなかったからだ。

 セット装備をもってしても、あれ以上進んでいくには、かなりの時間がかかると判断した。

 それこそ、途方もないほどに。

 だからこそ、俺たちはテンペストテッタの街を防衛することを優先した。


 サイハテダンジョンの最奥で、俺たちは巨大な扉を発見した。

 その扉には鍵がかかっていて、どうやっても開けることができなかったのだ。

 しかし、今回はその扉の鍵をさがし、その奥までいってみようというわけだ。


「あの扉の向こうに……なにがあるのかしらね……」

「だな……。だが、それは行ってみるしかないだろう」

「そうね……怖いけど……」

「大丈夫だ。俺が二人を守る」


 そうして、俺たちはサイハテダンジョン完全制覇に向けて、ダンジョンへと転移した。

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