第118話 レベルアップ


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 アルトヴェールに帰還した夜、俺はベッドの上で頑張った。

 四人を相手に一晩中というのは、なかなか体力的にしんどいものである。

 だが俺はそれ以上に、戦いですり減った心が癒された気がした。

 そして迎える朝――。


《レベルが1上がりました!》


「え…………?」


 ベッドの上で目が覚めると同時に、俺の頭の中にそんな目覚ましが鳴り響く。

 頭の中に直接、言葉が流れ込んでくる感じだ。


「どうしたの? ロイン?」


「いや……なんでもない……」


 まだ寝ぼけているクラリスが、不思議そうな顔をする。

 俺はこっそりベッドを抜け出して、ステータスを開いてみることにした。



――――――――――――――――

ロイン・キャンベラス(装備)

17歳 男 

レベル 2

ジョブ 勇者

攻撃力 19998(+34M)

防御力 19998(+34M)

魔力  19998(+34M)

知能  19998(+34M)

敏捷  19998(+34M)

魅力  19998(+34M)

運   4M★(+34M)

◆スキル一覧

・確定レアドロップ改

・限界突破無限成長

――――――――――――――――



「うえええええええええええ!?!?!?!?」


 なんと俺のカンストしていた素のステータスが、それをはるかに上回っていた。

 しかもこれは……レベルが1上がっただけで、もとのステータスが倍になっているじゃないか。


「どういうことなんだ……これ……」


 なぜレベルが上がったのか……それはおそらく、昨日の夜の一件のせいだろう。

 しかし、戦闘をしたわけでもないのにステータスが上がるなんて……。

 このレベルというのは、戦闘以外でも上げることができるということか?

 だとしたら、これは将来的にとんでもないことになるぞ……。


「このステータスは誰にも見せられないな……」


 俺が一人でそうやっていると、後ろから裸のカナンが首に手をまわしてきた。


「ねえロイン……なにやってんの?」


「え……? いや、ちょっとな……」


「そんなことよりも、もうちょっとイチャイチャしようよ」


「まったく……昨日あれだけ頑張ったのに……」


 こいつ、どこまで俺から搾り取る気だよ……。

 まあずっと戦いばかりで飢えていたのだろう。

 そしてそれは俺も同じだ。


「はぁ……昼までだぞ……」


「やったぁ!」


 俺はしぶしぶ、ベッドへと戻る。

 すると見計らったように、他の三人も目を覚まして俺を待ち構えていた。


「ロインさぁん♡ 今日はまだこれからですよ?」


「サリナさんまで……」


 どうやら休みはまだまだ続きそうだ。

 で、結局。


「今回はレベルアップなしか……」


「どうしたの……?」


「いや、なんでも」


 昼頃になって、ステータスを確認してみるも、レベルアップは2のままだった。

 どうやらレベルアップにはなにか規則性や法則があるらしい。

 まあ、ベッドに入るたびにレベルアップするなんて、そんな都合のいいことはないか……。

 少しがっかりすると同時に、安心する。

 ベッドでレベルが上がるなんて、彼女たちに知れたら、それを口実に毎晩誘われるに決まっている。

 そうなってしまえば、さすがの俺も体力が持たない。


「よし……! 休憩は終わりだ。俺はちょっと工房にいってくる。ドロップアイテムをガントレット兄弟に見せたいしな」


「えー、ロイン……もう終わり……?」


 ドロシーが残念そうに俺をつかんでくるが、さすがに俺も限界だ。


「まあ、またかえってくるから」


 そして俺は彼女たちをその場に残して、ガントレット兄弟のもとに転移した。

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