第80話 貸出装備


 しばらくして、ようやく予定数の装備が用意できた。

 ルナティッククリスタル製の鎧に、各種武器。

 そろそろクリスタルが尽きかけてるから、また奈落にいってとってこなくちゃな。

 まあ、それはそれとして……。

 今ある鎧のほとんどは、魔力を既に通して、固くしてある。

 これで、当面の間営業できそうだ。


「よし、じゃあ冒険者ギルドを、いよいよ動かしていこう」


 そして、アルトヴェール領に、初めての冒険者ギルドが誕生した。

 受付嬢も何人か雇ってある。

 その受付嬢たちの教育係は、もちろんサリナさんだ。

 そして、ギルド内には、酒場が併設されている。

 内装は、ギルドラモンのギルドを参考にした。

 酒場のカウンターには、ベラドンナが働いている。


「おお……理想の形だ……」


 俺はその風景を見て、満足して笑みを浮かべる。

 まだ冒険者の数は少ないが、これからだ。

 レドットとドレッドの兄弟も、しょっちゅう酒場に休憩に来ている。

 まあ、しばらくは仕事も落ち着くから、別にいいけどな……。


「ロイン、あんたのおかげだよ。俺たちは仲直りできたし、ベラドンナともうまくいっている」


「まあ、それはこっちこそだ。あんたらのおかげで、こんなに早く装備が整えられた」


 俺たちは、お互いに感謝の言葉を述べた。

 だが、まだまだこれからが踏ん張りどころだ。

 といっても、俺にできることは、レアドロップの補充くらいなのだが……。





 貸出装備は、俺の予想以上に、盛況を博した。


「うおおお! ロインさん、本当にこれ、借りていっていいんですか……!?」

「ああ、もちろんだ。その代わり、報酬は少し減るがな」


 俺は新米冒険者に、武器の使い方などを教える。

 あとは、強敵と戦う注意点も。

 武器や防具を手に入れたからと言って、使い手次第で、その明暗は大きく分かれる。

 いい防具をつけていても、打ち所が悪ければ死に至るし。

 攻撃の仕方が下手なら、一発も当てられずに、苦戦することになる。


 まあ、その辺、俺は徐々に強敵と戦って鍛えられたから、これまで無事にやってこれたのだろう。

 それに、個人によって素質というものもある。

 俺は、なりふり構っていられなかったし、死ぬ気で戦ってきた。

 だから、今がある。

 でも、いきなり強い武器を手にした冒険者が、どうなるかはわからない。

 だから俺は、その辺を念押しして伝える。


「大丈夫ですよ、ロインさん! この武器なら、ぼくでもきっと……倒せます!」

「ああ、そうだな。だが、くれぐれも油断するなよ……!」

「はい……!」


 俺はこうして、毎日何人もの冒険者を送り出した。

 そろそろレアドロップを掘りに行きたいが、立ち上げは最初が肝心だからな。

 しばらくは、こうしてちゃんと、俺がこの目で見届けたい。


 ちょうど、冒険から帰ってきた奴らがいた。


「ロインさーん……! ただいま戻りました……!」

「おお、お前たちか……。無事でなによりだ」


 冒険者の無事こそが、俺の一番重要視していることだ。

 武器や防具はまた作れるが、命だけはそうはいかないからな。


「ロインさん、この貸出制度、すごいですよ!」

「ほんとか!」


「ええ、この装備、本当にいいです! 僕たちでも、今まで倒せなかったような敵を倒せました……!」

「それはよかった。でも、報酬に不満はないか?」


「そんな! 不満なんてありませんよ! だって、今までだったら挑戦すらできなかったようなクエストですからね。僕らには、多すぎるくらいの額ですよ!」

「そうか、そりゃあよかった」


 というふうに、冒険者たちはよくやってくれているようだ。

 こうやって、強い敵と戦い、強いクエストをこなしてもらう。

 そうすることで、このアルトヴェール領を拠点にする冒険者たちは、どんどん場数を踏んで、どんどん強くなる。

 そして、最強の冒険者軍団が誕生するのだ。

 そうすれば、魔王軍など怖くもない……!


 しかも、俺の冒険者ギルドの収入も、はやくも他のギルドに肉薄するほどだ。

 なにせ、高難易度のクエストばかり受けることができるからな。

 強敵と戦うことを望んでいる冒険者は、どんどんアルトヴェール領に移ってきている。

 まあ、中にはそんなキツイクエストはごめんだというものもいるから、そこは棲み分けできそうだ。


 しかも、冒険者たちは、多すぎるクエスト報酬を、どんどん酒場に落としてくれる。

 だから、俺のギルドは金銭的にもかなり儲かっていた。

 中には、儲けた金で、貸出装備を買い取る奴もいた。


「よしよし、俺の思った通りに進んでいるな……!」


 そんなとき、ガントレット兄弟から、追加でルナティッククリスタルを仕入れてほしいと言われた。


「ロイン……悪いが、また頼めるか?」

「ああ、お安い御用だ」


 また奈落に潜って、クジラを倒せばいいだけのことだ。

 今度は、複数倒せばいいだろう。


「よし、じゃあ……クラリス、カナン、ついて来てくれるか?」

「うん!」「もちろん……!」


 ドロシーは民衆をまとめたり、行政のことをやってもらったりと、いそがしくしているのでお留守番だ。

 サリナさんも、もちろん戦ったりしないし、受付嬢の仕事もあるから、お留守番。


 俺とクラリス、カナンの、いつものパーティーで、奈落へと転移することにする。

 あ、でも……その前に。


「久しぶりに、ギルドラモンの街に寄るか。あれから、復興がどうなったかも知りたいしな」

「そうね……かなり、街が壊れちゃってたからね」


 ということで、俺たちはギルドラモンへと転移した。

 まさか、あんなことになっているなんて知らずに――。



――――――――――――――――――


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