第17話 勇者パーティー


「きみが……ロイン。キャンベラスか……?」

「あ、ああ……そうだけど……」


 あのアレスター・ライオスが、俺になんの用だというのだろうか。

 アレスターは俺のことを見下したようにキッとにらみつけると、こう言った。


「この卑怯者が……! 恥を知れ……!」

「……!?」


 初対面だというのに、ずいぶんな挨拶だ。

 いったい俺がなにをしたというのだろうか。


「君のような無名の新人が、我々と同じSランクだと!?」

「そ、それがなんだっていうんだ……?」


「みんなは騙せても、この勇者は騙せないぞ! なにか卑怯な手をつかったんだろ!」

「は、はぁ…………!?」


 まさかそんな言いがかりをつけてくるとは思わなかった……。

 たしかに俺の急なランクアップは前代未聞だし、俺でも信じられない。

 だが、なんの根拠もないのにいきなりこんなことを言ってくるなんて。

 勇者というやつはずいぶんと気が短いらしい。


「俺たち勇者パーティーはだな、この4人のコンビネーションがあってこそのこの順位なんだ! 君のようなソロの冒険者が、5位になんかなれるわけないだろ!」

「い、いや……俺に言われてもな。それはギルドの決めることだし……」


 冒険者ランクは、ギルドの厳正な審査と確固たる貢献ポイントシステムによって算出される。

 つまり、不正なんていうのはほぼ不可能なのだ。

 それなのにこんなふうに突っかかってくるということは、嫉妬のような感情的なものだろう。

 つまりは新人潰し。

 下から追い上げてきた俺という存在が、脅威に思われているんだ。


 まさかグフトック以外にもこんなめんどうなヤツがいたなんて。

 目立つというのはこれだから嫌だったんだ。


「ちょ、ちょっと待ってください! ロインさんはなにも悪くありません! ロインさんはきっちりと、ランクに見合う活躍をされているんですよ!?」


 と、サリナさんが俺を庇う発言をしてくれた。

 ギルドの受付嬢さんがこう言ってくれているのだから、さすがの勇者も引き下がるかと思ったのだが……。

 勇者という立場もあるのだろうか、彼は決して態度を緩めなかった。


「オイオイ、あやしいな? 君もグルなんじゃないのか……?」

「な……っ!?」


 俺だけでなく、サリナさんにまで疑いの目を向けるなんて……!

 これにはさすがの俺も少しイラついてしまう。


「ランキングボーナスを狙って、不正をはたらいたんじゃないか? それで、この女と山分けにでもするつもりだったか?」

「そうよそうよ! アレスターの言う通りだわ!」


 などと言って、勇者パーティーは俺の怒りに火をつけた。

 俺のことをどう言おうがかまわないが、サリナさんにまでそんな風にいうのは、許せない。


「おい、撤回しろ……!」

「あ……?」


 気づいたら、俺はアレスターのことをにらみつけていた。

 俺がSランクであることは、力を見ればわかるだろう。


「表へ出ろ、決闘だ。俺があんたに勝ったら、さっきの発言を撤回してもらう」

「……っは! 君はまさか、この俺――冒険者ランク1位の勇者、アレスター・ライオスと戦おうと言っているのか……!?」


「そうだ!」

「はっはっは! 身の程知らずめ! 不正でランキングを上がってきた君なんかが、相手になるわけがない……!」


 たしかに、不正だったらそうだろうな……。

 だが実際は、俺は実力でここまでやってきた。

 そして俺はソロでここまでポイントを稼いだ。

 しかしこいつらは4人パーティーでだ。

 一対一で戦えば、どちらが勝つかはわからない。


「ちょっと! あんた何様のつもり? アレスター、こんなやつ、もうほっときましょう。相手にする必要ないわ」

「ああ、そうだな……目に見えてる勝負を受ける必要なんてない」


 などと、勇者たちはほざいている。

 このまま俺の不正ということで、逃げ切ろうというつもりか?

 そんなことはさせない……!


「どうした? 怖いのか……?」

「あ……?」


「まさか不正で5位になったはずの俺に、万が一でも負けるのが怖いのか?」

「てめぇ……もっぺん言ってみろ。俺が万が一にでも負けるわけないだろ? いいだろう……表へでよう」


 挑発には簡単に乗ってくれたようだな。

 よほど1位の座に自信とプライドがあるんだろうな。

 俺たちが決闘のために表へ出ようとすると、後からギャラリーがどんどんついてきた。


「おい、決闘だ!」

「あの謎の新人と勇者だぞ!」

「殺し合いだ! いいぞ! やれ!」


 俺はサリナさんへの失礼な態度を、絶対に許しはしない。

 この5位という順位は、俺自身でつかみ取ったものだ。

 それを誰にも、否定させない、奪わせない……!


 俺は相手が、勇者だろうがなんだろうが――ぜったいに勝つ!

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