第4話 ゴブリンのレアドロ!


 スライムナイフを売った金で、俺は自分の防具を整えた。

 24000Gガレウスもあったので、かなり丈夫なものが揃えられた。



――――――

剣 聖騎士の剣 10000G

頭 聖騎士の兜 5000G

鎧 聖騎士の鎧 6000G

アクセ 聖騎士の首飾り 3000G

――――――



「よし……! これでそうそう死ぬことはないだろう……」


 聖騎士シリーズには、生命力を高める効果があるそうだ。


 少々値ははったが、いい買い物ができた。

 防具のよさは命に直結するからな……。

 素のステータスが低い俺にとっては、特に重要だ。


「しかしここで一銭も残さないあたり、俺もギャンブラーだよな……」


 防具と武器を揃えて、再び一文無しになった俺は、さらなる戦いに身を投じなければならなかった。

 正直、まだギルドでクエストを受けるのはやめておきたい。

 きっとこの格好でギルドへ行っても、まだ笑われるだけだ……。

 それよりも、もう少し力をつけてからにしよう。


「とりあえず、今日は別のモンスターを狩ってみよう」


 レアドロップがスライムに対してだけのマグレじゃないってことを、確認しなくちゃならない。

 俺が狩の対象に選んだのは、ゴブリンだ。


「近くで見ると恐ろしいな……」


 俺は今、ゴブリンの一団をつけている。

 ゴブリンは雑魚モンスターではあるが、それなりに知能を持っているし、並みの冒険者だと囲まれれば簡単に負けてしまう相手だ。

 それに、俺は戦闘経験も浅い。

 ゴブリンは、スライムのように簡単に攻撃を受けてはくれないだろう。


「それに……この数はちょっとヤバいか……?」


 ゴブリンは基本、集団で暮らしているそうだが……。

 俺が今、森の中をつけ回しているのは、10匹のゴブリン集団だった。

 下手をすれば……いや、下手をしないでも囲まれれば簡単に殺されてしまう数だ。

 しかし、他に手ごろなモンスターが見つからなかったのも事実。


「くそ……引き返して別の奴を狙うか……?」


 なかにはもっと少数で行動しているゴブリンもいるはずだ。

 まずはそういう簡単な敵から倒した方がいいだろう。

 ここで博打を打ってもなんにもならない。

 もちろん、戦って自分を試してみたい気持ちもあるが……。


「あ……!」


 ――バキ。


 俺はあろうことか、木の枝を大きく音をたてて踏んでしまった。


「ゴブ……!?」


「やべ……! 気づかれた……!?」


 こうなっては、もう剣を交えるしかない。

 俺は買ったばかりの新品の剣を抜いた。


「来るなら来い……!」


 正直、足が震える……。

 だって、昨日までの俺は、スライムすら倒せない存在だったのだから。

 それが今、似合わない鎧なんか着込んで、ゴブリンの集団に囲まれている。


「こんなの、興奮しないわけないよなぁ……!」


 俺は、自分の中で闘争本能が目覚めていくのを感じていた。


「くらえええええ!」


 ――ズシャァ!


「ゴブゴブ!?」


「よし、まずは一匹!」


 最初の一匹を倒すと、ゴブリンたちの目の色が変わった。

 俺に力があると知り、警戒を強めたのだ。


「まだまだぁ!」


 ――ズバズバズバ!


 俺はまるで別人が乗り移ったかのように、ゴブリンたちを切り刻む。

 そうか……!

 戦いって、こんなに楽しかったんだ……!


「すごい! 俺でも倒せるぞ! 武器さえあれば、俺でも敵を倒せるんだ!」


 もちろん、俺の素のステータスは人より低い。

 そのぶん、同じ武器を持って戦えば負けるだろう。

 だが、俺には誰にも負けない強みがあった。

 これを活かせば、もしかしたら俺も最強になれるかもしれない。


「そうだ! ドロップアイテムだ!」


 そう、俺には確実にレアドロップを引き当てる力がある。

 これさえあれば、他人よりも効率的に高みを目指せる。


「どれどれ……ゴブリンたちのドロップは……?」


 俺は、ゴブリンたちの死体を探る。

 6体は倒せたが、4体は恐れをなして逃げていった。



《長寿草》

レア度 ★★★

ドロップ率 1%

説明 煎じて飲むと寿命が延びるとされる貴重な草。



「おお! これまた高値で売れそうな品だ!」


 ゴブリンがこんな奇妙な草を集めているなんてしらなかったなぁ……。

 だが不思議なことに、長寿草は5つしかない。

 つまり、あと一つは……?


「なんだこれ……?」


 ゴブリンのうち一体は、別のドロップアイテムを落としていた。



《惨殺剣》

レア度 ★★★★

ドロップ率 0.2%

攻撃力 25

説明 たまに敵を即死させることができる剣。



「おお!? これはさらにレアなやつか!」


 なんと、ゴブリンには複数のレアドロが存在するらしい。

 これはその中でも貴重な奴だな……。


「これはつよいな……! 装備しておこう」


 俺は今装備している剣を売って、これを装備することに決めた。

 これならどんどん強くなっていける……!

 俺は未来の自分がどれだけ強くなっているかを想像し、期待に胸を膨らませた。


 街に帰った俺は、アイテム屋に長寿草を売りに行った。


「おじさん、これ、売れるかい?」


「あ、あんた……これをどこで!?」


「いや……ちょっとしたドロップアイテムだよ」


「これは貴重な草だ。貴族たちに高値で売れる。そうだな……これでどうだ?」


「こ、こんなに……!?」


 なんと俺は草を売っただけなのにも関わらず、40000Gもの大金を手にした。


「はは……! これはいい!」


 せっかくなので俺は奮発していい肉を食いに行った。

 戦いの後の食事は最高だ。

 ちなみに、俺はずっと鎧を着ているから、あまり人に声はかけられない。

 まあ、目立つのはごめんだからな。

 俺の能力がバレると、いろいろ厄介だろう。


「そうだな……宿もいいところをとろう」


 俺は街でもそこそこのランクの宿をとった。

 10000Gほど渡しておけば、2か月はいれるそうだ。


「はぁ……! なんだか上手くいくようになってきたぞ!」


 俺の人生も、ようやく好転し始めたようだ。

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