第一章 レアドロップ 編

第1話 雑魚は追放だ


「ロイン・キャンベラス。お前はもうこのパーティーに必要のない人間だ。自分でももうわかっているよなぁ? されるって」


「え……? ちょっと待ってくれ。俺が、追放?」


 パーティーリーダーのグフトックが言った言葉に、俺はひどく驚いた。

 グフトック・ラインベール。青色のモヒカン頭が実にアホっぽい、ムキムキの脳筋野郎だ。


 確か俺の記憶では、パーティに入れと誘ってきたのは彼らの方だったのだが?

 俺はどうしてもと言われたから、興味もないのにしぶしぶ入ってやったのだ。


 俺は昔からやたらと運がよく、そのことが地元で話題だった。

 それをパーティーのドロップ率に利用しようと、彼らは俺を誘ったのだ。


「当たりまえだろう、ボケナス!」


 グフトックは急に滅茶苦茶でかい声で怒鳴った。

 うわ……びっくりしたと同時にドン引きだ。

 仮にもここは人前なんだぞ?

 ギルドへ出入りする人たちであふれる大通りだ。


「お前みたいななぁ、スライムも倒せねえような雑魚はいらねえんだよ! これでもずいぶん我慢したんだぜ? だがなぁ、今俺たちパーティーはすごくいい状態なんだよ! 大事な時期なんだ。わかるよなぁ?」


「その点は、ちゃんとパーティーに入る前に伝えたはずだが? 俺はスライムすら倒せないから、冒険者には向いていない……と」


「はぁ? まさか本当にスライムすら倒せねえようなクソヘボ野郎がこの世に存在するとは思わねえだろうがッ!!!! スライムなんて子供でも倒せるんだよ、無能が!」


 そう言われてもなぁ……。

 そこのところはちゃんと伝えてあったんだが。

 冗談だとでも思っていたのだろうか。

 俺は誘われなければ、冒険者などになるつもりはなかったのに。

 できればあのまま、田舎でのんびり暮らしていたかった。


「だが仕事はちゃんとこなしていたはずだ」


 俺は地図を読んだり、荷物を持ったり、できることはやっていた。

 戦闘は無理だからまかせっきりだったが、料理や見張りなど、とにかくあらゆる方法でパーティーに貢献しようとしてきたはずだ。

 当然だ、一応金はもらっていたのだからな。


「そんなのこなしたうちに入らねえんだよ! お前がいるだけでこっちは赤字なんだ! 肝心の運の良さとやらも眉唾だったしよぅ!」


「運なんてそのときによって変わるんだ。そんなもんに期待されても困る……。そもそも、俺を誘ったのが間違いじゃないのか?」


「うるせえ! お前なんか、こうしてやる!」


「う……なにをする……!」


 グフトックは急に、俺のことを羽交い絞めにしてきた。

 身体の大きいグフトックと、スライムすら倒せない非力な俺。

 どっちが勝つかは明白だ。

 俺は思い切り、腕を折られてしまった。


「うう……ひ、酷い。なんてことを!」


「酷いのはお前のその力のほうだ! スライムすら倒せない奴を、俺は人間とも思わんね!」


 クソ……いくらなんでも理不尽すぎる。

 俺はただいっしょにいるだけでいいと言われたから、遠い田舎から出てきたんだ。

 このままだと、家に帰ることさえできない。


「せ、せめて追放するなら、僅かでいい、国に帰る金をくれ! それと、この腕の治療費もだ」


「はぁ!? まだそんなこと言ってんのかよ! 乞食め! 死ね! お前みたいなのをな、なんて言うか知ってるか? 詐欺師だよ、詐欺師! お前をパーティーに入れたらドロップ率が上がるらしいと聞いたから、俺はお前なんかを入れたんだ!」


 詐欺師だって!?

 騙されたのは俺の方なんだが……。

 戦闘はしなくていいし、いるだけでいいからと言われていたんだ。


「お、俺のせいじゃないだろ!」


「黙れ!! まだ言うか!? これ以上俺を怒らすなよ? キレちまうからな……」


 やばい、グフトックの目がヤバい目をしている。

 こいつは違法な薬の常習犯で、なにをしでかすかわからん奴だ。

 俺もこのままだと、殺されるかもしれない。

 こんなとことで殺されるなんて、くだらなすぎるからな……。


 不満はあるが、ここは大人しく引き下がるしかないか。

 あとでギルドに報告すれば、いくらかの金はもらえるだろうし。


「わ、わかったよ……出ていくよ……」


 俺はしぶしぶ、荷物をまとめて出ていくことにした。

 といっても、たいした荷物なんてありゃしないが……。


 クソ……!

 グフトックめ……!

 呪われてしまえばいいんだ、こんなヤツ……!


「まったく……スライムすら倒せないくせに、なんであんなに偉そうなのかしら……。ねえグフトックさま?」

「そうよ。スライムすら倒せないゴミクズは、野垂れ死ぬがいいわ。そんな人間、生きてる価値ないもの……」

「だな……。弱いヤツは私も嫌いだ」


 グフトックの取り巻きのパーティーメンバーの女たちが言う。

 俺も、嫌われたものだな……。

 ただ田舎でのんびり暮らしていただけなのに、どうしてこんなことに……。


 俺はうなだれて、歩きながら、考える。


「まあ、俺も浮かれてたのかもしれない。グフトックの口車に乗せられて、こんなところまで来ちまうんだからな……」


 ここ、大都会ミレージュは、冒険者たちが集まる巨大都市だ。

 そして俺の故郷、グランダール村は、ここから国ふたつほど離れた場所にある。


 グフトックは、あの日俺に「楽させてやるから、着いてこい」と言った。

 あいつの算段では、俺を連れて行けばドロップ率が上がり金が手に入るとでも思っていたのだろう。

 そんな都合のいい話、あるわけないのにな……。

 俺はせいぜい、仲間内の賭けで負けない程度の運だ。


「はぁ……」


 こんな都会で、知る人もなく、金も、力もなく。

 俺は、これからどう生きればいいんだろうか……。


「クソ! せめて俺が、スライム程度なら倒せる冒険者だったら……!」



――――――――――――

ロイン・キャンベラス

17歳 男

攻撃力 0000

防御力 0021

魔力  0000

知能  0130

敏捷  0075

魅力  0225

運   0999

スキル なし

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