第69話 (最終話)行ってきます!
イイーヨとイイダーロが入ると困るウシローノが「いえ、そんな…」と援護をしたのだが「へぇ。ウシローノ、今入るとマスターが術の質問を聞いてくれるかもよ?」とライブに言われると目の色を変えて上着のボタンに手を伸ばしながら「…ミチトさん、ご一緒させてください!」と言い始める。ミチトは引き気味に「え?うん。良いけど」と言うとウシローノはダッシュで脱衣所に向かう。
ライブは次だという勢いでイシホに「イシホ、私とイブとは前に入ってるんだから恥ずかしくないよ。皆マスターの家族だよ」と言うとライブには何もいえないイシホが「…はい。お姉様」と言って脱衣所に向かう。
残されたイイーヨとイイダーロ。
正直勝負は見えているわけだがどうすることも出来ずに立ち尽くしている。
イブが浴槽から「それでイイーヨさんはどうしますか?」と聞くと意地悪い笑みのライブが「イブ、紳士だからあんまり誘っちゃ悪いよ」と言う。
ライブの意図を察したイブが「そうですね。ライブの言う通りです」とニコニコと言うとイイーヨは顔を真っ赤にし涙目で「…行きます!行かせてください!」と言うとイイダーロも「よろしくお願いします!!」と言って脱衣所に駆けていった。
シヤはその全てを不思議そうに眺めていた。
その事に気付いたシーシーが「シヤ?」と話しかける。
「シーシー、不思議だね。マスターと居るとなんでこんなに楽しいんだろう?」
シヤは自分の胸に手を当ててお湯にのぼせたのか興奮しているのか赤い顔で言う。
シーシーも同じ気持ちで「そうだね。ここに居られて良かったよね」と言った。
そして風呂に来たウシローノ達4人はそれぞれが皆の黄色い声援を集めた。
ウシローノは元々胸の病を患っていた事で色白の痩せ型で術人間の少女達は格好いいと見惚れてしまう。
だがウシローノからしたら黄色い声援よりも術で「ミチトさん、僕にもシヤ君のように術を授けてください」と身を乗り出してくる。
イイーヨとイイダーロは鍛えていて筋肉質の身体が男女問わずの術人間達に好評で「俺もなれますか?」「触らせてください!」と男子達に言われたり、女子達は凄いと盛り上がる。
イイーヨとイイダーロは少女達を恋愛対称にすることは無いが気が大きくなって「女子達も遠慮すんな」「触っていいぞ」と言い出す。
ミチトがこのやり取りにオヤジミチト化する訳だがリナから「ミチト、いいでしょ?」と釘を刺されてしまっていた。
そしてイシホはかなり着痩せをするタイプで術人間の少女達の羨望とアクィの憎しみを一身に受けていた。
「真式様、妾もよろしいでしょうか?」
「うん。金色も気兼ねなく入りなよ。でもタオルは使ってね」
そんな金色も男女問わず人気で王都まで背に乗った子も居たのだろう「腕とか柔らかいのにあの竜になるんですね!」とか「黒い髪が凄く綺麗」と言われ満更ではない金色も「童の模式共は可愛いではないか。遠慮することはない、近くに寄ると良い」と言っている。
余談だが胸のサイズで言うと、シーシー、アメジスト達<<アクィ、金色<サンフラワー<<ライブ<<リナ<イシホ<<<イブとなる。
<→僅差
<<→勝利
<<<→越えられない壁
アクィは色々と限界を迎えたのだろう。ミチトの元に行って「ミチト!成長の促進術を作ってよ!」と言う。
これが暗に髪や皮膚の話ではない事を理解しているミチトは「…ええぇぇぇぇ?」と困った声を出すとウシローノも「ミチトさん!それです!僕にも促進術をください!」と掴みかかる勢いで頼み込まれる。
ミチトは「ウシローノさん?それは後でフラとライから聞いていいよ?」と言いながらアクィに「アクィは今のままがいいと思うよ?」と言って誤魔化している。
何となく離れたところで事態を見るシヤとシーシー。
シーシーが「シヤ」と話しかけてシヤが「何シーシー?」と聞くシーシーが「本当に賑やかで楽しいね」と言って笑い「うん、本当だ」とシヤが返す。
少し言葉に詰まった後でシーシーが「シヤは騎士団と治癒院だよね?」と聞くと「うん」とシヤが返す。
「私、やってみてうまくいかなかったらどっちかだけでも良いかな?」
「いいと思うけど?」
「本当?」
「苦手な事とかあるから、ヨミだって両立より治癒院に向いているかも知れないだろ?」
シヤはクマキチを撫でるヨミを見ながら言うと確かにそんな気がするとシーシーも思って「そっか…」と言った。
「足手まといでもついて行っていい?」
「安心していいよ。俺はシーシーも引っ張るよ」
この言葉の力強さと安心感にシーシーは「ありがとうシヤ」と言った。
シーシー達は何でも好意的に捉えてしまうのでこれもミチトが策を講じたのかもしれないと思って勝手に感謝をしてしまう。
翌朝、食べきれないご馳走とケーキは孤児院の術人間達にも振る舞われた。
2日目でも美味しい食事を昨晩お腹いっぱいになるまで食べた事を聞いて皆がシヤ達を羨む。
ミチトとリナは嬉しそうに「じゃあ出身のグループ毎に呼んでやってあげなきゃね」と言うと術人間の子供達は皆喜んだ。
「さあ、良ければ王都に送るよ」
「はい。マスター」
シヤはアメジストやサンフラワーの孤児院に残るメンバーに「また会おう」と声をかけるとアメジストが抱きついてきて「またね」と言った。
シヅが「シヤばかりモテるよな」と少しだけ面白くなく言うとシヤは「そう言うのではないだろう?きっと暫定1番だからだよ」と答えた。
見ていたミチト以外の全員が「わかってないなコイツ」だったのは言うまでもない。
そして皆で墓に行ってヨンゴ、シロー、シーナ、ハーモに別れを告げる。
「行ってくるよ」
シヤのこの言葉に「無理すんなよな」「うん、頑張ってね」「シヤ、ありがとう」と聞こえた気がした。
シヤはまたミチトが手を回してくれたのかと思い「マスター?」と聞くがミチトは不思議そうに「何?」と聞く。
「何かした?」
「別に何もしてないけど…、何かあった?」
「ううん。なんでもない」
何もしていないならそれでいい。
シヤはそう思っていた。
「皆さん、王都での活躍に期待します」
「気をつけて!」
「行ってらっしゃい」
「無理すんなよな」
「嫌んなったら帰ってこい」
「うん、頑張りな。でも辛かったら帰ってきていいんだよ」
「そうですよ、ここが皆の家。ここが皆の家族です」
「技や技術はすぐに身につくから貴い心を養いなさいね」
「そうね。やり過ぎず、無理もしないで頑張ってね」
皆に見送られる中、シヤは「行ってきます!」と言う。
ミチトはそのタイミングで王都に飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます